SS21 バイトのまかない
暑い。暑すぎる。北海道なのかここは。
夏休みがはじまった。あの日、レイと話して以来、あのショッピングモールへは行っていない。悶々としながら、部活をし、まっすぐ帰宅していた。
「そろそろ、自分のバイクほしくないか?」
夏休み早々に、親爺はそう言った。
「ああ、そうだね・・・。バイトでもすっかな・・・暇だし・・・」
そうして、スマホやバイト情報誌で短期間のバイトを探した。
そうして見つけたのが・・・・。
「すいませ~ん、オーダーお願いします~」
「はーい」
いかにも女子大生です、ていう2人に呼ばれる。
そう、カフェでのバイト、ウェイターだ。
カフェって言っても、まあ喫茶店をちょっとおしゃれにした程度。
でも名前が気に入ってる。
「Café Happy and Sad」
そういえば、レナに貸した本の主人公も、カフェでウエィターをしてたっけ。まあ、どうでもいいけどさ・・・・。
俺は、3週間だけのバイト。3週間だけのウエィター。それが精一杯だ。
オーナー兼シェフは40くらいのナイスミドルだ。
「アイスカフェオレ2つです」
「はい・・・・。加古川くん、君も水分補給した方がいいよ。冷房効いていても、水分補給は必要だからね。」
オーナーはそう言うと、グラスに入れた水をカウンター越しに差し出してきた。
「はい、ありがとうございます。」
昼時を過ぎた店内は閑散としている。常連の年配の女性が、一人カウンターで珈琲を楽しんでるくらいだ。
「加古川くん、休憩入っていいよ。裏にまかないあると思うから。」
「はい、ありがとうございます。」
そう言ってカウンターからさらに奥に引っ込む。そこは小さな事務所となっている。4畳半程度の小さなスペース。真ん中にテーブルがおかれていてパイプ椅子が向かい合わせに2つ設置されている。
カチャ
この休憩スペースには、店側と反対側に、住居スペースに通じるもう一つのドアがある。そのドアが不意に開いた。
「こういちくん、休憩?ちょうどよかった。まかない持ってきたのよ。」
現れたのは、マスターの奥さん。髪を後ろに束ねて、白いワイシャツに黒いエプロンをつけている。そう、普段は俺とともにウエイトレスをしている。目元は涼しげだが、いつも優しい声色で、安心する。まかないは、奥さんが毎日住居の台所で作ってくれる。
「お店の残り物で悪いけどね、ホットサンド。どうぞ~」
「ありがとうございます。いただきます。」
「じゃ、私もいただきます。」
2人でテーブルをはさんでホットサンドを頬張る。
「ねえ、ねえ、こういちくん。裏のバイクあなたの?」
「ええ。でも、まあ、母のなんですけど。」
「ああ、そうなの。いいわね。大事になさい。」
「はい。でも、そろそろ自分の買おうと思って。」
「ああ、それでバイト?」
「ええ、まあ・・・・」
「いいわね。若いわねぇ・・・いろいろやりたいことがあって。」
「そういうもんですかね・・・・若いって・・・」
「今は、わからないと思うけど、いい年になるとね、そう思うのよ。」
「はぁ・・・・」
「私はてっきり、彼女とのデート資金のためとか思ってたわ。」
「そんな相手、いませんよ。」
「え、でも、昨日、夕方に、あなたのこと聞きに来た子いたのよ?」
「え!」
「今日はもう帰った、って言ったら、また来ますって・・・」
「・・・どんな子でしたか・・・」
「えっと・・・黒髪で(カリナじゃない)・・・シュッとした感じで(ゆうこでもない)・・・なんか落ち着いた感じの子だったわよ。」
「あっ・・・・」
「あら、心当たりあるようね?」
「え、いや、まあ・・・」
「バイト終わりの時間教えておいたから、今度来るんじゃない?たぶん。」
「そう・・・ですか・・・」
俺の予想が正しければ・・・。ここに来たのは・・・・・。
それにしても、俺のバイト先をどうやって知ったんだろう・・・。
「バイト時間も知らないってことは彼女じゃないのね。」
「はい。」
「でも、こういちくんに会いに来た、それは間違いないことよ。」
「はい。」
「会いにきてくれた女の子には、優しくしなきゃね?」
「はい・・・。」
「・・・なんか、わけありって感じかな?」
「・・・いえ、そんな・・・」
「そっか・・・・。ま、後悔しないようにね。さ、食べちゃいましょう。」
残ったホットサンドを口に放り込んだ。うまい。でも・・・彼女のことが気になって、ちょっと気もそぞろになっていた。
暑さにやられて、筆が進みません・・・。




