SS30 ツイン・トリップ
新しいバイクが登場します。
ご期待ください。
カラオケボックスを後にして、バスに乗り自宅へ。
自宅に着いたとき、気がついた。
自転車学校に置いて来たことを。
「くそ!これも、カズとかずえのせいだ。」
八つ当たり気味の気持ちを抱えたまま、自室へ。
時計を見る。18時をまわっていた。歩いて行ける距離ではない。バスはもう時間的に無理だ。
遅刻は流石にかっこ悪い。こちらから呼び出したのに。
もう、選択肢は一つしかない。
リビングへ下りていく。カウンターキッチンで母は夕飯の準備をしていた。
「かあさん、ちょっと出かける。夕飯は帰ってから食べるよ。」
せわしなく動かしていた手を止め、母はこちらに顔を向けた。
「え、こんな時間に出かけるの?だいじょうぶ?」
「ああ、ちょっと・・・友だちとこみいった話をするんだ。」
母は俺の顔を静かに見つめる。
「はぁ~・・・しかたないわねぇ~。遅くなりすぎないでね。」
「ああ、うん。手短にすませてくる。」
「それは、だめ。」
俺の答えを聞くと母はキッと少し睨みつけてきた。
「どうして・・・・」
母は再び手を動かし始める。食器や水の流れる音がする。
「友だちの、こみいった話を・・・手短なんかで、済ませちゃだめよ。人としてね。だって・・・相手は女の子でしょ。」
「え、い、いや、ちがうよ。全然そんなんじゃ・・・」
言い当てられて・・・動揺を隠せない。
「何年あんたの母親やってると思ってるのよ。ま、いいわ・・・・・ただ、友だちに不義理なまねだけはしないのよ。いいわね。」
「わかった。」
そう言って、リビングの整理棚の引き出しから、真新しいキーを取り出した。
リビングをのドアに手をかけると、
「まだ、慣れてないんだから無理しないのよ。」
と母。
「うん。気をつけるよ。」
そう答え、玄関へと向かった。
ライディングシューズを履き、玄関からガレージへと向かう。
シャッターを開け、新しい相棒を迎えに行く。
CB400F。
あのプレミア4気筒の400ではない。一応新型のほう。
2気筒なうえ、車名とは裏腹の近代的?いや近未来的?な不人気の方だ。
でも、おかげで俺のバイト代や貯金をはたけば程度のいい中古を買うことができたのだ。
先週末納車されたばかりだ。まだ、2度しか乗ってない。
隣には、VT250SPADA
「畳とバイクは新しい方がいいってのか?」
「ま、1面の真理ではあるね。」
「ま、おいらの持ち主はあんたの母だし、しかたねーか。」
VTとかるく会話し、CB400Fを出す。
400とは言え、パラツインなので、取り回しはそんなに重くない。
ガレージの前に引き出し、スタンドをかける。
バイクに寄り添うように立ち、ヘルメットをかぶる。顎ひもを締め、グローブをはく。
CBにまたがる。
イグニッションをオンにして、セルを回す。
フオーン。
エンジン音が住宅街に静かに響いた。
メーターに浮かび上がる時計を見た。
18時37分。
ぎりぎりだな
考えてみれば、待ち構えているより、少し遅れるくらいがいいだろう。
いい話をしに行くわけじゃないから。
呼び出した相手を待たせる、クズやろうって、思ってくれたら、それはそれで、いいさ。
「おい、おい、はやく行こうぜ。いつまでニュートラにしておくんだい?」
「ああ、わるかった。」
CBにせかされ、クラッチを握り、1速にいれる。
コン、と軽く音がし、1速に入る。
じゃあ、いくか。
アクセルを開けながら、クラッチをもどしていく。
ググっとCBが前進しようとするのがわかる。
そのまま半クラッチを噛ませて、アクセルを開けていく。
ツインエンジンの音を響かせて、CB薄紫色に染まった住宅街を走りだした。
つーわけで、新しいバイクはCB400F、通称ヨンフォア、の方ではなく、
2気筒の新型の方です。
だって、高校生が中古で頑張って変えそうな400って、不人気車しかないんだもん。




