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SS41 レナ、もう一度握手を

北の大地のバイクシーズンは、終わりが見えてきましたね。

短いなぁ~・・・。

久々にあの場所へ向かう。だが、前とは違う。なぜなら、バイクで・・・・・・ライダーとして・・・・・いくのだ。以前のように、汗だくになってペダルを踏み下ろしていたときとは違う。路上を軽やかに滑っていく。自転車の半分以下の時間で、左手に懐かしい建物が見えてきた。訪れなくなって一カ月くらいでしかないが、懐かしいのだ。ウインカーを出し、ブレーキを軽くかけ、車体を軽くバンクさせ左折する。ショッピングモールの駐車場へ。平面駐車場の端、駐車スペースではないが、バイクなら入りそうなスペースにCBを停めた。

 ヘルメットを脱ぎ、ミラ―にかける。頬にあたるかすかな風。途端に秋の気配を感じる。15時半をすぎると、街並みや舗装に刺す日の光の中に、夕方の足音がひたひたと聞こえてくる。


 夏は終ったのだ。


 左手にヘルメットを抱え、モールの入口に入る。店内の独特な匂いと、聞いたことがあるようなBGM。自動ドアを通り抜ける。

 日曜日の夕方だけあって、店内は混雑している。小脇に抱えたヘルメットがじゃまだが仕方がない。行きかう人々にぶつからないよう、気をつけながら進む。

懐かしい、フードコートが見えてくる。夕方だというのに、休日のコート内は結構な人出だ。ゆっくり歩きながら、彼女をさがそ・・・・。探すまでもなかった。いつものテーブルに、彼女、レナは座っていた。いつものように4人掛けのテーブルに一人で座っていた。いつも通り。レナは見覚えのある文庫本を静かに読んでいた。

 


「来たのね・・・」

レナの前に、Ice珈琲を置くと、レナは文庫から目を離さずにそう言った。

「ああ・・・、久しぶり・・・」

常と変わらぬ態度でそう言い、彼女の前に座った。

「ふーん・・・あなた、バイクに乗るんだ。ふーん・・・・。」

テーブルに置いたヘルメットをちらりとレナは見た。

「ああ。今まで黙っていってごめん。実は去年から、こういちの頃から乗ってんだ。」

「あなった・・・不良だったのね・・・・」

「いや、まあ、いろいろ事情があるのさ・・・」

「どうして、来たのかしら・・・。あってはいけないの、わかってるでしょ?」

彼女は、変わらずに文庫本から目を離そうとしない。

「うん・・・でもさ、俺も覚悟できたからさ・・・」

「なんの?」

「君と付き合うこと」

そう言った瞬間、レナは顔を上げ、俺の顔を見つめた。

「なに・・・・・・言ってるの・・・・正気?」

彼女の顔は驚きに満ちている。

「『レイと付き合うのだけは勘弁してって感じよ』・・・・・君は、そう言ったよね。だから、レナ、君と付き合う分には、いいんだよね。」

レナはじっと俺の顔を見ている。

「だから、決めたんだ・・・レナ、きみが・・・・・・・いや、そんな簡単言葉じゃだめだ・・・好きとか愛してるとか、そうじゃないんだ・・・。まして、同情や哀れみでもないんだ・・・。」

レナは俺の言葉をじっと聞いている。

「とにかく、きみと・・・・・一緒に過ごしたい・・・最後の一瞬まで」


長い沈黙が続いた。


レナは何度も口を開こうとしたが、そのたびに躊躇った。


彼女の答えをひたすら待った。


何度目か口を開こうとした時だった。

バサ

彼女はずっと開いたまま持っていた文庫本を床に落としてしまった。

「っあ・・・」

慌てて拾おうと立ち上がろうとしたときだった。

「・・・・・ふふ・・・ふふ・・・ふふふふふ・」

彼女は控えめにでも、はっきりと笑い出した。

立ち上がろうとした俺は座りなおした。

「ふふふふふふ・・・ごめんさい・・・でも・・・・ふふふ」

「な、どうした?」

笑いすぎたのか、レナは右手の人差し指で涙をぬぐった。

「だって、あんな無様に転んだ人が・・・こんなに真剣になるなんて・・・ちょっと意外で・・・」

彼女の笑いがとまらない。

文庫本が落ちた時、はじめて出会ったときのことを、レナは思い出したようだ。

俺が彼女に無様に転ばされた時のことを。

「なんだよ・・・俺・・・かなりマジだったんだけど・・・」

「だから・・・・ごめんなさいっっって・・・ふふ・・・・・・・・そうね、わかったわ・・・」

「ん?なにが?」

「いいわよ、付き合いましょう。わたしたち。」

笑いなみだをうかべながら、レナは答えてくれた。

「え、あ、え?あの・・・いいの?」

「なによ?不服かしら?」

「あ、いや、こんな感じで・・いいのかな・・・」

「いいんじゃない・・だって・・・」

「だって?」

「・・・すぐ・・・終わるかもしれない・・・・・でしょ?」

冗談めかした笑顔を俺に見せるレナ。

「・・・そうだ・・な・・・でも・・・・・・ありがとう・・・うれしいよ」

「あ、もちろんレイには内緒にするわね。」

「ああ、そうしてくれ。」

ふっと肩の力が抜けた。目の前のIce珈琲を手に取り、ストローから一口ふくんだ。

レナも同じくIce珈琲を口にした。

「溶けちゃったわね・・・薄いわ」

「誰のせいだろうね・・・」

「・・・・・それ・・・・言った方がいい?」

「いんや、まだ、終わりにしたくないから、いいさ」

と、おどけてみせた。

「賢明ね。私も舌の根の乾かぬ内に、別れを切り出したくないわ」

『ふふふふふふ・・・ははははは・・』

久しぶりのレナとの会話を楽しんだ。

「ところで、レナ、君に一つ提案があるんだ・・・」

「なあに?」

首をかしげ微笑む僕のパートナーは、ひいき目を差し引いても、かなり可愛い。

「きみは、一つだけレイに負けてることがあるんだ」

「えっ・・・何かしら・・・・ああ、無神経なあざとさ、とか?」

「それは、ない方がいいだろう?そうじゃないよ、レイが知っていて、君がしらないことさ」

「・・・・初体験・・・なわけないか・・・体は同じだもんね・・・・・そういう形跡はないし。」

「はぁ~・・・・ちゃんと教えるから、いいかい・・・・」

穏やかに笑みを浮かべたレナは、じっと俺が口を開くのを待ち構えていた。


この話も、ぼちぼち終わりが見えてきたなぁ。

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