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SS20 キル

久々に、こちらも投稿

本業だ多忙でなかなか・・・書けません。

「レイとお母さんへの、誤解?」

誤解とは何のことだ?

レイとその母と、特にもめてるわけではない。まぁ、納得していない部分はあるにせよ。

彼女たちはレナが消えることを願っている。その点だけが、納得いかない。いや、薄情とさえ感じる。だがそう思うのは・・・おれがレナに惚れてるせいなのかもしれない。当事者や家族の感じ方は違うのだろう・・・・。

「どこから話そうかなぁ~・・・うん、パパのことから話すね。」

「え?パパ?お父さん?」

「ええ。私のパパね・・・・去年、死んじゃったんだ・・・・・」

予想外の話と思った以上にヘビーな内容に、面食らった。声も出なかった。

「あのね、うちのパパ、バイク乗りでね。バイクに乗るパパがかっこよくて、大好きだった。たまに、私も後ろに乗せてもらってね。楽しかったわ。で、去年の8月。その日は、パパとママ、ちょっとしたことで喧嘩したの。」

「うん」

「きっかけは大したことじゃなかったらしいの。一応パパもママもお互い謝りあって、終わったみたいなんけど・・・」

「うん」

おれは、「うん」としか返事をしなかった。家族の、まして、自分の父について語っているレイに、何も言うべきではないと思ったからだ。

「ちょっと険悪な空気は残ってたの。家の中。気分転換したかったと思うのパパ。ヘルメット片手に家を出るのを、私、自分の部屋から見かけたの・・・・それが・・・・」

「うん。」

「生きてるパパを見た、最後だったわ・・・・。」

俺は返事すらできなかった。隣に座るレイの横顔を横目で見るのが精いっぱいだった。

いつもの明るさが消しとんだ顔をのぞかせるレイ。

レナの落ち付きはらった表情とも違い、明らかに心のつらさを押さえこんだ、苦渋をあらわしているような悲し気な顔をしている。

「いつもなら・・・返ってくる時間になっても、パパは、帰ってこなかった。ママがイライラしてるのがわかったわ。そしたら・・・・電話が鳴って・・・・。」

「・・・・・・・」

黙り込む俺をよそに、レイは話を続ける。

「でも、私が覚えてるのはそこまでなの・・・・」

「え・・・・」

「ショックが大きかったのね・・・そこから先の、お通夜から葬儀まで、私は全く覚えてないの・・・」

「それって・・・」

「うん、レナが・・・・あらわれたのよ・・・」

「・・・・・」

「気がついたら、私、仏壇の前だったわ・・・・」

「・・・・・・」

「ねえ、わかる?自分の親の葬儀にも出られず、位牌だけしか見ていない娘の気持ち・・・・」

たまらず、ice珈琲を口にする。

そうか・・・。レナは・・・・そうして・・・・。

「取り乱す私を、ママは病院に連れてってくれたわ。ママも、葬儀中、私の様子がおかしいのに気がついてたみたい・・・でね、その病院で、診察を受けてる途中に・・・・」

「レナが現れた・・・・」

「うん。ちょうどパパが事故を起こした頃の時間にね。」

「パパの事故ね、夕方だったの・・・・」

「うん」

「それから、夕方になると・・・毎日レナは現れたわ・・・・。毎日。・・・・お医者さんが言うには、パパを失った私のショックが和らいでいけば、レナは消えるって・・・」

消える・・・・。彼女はさらりとそう言った。

「レナは、いずれ人格統合で主人格の私の中に取り込まれて消えるのよ・・・いちくんが、レナををどう思っていても関係なく。あなた・・・耐えられる?」

「・・・・・」

「気の毒だとは思うわよ、私が生み出したんだし、でもね・・・・」

レイは俺の方に顔を向け、射貫くように見据えてきた。

「彼女を許せないのよ・・・私。」

何も言えなかった・・・・。

父の、親との最後の別れの場をすべて奪っていったレナ。自分が生み出したとはいえ、レナを許せない気持ちは朴念仁な俺にもわかる。

「だから、もう、彼女、レナに会わないで。レナに新しい生存理由を・・・持たせないで・・・」

すがるような、祈るような面持ちで、彼女、岡部玲奈は、そう告げてきた。

彼女の母も同じ気持ちなんだろう。もとの娘にもどってほしい。そう願っている。

でも、おれは・・・・・・・・。

「困らせちゃったみたいね・・・でもね、それが私の正直な気持ち。だから・・・言ったでしょ?付き合うなら、私にしなさいって・・・。」

いつもなら、こんなこと言われたら・・・舞い上がってしまうだろう。でも・・・・。それは・・・レナへの裏切り以外のなにものでもない。

「そう・・・か・・・わかった・・・俺から会いにはいかないよ・・・・」

「そう・・・ありがとう・・・じゃあ、私と付き合うのは?」

レイはそう言うと、悪戯っぽく笑った。

「・・・揶揄うなよ・・・本気にするよ?」

「いいわよ。あなた・・・いいやつだもん・・・」

驚いた。そう言われて、ドキっともしなかった自分に。

「だから・・・揶揄うなよ・・・・」

苦笑いしてそう繰り返すのが精一杯だった。

ごめんなさい。長くなった・・・・。

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