SS40 輝くCB、秋空の太陽
日暮れが早くて、とても残念です。
夕子と別れた後、あてもなくCBを走らせた。迎えに行くには、まだ早い。町中をうろうろしても仕方ない。とりあえず自宅へ。
「おかえりなさーい」
玄関に入ると、母の元気のいい声が響いた。
「ただいま・・・。」
「あれ、なんかあった?」
リビングに入ると、そういわれた。いつも通りのつもりだったが、声色で何かを気取られたのだろう。
「いや・・・なんも。」
とりつくろって答えた。
「そう、ならいいんだけどね・・・・」
心配そうなそぶりを見せる母。
「あ、でも・・・その・・・母さんに一つお願いがあるんだ・・・」
「なあに?こうくん」
「実は・・・ひとつ、頼みが・・・・」
昼食のやきそばを食べ終わり、2階の部屋へ行く。ショッピングモールへ向かうにはまだ早い。ゴロンとベッドに横になる。見慣れた天井を眺める。さっきから、考えるのは・・・彼女の事だけだ。なにから話そうか。会わなくなってからの出来事、カリナとの夕子のこと、カズとかずえのこと。部活の事、学校の事。
・・・・・・・・・・・今日の事・・・・・・・・・・・。
話したいことは尽きない。
そして・・・・聞きたいことも。
早く会いたい。
その期待だけが膨らんでいく。
仲間と絶縁したこと。
明日から始まるぼっち生活への恐れなど、みじんも感じない。
そんなんことよりも、彼女と過ごす夕方の方が、なによりも尊い。
気持ちが高揚していく。
期待感で。
ブー・・・ブー・・・・・ブー・・・・
スマホが震える。
通知音ではない。そう、電話だ。
渋々スマホを尻ポケットから、取り出す。画面を眺める。もうほとんどの連絡先を削除しているため、無機質な数字の羅列が表示されていた。着信拒否をし、スマホの電源をオフにした。スマホを枕元に置き、再び天井を眺めた。
すっかり興ざめしてしまった。
少し寝よう。
まどろみから目を開くと時計は15時すぎをさしていた。
「はは・・・ちょうどいい・・・・」
独り言を吐いて、ニヤッとする。
床に脱ぎ捨てられていたライディングジャケットを着る。ろくにつかわれていない、学習机に鎮座している、ヘルメットを右手で持ちあげ、抱える。
階段を降り、玄関へ。
「ちょっと出かけてくる」
リビングに向かって叫ぶ。
「気をつけなさいよ~」
「ああ!わかった!!」
三和土に座り、ライディングシューズを履く。
「あ、こういち、あれ、置いといたから、バイクに」
背後から声がした。母がリビングからこちらにやってきていた。
「ありがとう、助かる。」
座ったままふりかえり、礼をいうと、母はニヤッとわらった。
「誰と使うのかしらぁ?こうくーん?」
興味津々なのが声にでている。
「そりゃぁ・・・ひみつさ」
「ありゃま・・・」
へらっと笑う母はちょっと嬉しそうだった。
ライディングシューズを履き終え、立ち上がる。
「じゃ、夕飯までにはかえってくるから」
振り返り母にそう告げ、玄関を出た。
真夏とは違い、太陽が傾き始めているのがわかる。
ぬるく光るCBがガレージの前で待ち構えていた。
夕暮れのバイクって、かっこよくない?




