3-1 ゲームの行方(ウィリアム・メアリー視点)
「おかしい」
机に肘をつき、手を組み合わせ、
真剣に悩んでいる王子を見る。
話があると言われたが、話の内容は聞くまでもなく
分かっていた。
「キャサリン様ですね」
王子はゆっくりと頷く。
「下町へ行った、
凄く楽しそうにしてくれた、
距離は縮まったはずだ。
なのに、最近距離を置かれているように感じる・・・」
それは私、メアリーも感じていた事だ。
キャサリン様が、王子に対して、
どこかよそよそしい。
決して嫌っている訳ではないが、
あえて距離をとろうとしている感じだ。
「と、いう訳で調べてくれ」
「私の任務の範囲外ですが」
私の本来の仕事は、外国の動きを探る事、
今1年は特別で、学園の情報を集めているが、
王子の恋の相談は仕事の範囲外だ。
「仕事ではない・・・友人として」
ぼつぼつと元気がなさそうにしゃべる王子に、
仕方ないなという気持ちになる。
「ま、仕方ないですね、
私はキャサリン様の友人ですし、
王子よりずっと親しいですから」
きっちり嫌味も付け加えておく。
ぐうっと、捨てられた子犬のような顔をする王子を見る。
これが他の高位貴族なら、
自分の感情など切って捨てて、
冷静に冷酷な程判断できるのに・・・
どこまでも、キャサリン様は例外らしい。
「頼めるか?」
「友人ですからね、期待はしないで下さいね」
そう言って王子の部屋を後にした。
「どうしたの、メアリー
二人だけで話したいなんて」
ここは王都の離れた丘の上、
人けはなく、樹の葉が風でそよぐ音ばかりがする。
「王子の事、どう思っていらっしゃるのかなと思って」
いきなりの事に、どうして?と思う。
「素敵な方だと思うわ」
「そうではなく、好きですか?」
どうしてそんな事を聞くのだろう?と思うが、
失恋で弱っていた心は、
つい本音を漏らしてしまう。
「好きよ」
「なら、なぜ王子を避けているのですか?」
「私が醜いからよ」
「醜い?」
「ええ」
「キャサリン様は美しいです、他の誰よりも」
男性に言われたら、ドキンとしそうなセリフを言ってくれる。
「醜いわよ、嫉妬ばかり・・・」
「誰に対してですか?」
「セシリアよ、友人ずらして、最低でしょう?」
「何か誤解があるようです、
王子はセシリアを好きではないですし、
セシリアも王子を好きではありません」
「王子とセシリアは結ばれる運命なのよ」
「どうして、そう思われるのですか?」
「メアリーは知らないと思うけど、
セシリアの出自を知ったら、納得すると思うわ」
「それは・・・逆に驚きです、
なぜそれをキャサリン様がご存じなのですか?」
その言葉にえ?と思う。
メアリーがセシリアの正体を知っている?
今はこの国で知っているのは、
私だけのはずなのに・・・
「ここまでくれば、隠していても仕方ないですね。
私は実は、この国の諜報機関の者です。
(キャサリン様が気にしていたので)
セシリアも調べ、出自は把握済みです」
「なら・・・」
なら、セシリアが、本当は隣国の王の隠し子で、
王家の血を引いている事は知られている?
「血筋を知って、なお王子と結ばれる事はないと?」
踏み込んで、核心的な質問をしてみる。
「もう(王位)継承権は放棄済み、
隣国とセシリアとも話し合いはすんでいて、
この国で、今の身分のまま生きる事になっています」
セシリアの身分が回復されない?
それでは、確かに、男爵の身分であるセシリアは、
王子と結ばれる事はないでしょうけど・・・
「今まで、大きな秘密を抱えて、
気苦労はお察しいたします。
しかし、何も悩まれる事はありません。
王子は、キャサリン様、
貴女を心から愛しておられます、
それはこの仕事をしている私が保障します。
障害があるのであれば、
私が全て取り除きましょう、
なので、王子の手を取って頂けないでしょうか」
メアリーの言葉に、頭では理解できても、
感情が追い付かず、パニックになる。
王子が私を好き?
今まで、セシリアを王子ルートにしようと、
奮闘していたのは何だったの?
私、お助け令嬢として、何か失敗した?
あ、噴水、セシリアじゃなくて、
私が落ちたからダメだったとか、
他には・・・
とめどなく、思考が溢れてくる。
そんな私に、メアリーがそっと手を取ってくれる。
「もう一度申し上げます、
王子はキャサリン様を愛しています。
お願いです、王子の手を取って下さい」
「メアリー」
本当にそれでいいのだろうか・・・
そう考えた時だった。




