3-3
粗末な屋敷の一室に閉じ込められる。
この辺りもゲームと一緒だ。
乙女ゲームらしく、乱暴な事はされない。
とりあえず、その事にほっとし、
見張りがいない事を確認し、
そっと、靴底から小さなナイフを出す。
これは護身用に仕込んでいた物だ。
セシリアが王子ルートに進み、
誘拐される可能性がある事を知っていた私は、
この時の為に、いくつかの準備をしてきた、
そして、このナイフもその一つ。
手を後ろに縛ったら、魔法が使えないので、
安全だと思ったのだろう。
ゆっくりと、縄をナイフで切り、
周りを見渡す。
そして、カーテン、お布団などを集め始めた。
「食事だ」
そう言って、男が部屋に入ってくる。
そのタイミングを見計らって魔法を使う。
まずはカーテン、
部屋に入った男を、ぐるぐる巻きの簀巻きにする。
ガシャンと食器が落ちる音がして、
他の男達もやってく。
あらやだ、カーテンじゃ足りないかしら?
もう音を出しても大丈夫なので、
いそいでカーテンを3分割にし数を増やす。
「なぜ動ける?」
抑え込もうとする男達を、
魔法でどんどん簀巻きにしていく。
あれ、これでも足りない?
まだやってくる男にさて・・・と思う。
「もう、終わりだ」
私は窓を開け、井戸の水を丸い形にして、
私の周りをふよふよ浮かせる。
「な?」
誘拐犯は驚いているようだった。
くどいけど、音ゲーSSSは伊達じゃないのよ!
私は渾身の力で、水の玉を男達に当てる。
思っていたより硬かったようで、
男達はバタバタと倒れていった。
ま、こんなもんよね・・・
ふっ
と決め顔をする私だった。
いきなり火魔法を使う男が現れ、
私の魔法が全て打ち消される。
「ここまでのようだな」
新たに現れた男の声に焦りが出る、
今までの男とは比較にならないぐらい強い・・・
この威力、コントロール、全てが私より上だ。
もう、駄目かも・・・・・
心臓が緊張でどくどくと音を立てる。
ぎゅっと目を瞑った時だった。
「キャサリン!」
バタバタと馬が駆けつける音がして、
王子が飛び込んで来る。
王子と騎士達は、火魔法を使う男に向き合う。
その人数に劣勢を感じたのか、
火魔法を使っていた男は逃げ出した。
「良かった」
私はぺたんとその場に座り込む。
「大丈夫か?」
王子が心配そうに私の顔を覗き込む。
「何人かは倒したのですが・・・
特別に強い男がいて・・・・」
今更ながら震えてきた。
「よかった」
王子がぎゅっと私を抱きしめる。
ああ、これ、王子がヒロインを抱きしめるシーンそのままね。
「何かあったら、どうしようかと・・・
生きた心地かしなかった」
素直に王子が私の事が好きなのだと感じられる。
そして、私も心も、とくん、とくんと音を立てる。
いいの・・・・よね?
セシリアの恋の行方という、心配事はあるが、
ここは素直に王子の心を受け止めようと思う。
「キャサリン様、申し訳ございません」
そこに表れたのは、満身創痍のメアリー
「どうしたの?どうして回復魔法をかけないの?」
包帯がまかれ、治療はされているようだが、
完全に傷をふさいではいないようだった。
「キャサリン様に忠誠を誓い、
お守りしなければいけないのに、
御身を危険にさらしてしまいました」
王子が困ったように言う。
「キャサリンの許しがあるまで、
回復魔法は受けないというんだ」
私はすぐ周りを見渡す。
「この中に回復魔法の使い手は?」
すぐさま、何人かから声があがった。
「私、キャサリンが許します、
すぐさま、メアリーの回復を」
「は!」
1人がメアリーの元へ行き、
回復魔法をかける。
「メアリー、私に忠誠を誓ったなら、
貴女は私の一部なのよ、
決して粗末にはしないで」
その言葉にメアリーは深く礼をする。
「ひとまず王城に向かおう」
王子の采配で、誘拐犯は捉えられ、
私達は王城に向かった。




