SS2 僕のLucky Days SS3 バニラシェイクを抱えて君に
なんとか、SS2を書き上げました。今どきの高校生って、クラス会とかすんのかな?
高校の駐輪場は、自転車でいっぱいだ。置き場を見つけるのには苦労する。ようやく隙間を見つけて自転車をねじ込む。鍵は当然2重だ。
駐輪場から昇降口まで歩きだす。出入口近くで、不意に後ろから声をかけられる。
「こういち、なんかいいことであったのか?」
話しかけてきたの、同じ部活の竹下智。一応、俺の数少ない友人の一人だ。振り返り、
「いや、とくには・・・」
と答えておく。
「そうかー、なんか足取り軽い感じだぜ!」
目を細染めて智は俺の顔を窺う。
「いいことあったら、もっと笑顔で登校するよ。」
「ま、そうだな」
昨日の出来事、レナのことを・・・とっさに隠した。なぜか、話してはいけない、そういう気がした。
バシッ!
「いた!!」
突然背中に鋭い痛みが走る。肩のあたりをたたかれた。驚いて振り向くと・・・。髪を赤ぽく染めブラウスを開け気味にして着崩し、丈がやたら短いスカート姿で、いかにもギャルですって感じの、見知った後輩が立っていた。
「いっち先輩おはようございま~す!ついでに智先輩も。」
「あ、おれはついでか?」
そういう智をやれやれという顔をして見つめる後輩女子。名前は一ノ瀬カリナ。俺たち弓道部の後輩だ。
「智先輩は、ついでに決まってるじゃないですか!だって、後輩に優しくないですもん。」
「はぁ?こういちだってそうだろう?」
「いっち先輩はいつも一緒に矢、拭いてくれますもん。先輩なのに。的の矢も、自分でけっこうとりにいってくれますもん!」
「いや、だって、それ1年の仕事・・・」
「だれもいけない時くらい、やってください。腕組んでいつまでも待ってるの、ちょっと引きますよ。」
「くっ・・・・」
「ふふふふふ・・・!」
「こういち、笑うなよ!」
「いやカリナの方が一枚上手だよ・・・・」
「くそ、後輩になめられてしまった・・・。」
「いっち先輩、今日は練習来るんですよね?」
「ああ、今日は団体の練習日だからな。」
すると満面の笑みで
「あ、じゃあ、また、飲み物奢ってくださいね!よろしくです!!」
といって後輩は去っていった。
「・・・こういち、後輩を物で手なずけるなよ・・・」
ジトっとした目で智は俺をみる。
「いや、物じゃなくて、日頃の行いだろ?」
といった瞬間、智は俺の頭にチョップを浴びせてきた。
昇降口から、階段を登る。
3階が2年生の教室だ。
「じゃ、智、またな。」
智と別れ、教室へ入る。教室の中央列、後ろから2番目の席。先生の目線が痛い席だが、そこが俺の席だ。座るやいなや、
「おお、こういち、おはよう!」
右斜め前に座るクラスメートの大森が立ち上がって、俺のところへ来た。大森一輝。去年も同じクラスでなにかと世話を焼きたがる、おせっかいな男だ。まあ、そのおかげで、去年はぼっちにならずにすんだ。彼と同じクラスになったのは、僥倖だろう。
「かず、おはよう。今日も朝から、げんきだな~。」
「ああ、それが取り柄だからな。あ、ところで、高1のクラス会しねーかって話、来てんだ、てか、してるんだ。」
「ああ。かずがしたいんだろ?」
「あったり~!進級して3カ月近くたつだろ?期末前にいっちょやるかって!」
「はぁ~、ま、いいけど、俺は。」
「じゃあ・・」
と言いかけるかずに、食い気味で
「でも、手伝わないからな!」
と告げた。
「っく・・・けっこうあてにしてたんだけどなぁ~・・・」
「ほかに、伝手あるだろう?かずならさ?」
「う~ん・・・・あ、でもさ、女子側の幹事、夕子もいるんだって、どう?」
「どうって・・・」
坂下夕子は数少ない異性の友達だ。たまたま隣の席だった時に、親しくなった。と、いっても、かずと一緒にくだらない会話をするぐらいだったが・・・。
「夕子はさあ、一緒にやりたがってると思うけどなぁ~」
いたずらっぽく笑うかず。
「そういうのは・・・いいって・・・」
諦観した感を出しつつ俺は答えた。
「ほーぉ~・・・、せっかくのいい機会だと思うんだけど?」
「いや、部活もあるし、それに・・」
「それにー?」
何かを期待する目。
「あ、いや、金なくて」
「なぁんだ・・・」
つまらない顔をするかず。
「ご期待に応えられなくて、もうしわけない!」
俺は威儀を正していった。
危うく、レナのことを話してしまいそうになってしまった。数少ない友人の依頼を断るほどには、楽しみにしているんだ、と自己分析。
「そうか・・・でもよ、じつ」
かずが何かいいかけたとき、予鈴がなった。かずは、もの言いたげな顔を見せたあと、自分の席へもどっていった。
昼休み。コロッケパンと紙パックのコーヒー飲料を手に、中庭へ向かう。昼は智と一緒に食べるのが日課だ。中庭のベンチに座る。智はまだ来ていない。とりあえずコーヒーでも飲もうかと紙パックについているストローに手をつけたとき、
「お、やっぱここか~」
かずが来た。
「え、かず・・・お前もここで食べるのか?」
怪訝な感じで俺は聞くと、
「ああ、いいだろう?智が来ても俺たちは一向にかまわないよ。」
「は、俺、たち?」
「かず~~、いっち~~」
と、遠くから声がする。声のするほうに顔を向けると、弁当片手に満面の笑みで、走ってくる女子2名。まっすぐに俺たちのところへかけよってくる。
「ハァハァ・・・・久しぶり、いっち!」
「ごぶさたね、いっち。」
坂下夕子とその友人霧島かずえだ。
「やぁ~、幹事引き受けてくれたんだって!ありがとう助かる!!」
そういって夕子は俺の手をとって喜んでくれた・・・。
「はあ?え?・・・」
おれはかずの方を目を点にして見た。
アンにゃろー。目を合わせねえー!!
こいつハメやがった!!。謀ったな!かず!!
「いや、もう、二つ返事で引き受けてくれたよ。な、な、なあ!!」
頼む、そうしてくれ、とかずの目は言っている。やれやれ、数少ない友人の頼みだ。ここは乗るしかないのか・・・。
「へえ~、加古川がそんなにやりたがるなんて、意外。」
霧島かずえは冷静に感想を述べた。その通り。やりたいわけはない。だって、断ってるもん。と、かずを見ると、なにやら、俺を拝んでる。あ、そういうことか・・・・。
「おーい、こーいちー」
智がようやくお出ましだ。
「今日はおれ、おじゃまか?」
俺たちの様子を見て、変な気を使っているな。
「いや、そんことない。いっしょに食べたいそうだ。」
「ふーん・・・」
智は、愛想笑いするかず、笑みをたたえる夕子とかずえをさっと見る。
「ま、たまにはにぎやかなのもいいさ。じゃあ、食べるか・・・。」
智はふっと、微笑んで俺の隣に座った。
反対隣にはかず、そして、隣のベンチにかずえと夕子が座る。
男に挟まれてちょっといやだったが、まあいい。
俺はかずにしか聞こえないように、呟く。
「貸しだぞ・・・。」
「ああ・・・助かる・・・」
隣のベンチのJKの声をBGMに、黙々と食べた。
彼女たちの楽しそうな声が響く。
ま、こんな日もいいか、と素直に思う。
SS3 バニラシェイクを抱えて君に
「と、いうことがあってさ。・・・今日、若干遅刻したんだ。ごめん」
フードコートで俺はレナにことの顛末を話して、謝罪した。
「ふふ、いいんですよ。だって、どっちにしろ、バス時刻まで待つんですか
ら。」
「ありがとう。」
と言ってひと息つく。
そんな俺をみて、
「そんなに気にしてくれてるんだ。嬉しいわ。」
といたずらっぽく笑う。
かなわないな。そう、素直に思う。
昨日と同じ席で、レナは待っていてくれた。それもまた、かなわない理由の一つだ。
「高1のクラス会を高2でするんだ。そんなの、うちにはないかな」
「ああ、それはね、うちの学校、高2が最後の学級替えなんだ。」
「ああ。そうなの・・・。でもそれ、ちょっと怖いわね。」
「ああ、もし、クラスでういちまったら、2年間暗黒だからな。」
「ふーん。でも、さっきの話から察するに、暗黒期にはならなそうね」
「かもね。でも、ま、俺「ぼっち」なんで」
「自称ぼっち詐欺はもういいわ」
といって微笑むレナ。
彼女の微笑む顔を見ていると、心がうずく。もっと見ていたいと。暖かさが胸を突きさようだ。
「いいなぁ。わたしもクラス会してみたい。」
「参加するだけならいいさ。幹事はたまらんよ。ほんと。店の手配に、出欠確認、案内のペーパー作り、雑務のオンパレードだ」
「あら、でも女の子と一緒にやるんでしょ?いいんじゃない?」
やっぱ、そこを突いてくるか・・・。
「いや、そんなんじゃないから・・」
「あら、どんなんじゃないの?」
斜に構えて横目で眺めてくる。
「・・・ふー。わかった、降参だ。うれしくないわけじゃありません・・・」
「で、しょうね~~」
勝ち誇ったように高笑いされた。控えめにだけど。
「でも、レナだって、そういう日があるだろう?Luckyをかんじる日がさ」
おれは、ちょっと食ってかかるように言ってみた。
「・・・えっと、そうね・・・・」
伏し目がちにして、指を組んだ両腕をテーブルにのせ、考えるレナ。
「たぶん、今日かしら?約束守ってくれたから・・・」
「・・・っく」
なんだ、この子。そんなことを言われたら・・・
「ふふふ・・顔真っ赤よ!こういち!!」
あわてて、目線を彼女からそらす。
「か、からかうなよ・・・・」
精一杯の強がりを見せる。
「でも、うれしかったのはほんとよ」
「あ、ありがとう。あ、忘れてた、遅刻のお詫びに何か奢るよ・・・」
俺は照れ隠しに席を立ち、世界1有名なファーストフードのカウンター行く。
「バニラシェークのSをにゅこ」
あ、やべ、動揺しててかんだ。つたわったかな?
「かしこまりました。お持ち帰りですか?」
「いえ」
しばらく待つと俺の目の前ににゅこのバニラシェークが現れた。
「お待ちどうさまでした。」
「え、あ、はい・・・」
10個のバニラシェークをトレーにのせ、彼女の待つテーブルへ向かった。
彼女は俺を見つけると、控えめに、でも、とても嬉しそうに笑った。
さあ、続き考えよ・・・。