2-11
9月に入り、ゲームも後半に突入してきた。
セシリアのステータスはそこそこ上がっていると思うが、
9月の末にある中間テストで、
10位以内に入らないと、王子ルートが閉ざされてしまう。
元々、26位。
そこから、家庭教師などで学習をしてきた子息、
令嬢にまじって学園で10位以内に入るのは、
けっこう難しい。
元々王子ルートは課金しないとクリアできないぐらい、
難しいゲームだったしね・・・
とほほほ、と現実を認識する。
セシリアは頑張っている、
頑張ってはいるんだけど、
う~ん、ぎりぎりか・・・無理か・・・・
お助けキャラとして転生した以上、
何とかするのが私の役目。
やるしかないのかな。
これ以上となると、
魔法の操作技術を上げるしかない、
しかし、魔法理論ではいまいち上手くいっていない。
となると、
上級者が対象者に魔力を流して、
コントロールを教える方法。
正直、私は魔法についてはかなり極めていると思う。
ピアノでいうとコンクールに出れるレベルだ。
だからといって、ピアノ教室で、
何とか習っているレベルの相手に、
いきなり手の動かし方を強引に教えて上手くいくのか・・・
賭け・・・ね。
セシリアのヒロインとしてのスキルに、賭けるしかない。
唯一の救いは、失敗した所で、
大きなリスクがない所。
駄目元でやってみるか。
セシリアを校舎裏に呼び出す。
「何ですか?」
ときょとんとした顔で聞くセシリアに、
「これから私が魔力を流して、サポートするわ」
とだけ伝える。
実際、この難しさを語った所で、
セシリアには理解できないだろうし、
恐がらせてしまうだけだ。
「分かりました!お願いします」
全幅の信頼を預けてくれている相手に、
何とか期待に応えようと思う。
セシリアの手を取り、魔力を流していく。
「どう?魔力の流れを感じるかしら?」
「はい!しっかり分かります!」
いい調子、油断せず、ゆっくり・・・
自分に言い聞かせる。
魔力を大きくしたり、小さくしたりして、波を作る。
そして、セシリアの魔力と流した魔力を一致させる。
「これから魔力をコントロールしていくわ、
感覚をつかんでちょうだい」
「分かりました!」
セシリアの返事を聞いて、
少しずつ魔力を上げていく、
さすがセシリア、魔力がかなり多いとはおもってたけど、
私とほぼ同じぐらいの人は初めてだわ。
感心しながら調整していく。
「不思議な感じです、
魔力の大きいのと、小さいのが分かる気がします」
上手くいっているようだ、
セシリアが感覚を掴みつつある事に、ほっとする。
しばらくして、ふっと魔力を消す。
「あれ?」
「今日はこのぐらいにしておきましょう、
また、週に3回ぐらい、これを行っていきましょう」
私なら、1時間ぐらい平気でしそうだが、
普通の人ならこの程度だろうと切り上げる。
「ありがとうございます!」
満足そうなセシリアに、
お助け令嬢としての役割を果たせて、
かなりほっとしていた。