SS11 雨の日のショートストーリー
雨の日は練習なんてしなかったなぁ。
本日は・・・どしゃ降り。放課後、一応、弓道場へ。
弓道場は、射場(並んで打つ場所)が大きく開いている。当然雨が降れば、雨が入り込んでずぶぬれだ。が、屋外の弓道場には、りっぱな鉄の扉を雨戸のように閉められるようになっている。しかも、荒天時でも矢が放てるように、狭間よろしく、閉めた後でも、1m四方くらいの窓が開くようになっている。そのまどから、矢をはなつことができるのだ。
まったく、むだに立派な道場建ててくれちゃって。おかげで雨でも練習可能ときたもんだ。ああ、さぼりたい。
「ちわーす・・・」
長屋のように横長の弓道場の横面に入り口がある。銀色に光る引き戸を開ける。
智とカリナ、それに数人が何やら道場の反対端に集まって、話し込んでいた。
智とカリナが俺に気づき、手招きしてくる。
数人の塊に近づく。
「やっぱ少ないね・・・今日」
という俺の問いかけは見事に宙をさまよって消えた。
みな、顔を見合わせている。
「・・・・・・・」
しかし、誰も話さない。
「なあ、なんだどうした?」
周りにうながされカリナが口を開いた。
「ちょっと・・・イッチ先輩・・その・・・こまったことが・・・」
申し訳なさそうに話すカリナ。
「なに?俺なんかした?」
「いや、その、こういち、」
と今度は智。
「どうも、俺たちが無理やり誘ったことが・・・その裏目になったみたいで・・・」
「え、どういうこと?」
「いや、ちょっと、恵子ちゃんに警戒されちゃって・・・今日も、部活誘ったんだけど・・・なんか、うまく断られて・・・」
と、気まずそうにカリナ。
「え、俺たち警戒されるようなことしたかな?」
「いや、やっぱ、強引すぎたかな・・・・」
と沈んだ声をだす智。
「どうしたらいいかな?恵子ちゃんやめるかも・・・」
荒沢先輩の心配に誰も答えが見いだせない。
「・・・・・・智先輩・・・帰りになにかしましたか?・・・」
カリナは容疑者を見る刑事のような眼差しを智に向ける。
「え、いやいや、ただ送っただけだよ。変なことしてないよ。」
「ほんとーですかーーー?」
「うん。ほんと。ほんと・・あ、ただ・・・」
『ただ?』
「イッチ先輩って、嘘が下手ですね、って言ってたな・・・」
その瞬間、俺とカリナは顔をあわせた。
「ああーーーばれてたか―・・・・・イッチ先輩のせいですよ!」
「いや、いや。カリナにも責任はあるだろう?・・・そもそも、当日に聞かされた割に。何とかしただろう?」
「え、じゃ、俺が悪いの?」
智は自分を指指す。
「そうです!・・・だいたい後輩に泣きつく智先輩が悪い!」
「そうねー・・・そう思うわ」
荒沢先輩も同意を与えた。
「やっぱり、カリナさんとイッチ先輩のさしがねだったんですねぇ~」
声の主の方へ目を向けた。
4人で丸くなって話していたせいで、まったく気がつかなかった・・・。
声の主は・・・・伊藤恵子。
「・・・あ、恵子ちゃん・・・い、いつからいたのかしら・・・・」
ひきつった笑顔を見せる荒沢先輩。
「えーとですね・・・「智先輩・・・帰りになにかしましたか?」のあたりからですね。」
うわ、ほぼ全部聞かれてんじゃん!
「・・・・・ごめん!恵子ちゃん・・・私とイッチ先輩が無理強いしたみたいで・・」
カリナは恵子のところへかけよって、頭を下げた。
俺も恵子の方へ歩みより、カリナの隣で頭を下げた。
「すまない。嫌がってるとは思ってなくて。申し訳なかった。」
「2人とも頭をあげてください。あの日はけっこう楽しかったので・・・・気にしなくていいですよ。」
頭を上げるとひかえ目な笑顔を俺たちに見せてくれた。
「でも、策を弄されたのは、いい気がしません。ね、智先輩?」
「あ・・・と・・・そのごめん・・・なさい・・・」
智の様子は、まさに青菜に塩。
「ふふふ・・・荒沢部長、今日は帰ります。」
「え、あ、そうね・・・いいわ・・・」
「智先輩、今度は直接誘ってくださいね。じゃあ、失礼しまーす」
彼女は踵をかえし、さっさと出て行ってしまた。
僕らは彼女の後ろ姿を呆然と見送るしかなかった。
「あ・・・・でも・・・・よかったですね、直接誘っていいそうですよ!」
はっとしてカリナは言った。
「え、あ、あれ?いいのか?さそって?」
「はぁ~・・・智、ここ、喜ぶとこ・・・」
「え、あ、や、やったー・・・で、いいのか?」
何か釈然としない表情で喜ぶ智を見て、俺たちは苦笑した
女の前では、嘘はつけないよ。絶対。まあ、ばれる。




