2-16
お忍び当日。
まずはガラスペンのお店から。
どことなく、王子と服が似ているように思えて、
その偶然に嬉しくなる。
「凄い!きらきらね」
店にずらりと並んだガラスペンを眺めていく、
いろんな色や捻りが入ったペンは、
とても可愛らしくて、
ついつい欲しくなってしまう。
少し横を見ると、50種類は超えるであろう、
インクがずらりと並んでいた。
色ごとに並べられたインクは、
グラデーションを描き、とても美しい。
「インクもこんなにあるのね、知らなかったわ」
ガラスペンだけでなく、
インク、紙と、どんどん店内を見ていく。
「私だけ楽しんでいるのではないでしょうか?」
あまりにも楽しすぎて、
セシリアについこぼしてしまう。
「えー楽しいですよ、
私もキラキラしたの好きですし」
セシリアは本当に楽しそうにガラスペンを見ている、
私だけじゃないと分かってほっとする。
王子も楽しそうだが、
ガラスペンを見てというより私を見てる・・・
と感じるのは、考えすぎだろうか。
「今日の記念に1つ買ってあげるよ」
王子の言葉に
「やった!」
とセシリアが言う。
セシリアは、王子が買ってくれるのなら、
一番高いのにしようかな~とか言っている。
私は結局、使いやすいシンプルなデザインだが、
色がグラデーションになっており、
かなり手のこんだ一品を選んだ。
「王子も同じ物でいいのですか?」
私と同じ物を買う王子に、
「お揃いというのもいいだろう?」
と微笑まれ、
好みが似ているのかなと、それ以上何も言えなくなった。
ちなみにセシリアは一番高いのではないが、
私が購入したペンの3倍の値段はする、
かなり高級なペンを買ってもらっており、
その豪胆さに、凄いわねと驚くのだった。
それからマルシェに移動。
昼食を屋台で買おう!という話になった。
小さなテントが並ぶコーナーに行く、
それぞれの店から、美味しそうな匂いがしていて、
通りがかるだけで、食欲がそそられる。
「何が食べたい?」
王子に聞かれて困惑する。
「私、ここは詳しくなくて」
すると王子が、
「あの料理は・・・」
と説明しようとした時、大きな声が割り込んだ。
「キャサリン様、これ美味しいですよ!」
お肉が店の前に吊るされ、回転しながら焼かれている。
「ケバブって料理なんです」
私はその美味しそうな匂いにつられる。
「そうなの?では食べてみようかしら?」
お金を払い、ケバブを買い、口に含む。
「まあ!美味しいわ」
セシリアは本当に下町に詳しいわね。
「後、あそこのイカフライも!」
セシリアの誘導するまま、昼食を楽しんだのだった。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎる、
「もう20分ぐらいですね」
「あ、では行っておきたい所があるんです」
「ではいきましょうか」
セシリアの案内で小さな建物に入る。
「ここは・・・万華鏡屋?」
「そうです!綺麗でしょう」
店の中には大小様々な万華鏡が置かれ、
店の中心には、大きなオブジェが置かれている。
そのオブジェがゆっくりと回転し、
店の一部を美しく彩っていた。
「確かに綺麗ね」
「時間があれば、手作り体験もできるみたいですが、
今日は無理そうですね」
「また、今度くればいいわ」
セシリアと王子が並んでオブジェを見るのを、
何となく眺める。
これで良かったはず。
サロンでは王子と話した時、がちがちで心配したが、
今ではこんなにも仲良しだ。
そして、胸がズキンと傷む。
勘違いしては駄目、
これはゲームをしている時、
王子が最推しだったから、辛いだけ。
お助け令嬢に転生した以上、王子と結ばれる事はあり得ない、
ただ、ヒロインが幸せになるのを見届けるだけ・・・
好きになっても、辛いだけ・・・
それに、今はまだ明かされていないが、
セシリアの本当の身分が明かされたら、
伯爵令嬢の私なんて太刀打ちできない。
初めから、勝てないようにできている。
ただ、思いは決して伝えないから、
思う事だけは許して欲しい。
輝く万華鏡に、千切れるような私の想いを重ねた。




