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次の日、私はサラに起こされた。
サラがカーテンを開け、部屋に光が入り込む。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、サラ」
少し心配していた、記憶の混濁などはなく、
あくまでキャサリンとして生活できる事にほっとする。
キャサリンの中に前世の記憶が追加された感じで、
あくまでメインの人格はキャサリンのまま、
これなら、周りの人が困惑する事もないだろう。
「お湯をお持ちしました」
「うん」
私は桶に入れられたお湯で、顔を洗う、
このベッドの上で顔を洗うの、
マンガでは見たシーンなんだけど、
本当にそうするのね~
顔をパシャパシャ洗うと、
すぐタオルが渡される、うーんふかふか、
この世界に柔軟剤とかあるのかしら?
お嬢様なので、その辺の知識はないのよね。
顔を洗って改めて部屋を見る。
30畳はありそうな広い部屋。
ピンクのカーテンは子供っぽくなりがちなのに、
デザインされた模様と、落ち着いた色合いから、
大人でもおかしくない雰囲気になっている。
豪華ではあるものの、家具は濃い茶色で統一され、
ギラギラしたゴージャス感は抑えられている。
この部屋のインテリア、本当にセンスいいわ。
改めて感心する。
インテリア雑誌の人が見たら、絶対記事にしたいって、
インタビューに来るわね。
そんな事を思いながら、鏡台へ向かう。
鏡台に座ると、サラが髪を結っていく、
後ろで二つに分けて、三つ編みにして・・・
「あ!」
いきなり声を上げた私に、サラの手がビクンと跳ねた。
「どうなされました?、お嬢様」
「ああ・・・えっと、今日は図書館へ行くのは止めるわ、
まとめておきたい事があるの、
白い紙を多いめに持って来てちょうだい」
晴れた日は図書館へ行くのがいつもの事なので、
鏡台の鏡には驚いた顔をしたサラの顔が映ったが、
すぐにいつもの顔に戻って。
「分かりました、朝食をお召し上がり
の間に紙を用意しておきます」
と答えてくれた。
それに、
「ありがとう」
と返して、まじまじと顔を見る。
この顔!思い出した!
「夢みる少女は恋をする」のヒロインのサポート役の顔だ!
そう言われてみれば、
キャサリンという名前だったような気がする!
転生して、自分のポジションがはっきりして、
胸を撫でおろした。
とにかく、断罪されるとか、没落するとかないし、
まあ、いいポジションなんじゃない?
上手くヒロインが王子と結ばれれば、
その親友という事で、メリットもありそうだし。
そんな計算をして、食堂へ向かう。
父、母と3人で朝食を取り、
部屋にすぐ戻って机に座る。
机にはきちんと白い紙が大量に置かれていた。
サラは有能ね。
私はまず、ゲームのストーリーの書きだしを始める。
このゲームは恋愛が主軸。
王子、護衛騎士、公爵、大商人、神官。
必ず誰かと結ばれてエンドになる。
王子ルートの場合、誘拐されるとか怖い出来事も起こるが、
基本は食べ物の差し入れをしたり、
大商人の商店で布を買ったりと、ほのぼのしたゲームである。
後は、各攻略対象のルートの確認・・・
そこまで行って、この世界と前世の世界との、
違いが気になりだしてきた。
例えば、乗り物。
水力発電があるので、電気はある。
しかし、石油が存在していないので、ここで大きな違いがある。
電車は蒸気機関車だし、飛行機、車はない。
人の移動手段は歩きか乗馬か馬車。
前世でいうバスが辻馬車に当たるだろうか。
また、貴族は自分の家で馬車を所有しており、それで移動する。
ゲームをしているだけでは分からない、
この世界の細かい世界観。
学校はなく、小学校に当たるのが教会での教育、
識字率は100%で、読み書き計算は全国民ができる。
病院はあるが、薬草での治療が主流、
外科手術などは行われず、
回復魔法を受けられない場合は死を待つしかない。
どんどん、ゲームの世界と前世の違いを書きだしていく。
お嬢様だけあって、平民の生活にはうといが、
それ以外は図書館通いをしていた事もあって、
キャサリンの知識量はかなりのものだ。
一日中記憶を頼りに、朝用意された紙のほとんどを使い切る程、
書きだしたのだった。




