SS42 憂鬱は似合わない
本業多忙のため、久々の投稿でした。
自動ドアをくぐって、ショッピングモールから、駐車場へと向かう。乾いた風が顔を撫でていく。すぐ後ろに、レナがついてきた。
「どこ?」
「ああ、端のほうなんだ・・・バイクは・・・」
ゆっくりと、駐車場のはずれ向かって歩いていく。
「あ・・・あれかしら?」
CBのテールが見え始めたところで、レナが声を上げた。
「ああ、あれだよ。」
「へー・・・」
振り向きざまにそう言うと、レナは珍しい生き物でも見つけたように、感心していた。俺は黙って、CBのところまで歩いた。
駐車場のはずれの、本当に端、歩道との駐車場を区分けするフェンスのそばにCBは待ち構えていた。
「おもってたのと・・・・ちょっと違ったわ・・・」
俺の背後でレナはそう呟いた。
「え?どういうこと?」
「もっと、バイクらしいバイク?えっと・・・そう、もっと昭和っぽいの想像してた・・」
「ああ、そういうこと。ま、かなり令和らしいスタイリングだもんな」
とまじまじとCBを見た。
確かに、名前こそCBだが、2気筒だし、ネイキッドっていう割には、なんか、ビキニカウルっぽいし・・・。
「まあ、いいんじゃない?わたしたち、令和の高校生だし・・・あの本の主人公みたいに、ロックとバイクが青春、ってわけでもないから・・・・。」
「ふっ・・・そうだね。じゃあ・・・」
俺はそう言って、ミラーに自分のヘルメットをかけた。そして、バイクのリアシートに手を伸ばした。リアシート(タンデムシート)には、積載ネットで、真っ赤なヘルメットが積まれていた。
積載用のネットを外し、ヘルメットを持ち上げる。
「母ので悪いけど・・・・これ使って。内装は洗ってあるから・・・」
出がけに母へ頼んだのは、ヘルメットを借りることだった。自分では乗らないが、親父とタンデムするときに用に、準備されていたものだ。まあ、あまり、というか、ほとんど使われていなかった。
俺はヘルメットをそっとレナに手渡した・・・・・。
(「きみは、一つだけレイに負けてることがあるんだ」
「えっ・・・何かしら・・・・ああ、無神経なあざとさ、とか?」
「それは、ない方がいいだろう?そうじゃないよ、レイが知っていて、君がしらないことさ」
「・・・・初体験・・・なわけないか・・・体は同じだもんね・・・・・そういう形跡はないし。」
「はぁ~・・・・ちゃんと教えるから、いいかい・・・・」)
レナがレイに負けてること、レナが知らないこと。いつもの席で、俺がレナに伝えたかったこと。それは・・・。
「レナは2人乗りが嫌いだろう?それはやったことがないからさ・・・。レイは二人乗り楽しんでたよ。それは・・・」
「パパがバイクに乗せてたから・・」
「そう、レイには、その思い出が、経験がある。でも・・・・」
「そうね・・・夕方しか、パパがいない世界の夕方しか知らないわたしには・・・」
レナは口惜しそうに下を向いた。
「だからさ、今からそれを手に入れようぜ・・・」
バイクを駐車場の通路に引き出す。車の往来に邪魔にならないよう、なるべく通路のはじに寄せて。
「ねえ・・・乗る前に聞きたいんだけど・・・」
「なに?」
「あなた・・・2人乗りしたことあるの?」
「ああ、もちろんさ」
「ふぅん・・・ほんとよね?」
「ああ、もちろんだ」
レナは訝し気にこちらを見てくる。
「・・・じゃあ・・・お願いするわ・・・」
「ああ・・・」
俺はヘルメットをかぶり、あごひもをしめた。
「ねえ、これどうやってしめるの?」
バイクまたがろうとしたとき、珍しく弱気な声が聞こえた。
「じゃあ、俺がしめるよ」
そういって、彼女のほうへ近づき、あごへ手を伸ばした。少しあごを上げるレナ。ヘルメット越しにも、彼女の不安な面持ちが見て取れた。彼女に近づくと、すこし鼓動が早くなる。
「よし、OKっだ」
そっとヘルメットのベルトから手を引いた。
「ありがとう。」
シールドの向こうで、レナの目はうっすらと笑みを浮かべている。
「じゃ、俺が乗って合図したら、後ろに乗って」
レナはこくんとうなずいた。
CBにまたがりサイドスタンドを払った
「じゃ、いいよ」
「お願いね・・・」
レナは恐る恐るタンデムシートにまたがった。
「お・・った、よ・た・・のね」
レナの言葉はうまく聞き取れなかった。ヘルメット越しの会話は聞こえずらい。
「なんか、言った?」
と声を大にして尋ねた。
「思ったより、高いのね、って言ったの!」
レナもちょっと声を張り上げた。
俺も彼女も、初めてのタンデムライディングにちょっと心が弾んでいた。
そうさ・・・・。この時間、この夕方に憂鬱は似合わない。
寒くなってきたせいで、バイクが減った気がします。北海道は・・・・。




