SS14 夏の日のレモンスカッシュ
いや、もう、どういう設定でいこうか、とても悩んでます。
練習試合が終わり、帰り支度を済ませた俺は駐輪場へ向かおうとした。
「こういち!これから昼でも食べにいかないか?」
と不意に智に声をかけられた。智の後ろには、恵子とカリナ。
なに、そういうことか・・・。いや、しかし・・・・。
もしダブルデート的なところを、レナに見られたら。
ちょっとまずい気がする。いや、かなり、まずいのでは・・・。ここは彼女のホームなのだ。
さっきのように出くわす可能性が、普段よりは格段に高い。ここは安全策を取るべきだ。
「ごめん、すぐ帰るんだ。親爺と約束があるんだ。」
「そっか・・・しかたないな・・・」
俺の答えを聞くと、智はわかりやすく落胆した顔をした。本人はそうしてないつもりだろうが・・。
「じゃあ、けいちゃん、また今度にしよっか?」
「そうね。また今度ね。」
2人の後輩女子は、諦めが早かった。
「じゃ、俺は自転車なんで・・・」
7月にはいり、だいぶ暑さが厳しくなってきた。じりじりとアスファルト照らす日光は、跳ね返って俺の顔へと熱気をぶつけてくる。
駐輪場へ向かい、自転車へ駆け寄った。
2重のロックのうち、一つ目のダイヤル錠付のチェーンを外した時だった。
「あ、あの・・・加古川浩一くん?・・・・ですか?」
俺の背後から、聞きなれた声がした。しかし、明らかに口調が違う。
おそるおそる振り返る。
そこには・・・。
レナが立っていた。
「あ、レナ?」
そういいながら彼女の方に体を向けた。
あらためてレナを見ると・・・確かにレナ。しかし、何か違和感を感じる。
「・・・やっぱり・・・そうなんだ。・・・・ふぅーん」
レナは俺をしげしげと見る。まるで何か品定めをするかのように。
「ごめんなさい。思ってた通りの人だなって!」
頭の中が混乱する。
レナは何を言ってるんだ?何度も会ってるだろ?
まるで初対面だ。
「レナ・・・いったい・・」
俺が口を開くと、
「あ、ごめんなさい。私とは・・・初めて・・・よね?あらためまして、岡部怜奈です。おかっち、とか岡ちゃんって、呼ばれてるの。」
おかっち?おかちゃん?え、レナはレナじゃないのか・・・・。
「あ、ごめん、こういち君。なんだかわからないよね。そうね~、じゃあ、ちょっとデートしない?私とこれから。」
「え・・・」
「うん、わたしとレナの事・・・・ちゃんと話すね。だから・・・・デートしよ!乗せてってよ!!」
その言葉に驚いた。デートと言う言葉じゃない。自転車に「乗せてって」という言葉にだ。
(「・・・・・ありがとう、でも・・・遠慮しとくわ・・・・自転車の二人乗りは苦手なの。」)
あの日の、頭痛で苦しんだレナは確かにそう言った。
だが、目の前にいる、レナ?いや、おかっち?は2人乗りさせろと言ってるのだ。
レナじゃ、ない・・・・・のか?
「・・・・・・・・・」」
目の前にいるレナらしき人物を何とも言えない感じで、凝視する。返事もできないくらい。
「ふふ、大丈夫よ、目の前の人間は、岡部怜奈で間違いないのよ!心配しないで、デートしよ!!」
岡部怜奈は俺の自転車の荷台に飛び乗った。
「あ、まだ、カギが・・・」
「あら、そう。」
おかっちはすごすごと荷台から降り、自転車から離れた。
「じゃ、待ってるわ」
そういうと、今まで見たことのないような、屈託のない笑顔を見せた。
自転車の2人乗りは、正直俺も好きじゃない。ペダルは重いしバランス悪くなるし、なにより、あの軽快感が失われるから。2輪でできてるものは、基本ぼっち仕様なんだと思う。
そういえば、親爺が、
「バイクは一人で乗るもんだ。一人で乗ってる分にはゼロ戦だ。だが、タンデムになったとたん、鈍重な爆撃機だ。曲がる、止まる、加速する。全部面白くなくなる。」
とか言ってたな。
うん、わかったよ。親爺の言ううことが。今日、今、わかった。
「ねえ、浩一君はさ、どうしてレナに会いに来るのかなぁ?」
「友だちだから、かな」
ペダルを踏み下ろし、車体のバランスを取る。
くそ、なんか、車体がぐらつく。おれ、こんなにへたくそだったかな・・・。
「ねえ、でもほぼ毎日だよね、会いに来るの。なんか特別な感情があるってことかなぁ?」
おかっちの台詞は、まるで他人事のようだ。当事者じゃないのか?
ああ、もう、なんなんだ!
「ちょ、そんなにとばさないでぇ~。ごめんって。ちょっと意地悪だった。あ、そこ!あそこに行こう!」
おかっちは右手を伸ばして指さした。が、荷台に横座りして、ちょっと、前のめりになったためか、バランスが崩れそうになる。
「ああ!あああ!、ちょっ、大人しく座っててくれ!頼む!!」
「きゃ、た、倒さないでぇ~」
ふらつく自転車をハンドルと左右に振って、カウンターステアを当てるように立て直して、停車した。
「ふぅー・・・・やっぱ、2輪は一人に限るな。」
「はぁ~・・・危なかったー。」
荷台の女子も、胸をなでおろしていた。
「やるね、こういち!」
そういって、レナ、いや、おかっちは俺の右ほお、軽くつねった。
なんか調子狂うな。
危機一髪を回避して、たどり着いたのは、有名なコーヒーチェーン店。ランチとかボリューミーなのがけっこう評判な店だ。
自転車を入り口横に置き、2重のロックをする。
その様子を岡部玲奈は、見守るように傍らに立って待っている。
「じゃ、はいろっか!」
と、彼女に促され店内へ。
2時になろうかという、中途半端な時間のせいか、割と店内は空いている。4人がけの席にと案内され、向かい合わせに座る。
「アイス珈琲2つでいいかい?」
レナはアイス珈琲。
だが、今日は違った。
「あ、私はレモンスカッシュで」
レモンスカッシュ、という言葉を聞いたときに確信した。
彼女は、レナじゃないんだと。
ほんと、登場人物の設定どうするか、いま悩んでます。




