SS31 13番テーブルにはホットを
CBってさ、バイクって表現するより、CBっていいたいよね?
あ、おれだけ?
片側2車線の道路を軽快に走っていく。まだ慣れていないバイクなので、極力レーンチェンジをせず、周りのペースにあわせる。道路に面した、一角に見覚えのある店、Café Happy & Sad
が、見えてきた。メーターに浮かんでいる時刻は18:08。
今日は、客なので店舗前の駐車スペースにバイクを滑り込ませた。
CBにまたがったまま、ヘルメットを脱ぎ、道路に面したガラス越しに中をうかがう。
俺が遅れていたせいだろう。外を伺っていたであろう同級生3人とばっちり目が合ってしまった。ちょっとバツが悪いが・・・・。何食わぬ顔ををきめて、ヘルメットをミラーにかけ、グローブを脱いだ。CBから降りて、ミラーからヘルメットをとり、脱いだグローブを突っ込んだ。左腕に抱え、店の入口へ。
カラララン
聞きなれたドアのベルがなる。
「いらっしゃいま・・・あれ、こういちくーん!久しぶり~!!来てくれたんだ~。ちょっとぉー!あんたー!!こういちくんよ!!」
目を丸くしたかと思うと、満面の笑みでウェイトレス姿の奥さんが迎えてくれた。
「おっ、ひさしぶり~。元気にしてたかい?」
カウンタ―の奥からマスターが、わざわざ出てきてくれた。
「ご無沙汰してます。おかげさまで・・・元気ですが・・・・その・・・・今日は待ち合わせでして・・・・」
「あ、そう・・・・」
とちらっと例の3人をマスターは見た。何かを察したていた奥さんは肩をすくめて、苦笑いしていた。
「こういちくん・・・また、なんか・・・」
「あけありだよね?・・・はぁ~・・・・しかも・・・また、女がらみでしょ?」
奥さんは、なにかも見抜いているようだ。呆れた顔の中の口もとは、ちょっとにやついてる。興味深々。そういう口元だ。
「えっと・・・・そのとおりです。すいません、また・・・」
ごまかすの気が引けた。と、いうか・・・・
「あの・・・他に話せる場所思い浮かばなくて・・・・。」
「そうなの・・・あ、13番テーブル使いたかったんでしょ?」
図星。13番テーブルっていうのは、店の最も奥の角。しかも、壁が設けてある。個室のように。元々は従業員の待機場所兼まかないスペースだったが、奥さんとバイト一人程度なら、カウンター奥の事務スペースがあればよい。
そのため、結局、普通のテーブル席としてつかわれている。
乳幼児を連れたお母さんや、商談したい人、静かに読書したい人など、けっこう希望する人はいる。
「はい・・・その通りです・・・」
「空いているわよ・・・・。あの3人連れてっていいわよ。あんたもいいわよね?」
「そうだねー・・・この間みたいになったらいやだしね。でも、こういちくん、なるべ穏便に・・・・」
と言ったマスターの顔は微笑をたたえていた。
「ありがとうございます。」
一礼して、おれは彼らの待つテーブルへ向かう。
「・・・こういち・・・しりあいなのか?」
「ああ。この間まで、バイトしてたとこ。ここ。」
「ふーん、それも教えてくれなかったわね。こういち・・・」
カズとかずえの不信感が伝わってくる。
「ああ、ごめん・・・言いそびれた・・・なあ、テーブル変えようぜ。マスターには許可をとったから」
3人は顔を見合わせる。カズも夕子もかずえに向かって頷く。そうか・・・かずえが主導権をもってるのか・・・・。
ま、わかるけど。
「・・・・いいわ・・・・」
「じゃ、こっちだ」
おれは彼らについてくるように右手で指さしてから、歩き出した。
「飲みもの、お運びしますね」
気がつくと、奥さんがトレーをもって佇んでいた。
「すいません。」
「いいのよ、今日はお客でしょ?あ、こうくんは、ice珈琲でいい?」
「あ、いやホットのブレンドで」
「はい分かったわ」
手際よくトレーに3人の飲み物をのせ、奥さんはそそくさと13番テーブルに持っていった。
「じゃ・・・行こう」
3人に立つように促した。
そして、ほの暗い13番テーブル席に目をやった。
パッと13番テーブルの入り口からあかりがもれた。
奥さんがつけたのだ。
飲み物を置き終わった奥さんと通路ですれ違う。
「いい男を、演じなさいよ・・」
すれ違いざまにそうみみもとで言われた。
俺は軽く頷く。
「13番に、ホットブレンド一つ」
マスターにオーダーを通す声が耳に入った。
さて、開演だ。
ちなみに、私はCBを冠したバイクは、教習所のCB750しかのったことありません。




