シュウの部屋
10缶あったビールは5人であっという間に飲み干し、ロゼのスパークリングワインも半分ほどしか残っていない。
もちろん、まだ飲み足りない。というか、全然飲み足りない。
コウタは「明日も出勤だろ」なんて嘘をついてまで飲ませたくないみたいだが、たまの休みくらい飲み過ぎたっていいじゃないか。
そう思いながら、ユウちゃんを見ると残り少なくなったワインをゆっくり飲んでいる。
ユウちゃんだって明日は休みの筈だし、まだ飲み足りないに違いない。
ちらっとソファの上で熟睡しているアキを見て、ある事を思いついた。
「コウタ、風邪ひく前にアキを部屋に寝かせてくるよ。」
俺はそう言って、アキを背中におぶった。
ふわりと羽のように軽い妹に、ちゃんと食べてるのかと心配になる。
いや、こいつの食欲はアキちゃんのお酒に値するほど底なしなんだった。
自分もそうだから、食べても太らないのは遺伝なんだろう。
「あ、私も手伝います。」
突然、すくっと立ち上がったのはユウちゃんだった。
アキをおぶったまま、立ち尽くしていたから動けないと心配になったんだろうか。
実はアキを寝かせてから、こっそり買い出しに行こうと思っていたんだけど。
「着替えさせたほうがいいし。」
そういう事か。家族といえど、異性に裸は見られたくないもんな。
それにユウちゃんなら買い出しに行くのを止めないだろうし。
返事をする代わりに頷くと、ユウちゃんはささっとアキの傍に駆け寄った。
「あ、私も。」
二人でアキを支えながらリビングを出ると、後ろからミカちゃんの声が追いかける。
困った。ミカちゃんがついて来ると買い出しに行けない。
さっきからユウちゃんに飲むのを止めるように言っていたぐらいだし。
「大丈夫だよ。ミカちゃんの歓迎会だし、ゆっくり楽しんでて。」
俺は出来る限り、ミカちゃんの好意を傷つけないように軽い感じで断った。