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SS43 タンデムライディング・ハイ

夕暮れが早くなって・・・

いやでもバイクシーズンの終了が、感じられますね・・・・・。

 慎重に段差を乗り越え、ショッピングモールの駐車場から、車道へ出る。

 いつもより、車重があるせいか、軽快だったCBがとても鈍重に感じる。

 (「バイクは一人で乗るもんだ。一人で乗ってる分にはゼロ戦だ。

 だが、タンデムになったとたん、鈍重な爆撃機だ。曲がる、止まる、加速する。

                                全部面白くなくなる。」)

 親父の言葉が思い出された。でも・・・・。

 ひしっと、俺の右腰回りにしがみつくレナの右手と、背中越しに感じる彼女の体温が、そんなネガを消し去ってくれる。

 住宅街をぬけるころ、信号につかまった。ルート231にぶつかる交差点。

 「ねえ!」

 「なに?!」

ヘルメットを思いっきり近づけ合って声を張って話す。

「どこ行くの?」

「えっと・・・・海!海を見に行こうぜ!」

「ふふ!・・ベタねー!・・・」

「だろ!だからいーんだよ!!」

信号が変わり青になった。慎重にクラッチをつないで、左折する。

親父と走りなれた、ルート231。

だが、今日は一台。でも二人。

16時を過ぎ、路上を照らす太陽は茜色になりつつあった。


日暮れまでにはつきたい


そう思いスロットルを少し開けた。車軸にトルクがかかり、タイヤが路面をとらえて蹴り上げた。

ああ、スパーダとは、250とは違うな・・・。

ヘルメットをかぶったレナの顔が、右のサイドミラーに写る。シールド越しの彼女の顔は楽しそうに見える。


よし、CB、頼むぜ。


 左右に家々の影が見えなくなりはじめ、ルート231はルート337と合流する。

そのまま突き進み、まるで高速のインターのような分岐に入る。すると、再びルート231となる。信号を左折し、片側3車線のとなったルート231を北上していく。

 3車線の道路は快調に進んだ。工場地帯を横目に、2人で駆け抜ける。道路のギャップや凹凸にを通り抜けると、レナの右腕はぎゅっと俺にしがみついた。

 3車線が2車線になり、大きな橋をこえるころには片側一車線となった。

 橋を渡るとすぐに小さな集落が見えてくる。集落の入り口あたりの交差点で、赤信号が点灯した。慎重にブレーキレバーを引き、停止する。

「ねえ・・・」

背後から、レナの声がする。

「なに?」

「まだなの?左に入れば、海じゃないの?」

「うん、でもさ・・・俺が見たい海じゃないんだよね」

「ふぅーん・・・・じゃあ、まかせるわ」

「ああ、そうしてくれ・・・」

信号が青に変わる。今度は慎重にクラッチをつなぐ。グイっと路面を捉えたタイヤがまわり始める。

加速するCBから、置いていかれないように、レナの右手に力が入り、俺の体にからみつく。 

 左から刺す日が、茜色になり始めている。いつも、親父の乗るボルドールを追いかけていたので、気にはならなかったが、目指す海までは思ったより距離があった。

思わず急ぎたくなるが・・・自重した。レナを巻き込んで事故は起こしたくない。

 いくつかのカーブをクリアーし、軽い登り坂を越えるとなだらかな下り坂となった。まっすぐな伸びた下り坂の向こうに、うっすらと海岸線と海が見えた。見覚えのある景色に安堵する。坂道を下り終えたとき、また小さな集落に入った。もうすぐ左手に目印のコンビニがあるはずだ。

果たして、オレンジ色のコンビニの看板が見えてきた。コンビニを通り越すと、まもなく信号がある。左折のウィンカーを点滅させ、赤信号を確認し、ブレーキをかけた。

「ここなの?」

「ああ、ここをまがったらすぐだよ!」

声を張ってレナに答えた。

青信号とともに信号を左折する。なだらかな登り坂の道沿いんも左には大きな公民館が、そしてその向こうには、夕日に照らされて、茜色の瞬きを映す海。

「・・あ・・・ご・」

「え、なに!」

「わあ、すごい!って!いったのよ!!」

「ああ、そうかぁ!!」

「バイクって、楽しいのね!!」

エンジンと風切り音でとても聞きづらいが、彼女の高揚感は背中からひしひしと伝わってきた。

 上り坂を登りきるころ、道は右にカーブしていく。バイクを右に傾けてカーブを抜ける。しばらくすると、次は大きく左カーブだ。左カーブの先は下りになってっていて、いわゆるブラインドカーブ。ここでアクセルをもどしすぎると、かえって失速して危ない。アクセルを一瞬閉じてバイクを左にバンクさせる。先の見えないカーブで、レナ不安になっているんだろう。しがみつく右手に力がこもっている。戻したアクセルを徐々に開いていき、加速しながらカーブをクリアーする。すると一気に下り坂。下った先は右から左に入るS字カーブだ。アクセルをもどし、ブレーキを当てて、減速、リズムよく、S字を切り返す。すると登りの直線路が開けてくる。その先の右カーブの途中に、展望台が控えているのだ。

 登りの直線路が終わり右カーブが見えてきたころ、アクセルもどし、エンジンブレーキをかけ、減速をかける。カーブの入り口あたりで軽くブレーキを当て、減速を完了する。

 ゆっくりと左折し、展望台へと入る。

 入ると、通路を挟んで両側に駐車スペースがある。左が海側で展望スペースにつながっているので、迷わず左の最も奥まった駐車スペースの端にバイクを入れた。

すでに日は傾き、周囲は茜色からオレンジ色へと変わっている。

エンジンを止め、シールドを跳ね上げると、CBで感じていたエンジンの鼓動も、空気を切り裂く音も、幻想だった気がした。薄暗くなっていく景色が、幻想の終わりを告げているようだ。

スタンドをかけバイクを止める振り返って軽くうなずき、彼女に降りるように促す。

彼女は、ひらりとバイクの左側に降りると、駐車場と一体化するように続く半円に突き出た展望台へ歩きだした。ヘルメットのあごあたりに手を入れ、ぎこちなくベルトをほどきながら。

 その後ろ姿を見ながら、俺もヘルメットのベルトを外し、ゆっくりと脱いだ。脱いだヘルメットはいつものように右のサイドミラーへかけCBから降りた。


地面へ降りたった瞬間


わかった・・・・・。


僕らの最高の夕方は終ろうとしている。

明日は土曜日ですね。

風します?(笑)

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