コウタの部屋
シュウ兄がユウちゃんの好きな酒を真っ先に選んだのは、ただの酒好き同士としての気遣いだと思う。
そうでなければ、最悪の結果が簡単に目の前で披露されている事になるのだから。
ユウちゃんの幼馴染であるミカちゃんの歓迎会が始まって一時間。
あっという間にアキとユウちゃんの手料理は空っぽになり、残ったのは未だ飲み続けているシュウ兄とユウちゃん、それに無理やり着いていっているようなミカちゃんと既に眠ってしまっているアキ、そして俺。
前回の失敗から、あまりペースを上げないようにしてあの二人に合わせて、どうにかまだ正気を保っている。
しかし、当の二人は調子よく酔っ払い始め、俺とミカちゃんは取り残されたような状態だった。
「シュウ兄、明日出勤じゃなかったっけ?」
と、俺が口を挟めば、
「飲みすぎると明日の研修に響くよ?」
と、ミカちゃんがユウちゃんの二の腕に触れる。
お互いにそれは意味のない嘘だとわかっていながら、理解したフリをしてしきりに二人を説得しようとした。
しかし、それを知ってか知らずかユウちゃんもシュウ兄もお互いを煽る素振りを止めようとしない。
「あはは、シュウさんったらそれぐらいで酔っ払った振りしてー!」
明るく楽しげなユウちゃんの声が鼓膜だけでなく、胸までも鋭く突き刺していく。
「そんな、フリなんて言うならユウちゃんだってまだまだ飲めるくせにー。」
シュウ兄の間延びした声が今はうざったくて仕様がない。
こんな時、戦友ではなく親友が正気を保っていたならと本気で願った。