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SS9 月曜日の悪い夢 

グループ交際は王道ですね。

 1年生たちは、陽気にはしゃいでいる。2,3年生も妙に盛り上がって、一緒になって歌う。このノリについていかなきゃ。そう思いながら、はしゃぐ彼らを見ていると、左腕の上あたりをクイっと引っ張られた。

「ちょっと、イッチ先輩、そろそろ、いいですか?」

とひそひそと言われた。

「あ、うん。そうだな。じゃあ、おれ、智に声かけるわ。」

「お願いしますよ~。わたしも恵子に声かけてきます。」

といって、数歩進んだんところで、振り返り、またもどってきた。そして、俺の顔をまじまじと見て、

「先輩、いいですか?ごく自然に一緒になる感じですよ?いいですか?頼みますよ。」 

と念押ししてから、再び立ち去っていった。

部屋を見わたし、智を探す。

いた。女子の部長、荒沢さんと談笑してるじゃないか。荒沢先輩はかなり大人っぽく見える。清楚な黒髪のボブカット。しかも、かなりスタイルもいい。制服の上からもわかる。手足もしゅっと伸びているうえに、出るところはしっかり出てる。そう、いわゆる、いい女だ。

なんだぁ?ほんとは年上好きなのか?

と、カリナの方を見ると、恵子ちゃんを連れて部屋を出ようとしているところじゃないか・・・・。

やべ、急がなきゃ。

おれは、あわてて、智のところへ向かった。

「智」

彼の前に行って声をかける。

「ああ、こういち。なに?」

「うん、ちょっといいかな?荒沢先輩、智、借ります。」

「ええ、いいわ。じゃあ、またね、智君」

「すいません。」

そういって、俺は智の右腕をつかんで先輩のもとから引き離した。

「こういち、いてーよ。そんな力入れるんなよ。」

「はあ、誰のためにやってんだと思ってんだ。」

「え。・・・ああ、もうなのか?」

「ああ、そうだよ。さあ、いったんここ出るぞ。」

「うん、そうだな。」

そう言って騒がしいパーティールームから出た。

カラオケボックスの廊下にはいろいろな部屋からの歌声と伴奏がかすかに響きあっていて、なんだか不思議な空間だ。

「よし、とりあえずトイレに向かう。いいか、偶然、2人に会う感じで、だぞ智。」

「ああ、わかった・・・やべ、なんか緊張してきた・・・」

「は?まだ、なんも始まってないぞ。ほら行くぞ」

お手洗いに向かう、すると、ちょうどカリナと恵子が出てきたところだった。

ビンゴ!ばっちりだぜ。

「あ、いっちせんぱーい」

いつもの調子でカリナが話しかけてきた。

「ああ、カリナか」

俺もいつもの調子で答える。

「どうしたんですか~」(うまくやったじゃん)

「トイレにきまってんだろ?」(だろ、キラーパスよろしく)

「そうなんですか~。あ、私たち、ちょっと遊びに行こうと思ってるんですよ~。」

(ほらパス出したわよ!)

「ああ、そうなんだ。いいねー、俺もこういうとこ苦手でさー」

(ほい、折り返しパス)

「あ、それじゃー・・・・一緒に遊びにいきませんか~?」

(ほら、シュートして!)

「お、いいね、智も行くだろ?」

(よし、ゴールだ!)

「ああ、いいね」

(サンキュー、カリナ、浩一!)

「けいちゃん、いいよね?」

ここでカリナは、初めて恵子に話をふる。既定路線がきまってから断れないのは計算済み。

「え・・・私はいいけど・・・先輩たちに迷惑じゃ・・・・」

「何言ってんの!イッチ先輩と智先輩に、そんな心配いらないわよ。ねえ!」 

「ああ、気にしないで、むしろ、こちらが迷惑かな?」

「い、いえそんなことは・・・」

頬を少し赤らめて、恥ずかしそうにする恵子。なるほど可愛い。

と思ってみていると・・・。

智とカリナに睨まれていた。

「さあ、行きましょうイッチ先輩」

(なに、見とれてんだ!あんたに紹介すんじゃねーよ!)

そういうとカリナは俺の手をとって引きずるように廊下を進みだした。

「ちょっと、何考えてんですか?友だちの好きな子に見とれるなんて」

耳元でそういわれる。

「ご、ごめん、つい・・・・」

「ま、いいですけど・・・気をつけてくださいね!」

小声だが、かなり、厳しめに言われた・・・。だって・・・可愛かったんだもん・・・。


カラオケボックスを後にして、俺たちは、タクシーに乗る。すぐに、ラウワンに行く。

ここなら、遊べるものがたくさんある。

「イッチせんぱーい、なにします?」

「そうだな・・・アーチェリーどうだ?弓道部だし。」

「えー、部活みたいじゃん。センスないなー・・・・」

「いや、でも、アーチェリーは弓道とは別物だよ。」

「恵ちゃん・・・そうなの?」

「うん、これなら、先輩にも勝てるかもよ!」

「あ、そうか~・・・じゃあ、ビリがジュース奢るってことならいいですよ!」

「よし、のった!こういちがんばろーぜ」(俺に花を持たせてくれ!)

「よし、わかった」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ああ、くそ!、当たんね~」

我々の思惑とは異なり、張り切る智は、外しまくった。センスねー。何とかしてやりたかったが・・・・。ここで俺が最下位になっても、わざとらしすぎる・・・。俺が最下位になっても、智は3位だ。もう、どうしようもない・・・・。

「じゃあ、約束通り、奢ってくださいね?智先輩!」

(もう少し何とかしてください!!)

「すいません、お願いします・・・」

恵子ちゃんはニコッとわらう。いい笑顔だ。思わず見とれる。

ドスッ!

「ぅぐっ」

思わず少し嗚咽をもらした。

カリナが右わき腹に肘鉄を入れてきた。

そして、耳を静かに引っ張る。

「だから、なに、見とれてんですか?イッチ先輩に紹介すんじゃないでしょ!」

そして、耳を思いっきり引っ張られた。

「いっ・・・・」

おもわず痛さが口からこぼれそうになるが、こらえた。

「せんぱーい、次、あれしましょう!!ダーツ!!」

「ああ、うん・・・わかった・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ああ、けっこうつかれるな・・・」

智、お前・・・・このいうの・・・へただな・・・・。あのまま、カラオケの方がよかったんじゃ・・・・。

ダーツ後もあ4人でいろいろ遊んだが、智は目に見えて下手だった。何とか智を活躍させようとしたんだが・・・そのたび、俺か智が最下位争い。カリナも何とかしようとしたが・・・火に油。恵子ちゃんがトップになることが多かった。

まあ、恵子ちゃんが楽しんでくれたんならいいか・・・・。

「あ、もうこんな時間。そろそろ帰らなきゃ。」

「え、もう?」

名残惜しそうな智。

「ええ、うち門限あるから・・・」

「あ、そうなんだ・・・じゃあ、暗くなってきたし、智、送ってやれよ!」

「え!」

(ちょっと想定してないよ!)

「その方がいいよ。途中まででいいからさ。」

(ここでいいとこ見せろよ。からっきしだったんだからさ!)

「悪いですよ・・・」

「いいって、こんなんでも、ナンパ除けにはなるからさ。」

「そうだよ~・・・途中まで送ってもらいなよ。わたしもイッチ先輩に送ってもらうからさ!」

「え!」

「ですよね~」(話あわせろよ!そのための会でしょ!!)

「あ、うん、もちろんさ・・・」

やべ、たぶん笑顔ひきつってる・・・・。

「じゃあ・・・・お願いします。」

ラウワンの前で、智と恵子と別れた。緊張気味の智の様子が、微笑ましくもあり、同時に羨ましかった。




「なんなんですか?あのたいど・・・」

ここは麻生のマック・・・。腹が減ったので・・・・奢れとうるさいカリナを連れてやってきた。

4人がけのテーブルに窓側にカリナを座らせ、対面の通路側に俺が座る。対角線で向かい合う。

「けっこう、上手くできただろ?」

するとわかりやすく不機嫌な表情をカリナは浮かべた。

「どこがですかー!!友だちの好きな子に見とれて、鼻の下伸ばして!!見境なしの、女ったらし!!!」

店内の目線が俺に集まる。

「ちょっ・・・人聞き悪いこと言うなよ・・当日聞いた割には、上手くやれただろう?・・・」

おれは頭を右手でポリポリかき、ホットコーヒーを一口すする。

「えー、でも、ほら、あの、ゆう?何とか先輩とかにも、手を出そうとしてるとかって、

 聞いてますよ~」

カリナは呆れかえった顔して、バニラシェイクを吸い込む。

「それは、全くの誤解だ。」

できるだけ動揺を隠して慎重に声にする。ジトっとした目で睨んでくるカリナが、今にも食ってっかかってきそうだから。

「ふーん」

「うん、誤解だ!」

『ああ・・・誤解なんだ~・・・』

突然誰かが、会話に入ってきた。

ぎょっとして、声の聞こえた先、右後ろを振り返る。

「え・・・・レナ・・・・」

だから・・やだったんだ・・・こういうの。他人の恋愛沙汰に首突っ込むのは。

はあ~。悪夢だ・・・。

まあ、合コンだよね。

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