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SS34 俺がやらかした、ゲスな話。

優柔不断だけど、一途だよな、こいつ。

男としてはそれもいい。

 夕子にいいようにあしらわれ、惨めな気持ちを引きずったまま、次の日を迎えた。

 頭の周りに重石をつるされたような、そんな気持ちでベッドから体を起こした。ベッド上でL字に

なる。投げ出された足で少し膨らむ布団をじっと見つめる。

「くそ・・・学校いきたくねぇ・・・・」

と独り言をこぼしてみるが・・・・。さぼる勇気はない。ベッドからずるずると零れ落ちるように、降りた。

 

 自転車のペダルも、いつになく重く感じる中、いつもの通学路の風景が流れていく。時折現れるTN高校の制服に思わず目が行く。

何が・・・・・会いに行くだ・・・・・・。

身近な人間関係だって整理できないくせに。

カリナには、遠回し。

夕子にはいいようにあしらわれ。

自分の言いたいことを言えないまま、流されていく。

偽善者。そう、とんだくず野郎だ・・・。


教室に入ると、さっそくカズが近づいてきた。

「よう、おはよう。こういち・・・・」

「ああ、おはよう。」

「なあ、ちょっといいか・・・」

「ああ、うん・・・・」

席にカバンを投げ出すように置くと、カズと連れられて、教室をあとにした。

屋上へと続く階段の踊り場。

予想した人物がそこに待ち構えていた。

「こういち、おはよう・・・・。」

来島かずえはにこりともしないで挨拶を投げつけてきた。

「ああ、おはよう・・・」

「・・・・・・・・・ねえ・・・・・あんたってさ・・・・・・馬鹿なの・・・・・」

呆れるような、さげすむような・・・・ろくでなしを見る顔。

かずえの言わんとしてることはよくわかる。

「・・・・おれも、そう思う・・・・」

「はぁ~・・・・こんど・・・・・また、話しましょう、だって・・・」

「え?」

「伝言!夕子から!!」

「・・・うん・・・」

「・・・・キープってことにしないでね!!」

「ああ。無論・・・・そこまでゲスじゃない・・・・」

「どーだか。・・・・・・・・・部活の後輩ちゃんには・・・・・・・けじめつけたの?」

「えっと・・・・その・・・・一応・・・・」

「はあぁぁぁぁぁぁぁ~。・・・・・・歯切れ悪いわね・・・・こういち!」

「ごめん・・・・」

「あんたって、ほんと・・・・・・・・・・・・・・」

呆れかえり、右手を額に当て、目をつぶって頭を振るかずえ。

「なあ・・・・・そろそろもどろうぜ。HRが始まるよ・・・」

カズが助け船。

「そうね・・・・」

「かずえ・・・後は本人たちに任せよう・・・・・・俺たちのおせっかいは、ここまでさ。」

「・・・・ちっ・・・こういち・・・・・最後は納得させてね・・・・全員を・・・」

「・・・・・・約束する・・・・」

と、いってしまって後悔をする。みんなが納得できる結末?そんなもの、約束できるわけがない。

あああああああああああ。くそ!何もかもうまくいかない。

「もどろうぜ、こういち」

「え、ああ。そうだな・・・」

カズの声でハッとした。とにかく、今日一日をやり過ごそう。偽善者らしく。



 とりあえず、先延ばしでなんとかしようと考えた俺が浅はかだった・・・・。女ってのは、そんな甘くはないんだ。俺は半人前のライダーは、半人前の男だ、ってことだ。そう、一度投げたダイスは転がり続けて、望まないナンバーを出していくのだ。

 昼休憩。いつも通りな中庭のベンチに行こうと階段を降りている時だ。

 ピンと通知がきた。

スマホの画面を見ると、智が「恵子と食べるからごめん。」と知らせてきた。

こっちは四苦八苦してるってのに、あいつは・・・・。くそ・・・・。やれやれ、ゲスライダーは、ソロがお似合いか。

 その時、気がつかなかった。彼のメッセージには続きがあることを。読んでいたら、中庭に行かなかっただろう。ロック画面に映された最初の部分だけで、俺は判断してしまったのだ。


 中庭に出ると、いつものベンチへいく。ぼっちめしだが、まあいい。

(「きっとぼっちの時間が誰にでも必要なんだと思うわ。」)

レナの言う通りだ。今後のことを考えよう。そして、レナに会いにいくん、

「せんぱーい!」

「こういちー!」

聞きなれた声が2つ重なった。できれば、一緒には聞きたくない声。別々でもけっこう厳しい。

おそるおそる、顔を上げる。

そこには・・・・。

「イッチせんぱーい。一緒に食べましょうよーー!」

と可愛い花柄がちりばめられたランチケースを両手に持って立つ一ノ瀬カリナ。

「そうよ、一人はさみしいんじゃない?私たちと一緒に食べよ?ね?」

同じく、可愛い猫のイラストが所々に描かれた巾着袋を右手にもった坂下夕子がその隣にたっていた。

「え、どぉー・・・・した・・・・」

自分でわかる。笑顔が引きつっているのが。

「なにが?」

「ええ、そーですよー」

2人の満面の笑みを見て、俺は悟ったのだ。

女ってのは、執行猶予を許さないことを。まして、独りよがりの偽善的な言葉など、まったく無意味なのだ。あんな仕打ちをしたのに・・・。

狭いベンチだが、無理すれば3人座れる。俺の右にカリナ、そして左に夕子。両手に花のこの状態。2カ月前なら最高な気分だろう。レナと会う前なら。

「あのさ・・・2人知り合いだったのかな」

「知り合い・・・・坂下先輩、知り合いでいいんですかね~?」

ランチボックスを開けながらカリナはぶっきらぼうに聞いた。

「夕子でいいわよ~。私もカリナって呼ぶから。そうねぇー。友だち?いえ、戦友?いえいえ・・・・呉越同舟?って感じかなぁ~」

「ああ、昨日の敵は今日の友、的なぁ?」

「うんうんそうそう。」

なんか物騒なワードが俺を挟んでとびかってるが・・・・。

「さあ、それより、食べましょう。ね、こういち」

「そーですね、夕子先輩。いたただきまーす。ほらイッチ先輩も!」

「え、あ、ああ。い、ただき、ます・・・・」

ピン。

その時また、ラインの通知がなった。

(俺たちのおせっかいは今日までだ。後は・・・)

画面を見てすぐに校舎と中庭つなぐ入り口を見る。

カズとかずえが2人そろってこちらを伺っていた。そして・・・。

じゃ!

と、いうように小さく右手を挙げ、校舎内へと消えていった。

「明日からもぉ~、3人で食べましょう~?ね、イッチ先輩。ああ、智先輩には了承してもらってます!」

「あら、奇遇ねぇ。私も同じこと考えてたの。いいわよね?こーいち。ああ、心配しないで、かずえには話してあるから。て、ゆうか、付き合いだしたあの二人と食べるなんて、いやなのよ!」

「えっと、その・・・俺はぼっちめしが・・・い」

『ハイきまり-!』

両耳からハイトーンの声がこだまする。

「・・・・・・・・・」

周囲からの目が痛い。一見すると、女子2人に挟まれて、サイコーの昼食風景。

だが、左右の圧が半端ない。

自然に体が縮こまっていく。

今度、レナにあった時に話そう。

俺がやらかした、ゲスな話を。


優柔不断で一途って、男は許せるかも。

でも、女は許せないんだろー。知らんけど。

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