ユウの部屋
「やっぱり、一軒家は落ち着くね~。」
そう言いながら、目の前で大の字に寝転がっているのは幼馴染のミカ。
今日からこのシェアハウスの一員になる。
家が隣で親同士も仲が良く、それこそずーっと一緒に育ってきた仲。
大学を卒業して社会人になってもこうやって隣にいるなんて、幼馴染というより腐れ縁なのかもしれない。
ミカのおばさんにも「よろしくねぇ。」なんて、ミカそっくりの声で頼まれちゃったし。
ミカもミカのおばさんも、うち以上に呑気だからなぁ。
とん、とミカの顔の横にオレンジジュースの入ったグラスを置いて、じろりと昼寝しそうなミカを睨んだ。
「お願いだから、この家で面倒だけは起こさないでよ?」
半年前、都心のデパートに就職したものの、実家から通うには少し距離があって一人暮らしを考えていた時に、友達のアキからお兄さんが所有するこのシェアハウスに一緒に住まないかと誘われた。
最初は遠慮半分、他人と暮らす不安半分で断っていたけれど、結局は通勤の便利さと破格の家賃に負け、このシェアハウスに住み始めた。
シェアメイトはアキのお兄さんでオーナーのシュウさん、アキ、私、そして、シュウさんの会社の後輩コウタくん。
最初は知らない男の人と住むなんて不安だったけれど、暮らし始めれば何の問題もなく、むしろ快適。
だからこそ、この自由気ままで呑気な幼馴染に、この暮らしを壊されたくないのだ。
なんて私の願いは、きっとミカにも神様にも届いてないんだろうな。