SS38 この町の誰かが
本当はバイクにもバックギアがあったらな、と思う、今日この頃。
SK高校の近く、とはいえ、まあ、ちょっと離れているが結構大きい公園。なんせ、野球場も整備されている。駐車場もそこそこ広い。駐車スペースにCBを停め、ヘルメットをミラーにかける。CBから降りる。グローブは脱がない。駐車場から公園内に入っていくと、遊具が並ぶスペースがある。日曜日なので、4,5人の小学生くらいの子供たちが遊んでいる。子どもたちの歓声を聞きながら、遊具スペースの奥にあるベンチに向かう。
SK高校の制服を着た女子が座っている。彼女の前に立つ。
「悪いな、待たせて。」
「全くですよ~。女を待たせるなんて、だめな男ですね、イッチ先輩は」
「そう言うなよ。」
そういってカリナの隣に腰掛ける。
「これから部活だろう?その前に話したかったんだ」
カリナは公園の地面を見つめたまま。
「それでな、これを部長に渡してほしいんだ」
ライディングジャケットの内ポケットから、白い封筒を取り出し、カリナの前に差し出した。
「え・・・・」
カリナは、目を見開いて差し出された封筒を見つめていた。
「これが、俺の答えだ・・・・」
封筒を差し出したまま、カリナが受け取るのを待つ。
「受け取れません・・・・こんなの・・・自分で出してください!!」
カリナはぎゅっと膝上の両手を握りしめた。
「カリナから渡してほしいんだ・・・・部長には電話しておく・・・頼む・・・・」
見開いたカリナの目から涙が浮かぶ。
しかしかまわず続ける。
「カリナから出せば・・・・女子部の先輩も、納得するだろ?そういうことかって・・・」
「それじゃ・・・私のせいみたいじゃないですか!私が・・・・」
そういって、彼女の口はぎゅっと結ばれた。
「そうかもな・・・でも、恵子や智が、絶対カリナを助けてくれる。安心しろよ。じゃ、おれ行くとこあるから」
カリナの手を取り、握った左手を半ば強引に開かせ、封筒を持たせた。
カリナはうつ向いたままだったが、俺はかまわず立ち上がった。
「それじゃ、退部届、今日中に渡しておいてくれ」
まるで独り言のように、カリナの方を一切見ずに、そう告げた。
返事も何も待たずに歩き出す。いっさい振り返らずに。
駐車場のCBのもとへ向かう。何か言いたげに傾いて停まっているCB。
ジャケットの前を閉め、ヘルメットをミラーから取り上げる。
ヘルメットをかぶり、顎ひもを締めCBにまたがる。
「わりーな、またせて。でも、もう、ひとっ走り頼む」
ヘルメット越しにCBへ話す。
「ああ。でも、いいのか?」
と、CB。
「ああ、この町の誰かが、僕を待っている。それは彼女じゃない。」
ツーわけで、まだレナは出ません。




