SS26 最終日にはモンブランを
短気バイトの経験はありません。
バイト自体はけっこうしたけどね。
バイトの最終日。
いつものようにワイシャツと黒のエプロンに着替えた。
事務所兼休憩室からカウンター裏に通じるドアを開け、店内へ。
マスターはいつものようにカウンターキッチンで開店準備を進めていた。
「おはよう、こういちくん。今日もよろしく。」
俺に気づくとマスターはいつものように爽やかに挨拶をくれた。
「あら、おはよう、こうくん。今日もよろしくね。」
店内清掃をしているマスターの奥さんも常と変わらぬ挨拶。
レナと別れたあの日のことを、マスターも奥さんも全く触れてはこない。次の日からいつも通りの態度だった。大人にとっては取るに足らないことなのかもしれない。そう思いながら、テーブルの整理整頓を進める。
「テーブルふいてくれる?こうくん。」
「はーい」
アルコールの入った霧吹きを持ち、キッチンペーパーのパックを手にした。
11時の開店。いつもの常連客が現れ始める。
「おきまりですか」「ブレンド2つですね」「いらしゃいませ」「オーダー、はいりまーす」「ごゆっくりどうぞ」「780円です」「ありがとうございました。」
いつも通りのCafé Happy&Sad。
忙しい昼時が過ぎた14時過ぎ、俺と奥さんはまかない休憩に入った。
奥の事務所兼休憩スペースに入ると、テーブルの上にはナポリタンとモンブランが置いてあった。
「え・・これは・・・」
すでにすわっていた奥さんに驚きをつたえると
「今日で最後でしょ?ささやかな餞別よ。遠慮しないで食べて。お店のだけどね。」
そう言って優しく穏やかな微笑みを見せていた。
「ありがとうございます。」
奥さんとテーブルを挟んで座りナポリタンをフォークで巻き取る。
「・・・・・こうくんさぁ・・・・・」
「はい」
「最後だから言うわね・・・・」
「はい」
「相手のことばかり慮らないで。」
「はい?」
「自分のこともよく考えてね。」
「えっと・・・・」
「納得、してないでしょ?」
「・・・・・・」
「あの子のこと」
「あの子?・・・・」
「金髪じゃない方よ!」
「あ、えっと・・・」
「ほら、そこよ・・・あなた、あれだけ、思わせぶりにしといて、あとは放置なの?」
「いや、その・・・もう・・・どうにもならないんで・・・」
俺の顔を見ずにナポリタンを咀嚼する奥さん。
「こうくんが、どうして全てを諦めてるか、詳しいことは私にはわからないわ。でも、こうくん納得してないでしょ?それでいいのかなぁ?」
ナポリタンを飲み込んだ奥さんは・・・俺を見据えてそう言った。
「・・・・・・」
「きっと・・・まってるわよ。あの子」
「・・・・・・そうでしょうか・・・・・」
「そうよ・・・それじゃなきゃ・・・あの子もあんな思わせぶりな態度・・・・しないわよ」
「え・・・」
「はぁ~・・・こうくんも、もう少し大人になれば、「女」をわかるようになるわよ」
「・・・・そういうもんですか・・・・「女」って・・・・」
「うん、そうよ!早くいい男になりなさい!」
奥さんは軽く右目でウィンクして微笑んだ。
レナは俺を待っている?彼女だって、もう何もかも諦めているんじゃ・・・・。
いや、でも・・・。それじゃ・・・・なんで、Happy&Sadにきたんだ。
最後に話したかったから?いや、全部を諦めたのに?・・・・・思わせぶりな態度?
ナポリタンを食べながら、考えがぐるぐるとまわりだす。
よく考えろ、レナの言葉にヒントはある。
「あ・・・・」
思わず口に出てしまった。
「ふふ。何か思い当たったわね?」
「ええ。間違ってるかもしれないけど・・・でも、きっと」
「それでいいのよ。ね?」
デザートのモンブランにフォークを刺す。この店自慢の逸品だ。
「そろそろいいかな?ちょっと混んできたぁ」
店側のドアを開けたマスターがそう告げてきた。
「はい今行きます!」
俺は急いでモンブランを頬張った。
「お、なんか、ふっきれた感じだね。こういちくん」
「え、ええ、まあ」
「よかったよ。さあ、頼むね」
モンブランを飲み込むと、スッと立ち上がり、店へのドアに手を伸ばした。
奥さんは満足気な笑みをたたえ、俺を見つめていた。
主人公のバイク、買い替えの予定なんだけど・・・。
中古のバイクってけっこう高いんだね・・・・。
嘘みたいな値段ついてるえわ・・・。
え、このバイクがこの値段!!
ネットで調べて驚いてます。




