エピローグ
オーラスってことで・・・・
高3になり、学校の空気は一変した。
受験という重圧が校内を支配する。御多分に漏れず俺もその空気の中に放り込まれた。
「高3の夏は受験の天王山だ!」
目の前でそう叫ぶ予備校の講師。
はぁ~・・・、夏期講習なんてこなきゃよかった・・・。行きたくもない予備校の夏期講習。これから毎日通うと思うとぞっとする。
憂鬱さだけが胸を満たす。
講義が終わり、予備校の出口から吐き出される学生たち。
北海道とは思えない猛暑の中、地下に逃げようと足早に歩く。
地下への入口にたどり着き、階段を素早く降りた。地下通路へのドアを押し開ける。
途端に空気が一変した。そう、去年の夏、あのショッピングモールに辿り着いたときのように。
座ってひと息つきたいが、近くにそんな場所もない。しかたなく、駅へと、地下通路を歩いていく。
彼女・・・レナとは、駐車場で別れた後、連絡は取らなかった。あのフードコートに行くこともしなかった。俺もレナも、最後とわかっていた。2人で見てしまったあの夕暮れにそう、教えられたのだと思う。彼女がいまも夕方に現れているのか、もう消えてしまったのかさえわからない。
でも、それでいい。
あの日、確かに俺たちはつき合った。そして、いまも別れてはいない。
それでいい。俺は、今でも、彼女の唯一の友だちで、彼氏だ。
その思いがあれば、ぼっち生活だって苦じゃなかった。
まあ、智やカズは話しかけてくれたが。
カリンはあの日以来、たまに見かけても、全く目も合わせなくなった。恵子にいたっては、ごみを見るような眼差しを向け来た。
夕子は、時折、声をかけてくれる。誰ともつるまなくなった俺を見かねてだろう。
マナーとして、最低限の会話くらいはしていた。ただ・・・・来島かずえは、一切近寄ってはこなくなった。カズが言うには、女としての意地だそうだ。まあ、その方がわかりやすくていい。
夏休みとあって、駅の改札口は周辺は観光客や地元の若者であふれていた。
くそ、明日からはCBでくるかな。
そう思いながら、電子決済カードをポケットから出そうとポケットに手を突っ込んだ時だった。
「あ・・・・」
思わす声が出た。
俺の右前から女子高生らしき3人組が騒がしく話しながら近づいてきた。
その3人組の向かって左端、つまり、俺の一番近くをすれ違うのは・・・・岡部玲奈。
ヤバい、と思った時には遅かった。
彼女と目があってしまった。
彼女もおもわず立ち止まった。
「なに?レイの知り合い?」
連れの子がそう尋ねたが、彼女は何も答えなかった。
ほんの2・3秒、彼女は目を見開いたまま、微動だせず、立ち尽くした。
「あ、いえ、なんでもないわ・・・」
「ふーん・・・」
連れの2人は、俺を胡散臭そうに見てた。
そして、何事もなかったかのように、玲奈たち3人組は俺の横を通り過ぎていった。
騒がしい、黄色い声が遠ざかっていった。
「なんでもないわ、か・・・・」
そうひとりごとを呟き、電子決済カードを握りしめた。
電車は空いていたが、座る気にはなれなかった。
なぜって?
気持ちが高揚してたから。
出入り口の近くの壁に陣取って、ドアの車窓から景色を眺める。目の前を飛んでいく家々や車たち。
「知らないふりをするしかなかったんだろうな、レナ・・・」
そう独り言を、ドアの窓に向かって放つ
レイの手前、知り合いといって、詮索されるわけには、いかないもんな。
そうだろう?レナ?
わかるさ、君のただ一人の友だちで彼氏だから。
嬉しかったよ。君に、会えて。
あの瞬間・・・・・・・目が合ったときから、少しの間、君はレナだった。
(「あ、いえ、なんでもないわ・・・」)
レイはあんな風にいわないし、なにより、彼女の顔を俺が忘れると思うかい?あの瞬間、レナに変わったのを俺が見逃すと思うかい?レナ。
だから、すれ違う刹那、俺だけにきこえるように、こう言ったんだろう?
「ありがとう・・」
って・・・・・。
はぁ~・・・明日からは、CBかスパーダで行こう。
そう、それが、バイク乗りってもんだろう。
違う話を構想中です。




