2-5(ウィリアム視点)
「これ、差し入れです、優勝おめでとうございます」
元々アーサーを探していたが、
キャサリン嬢の声が聞こえて、
慌ててアーサーの元へ向かう。
「ありがとうございます、これ、私が頂いても?」
「ええ」
アーサーが困惑しているのが分かる。
「手作りです、お口にあうといいのですか」
その言葉を聞いて、いてもたってもいられなくなった。
キャサリン嬢の手作りの品を食べる機会など、
今回を逃したら、永遠にないかもしれない!
「アーサー、沢山もらって余っているだろう?
これは私がもらって構わないか?」
あまり、行儀がいいとは思わないが、
横取りする感じで、キャサリン嬢のサンドイッチを手に入れる。
アーサーに渡せなくてがっかりされたらどうしようかと
思ったが、そんな事はなく、
むしろ笑顔で進めてくれて、ほっとする。
どんなに不味くても褒めちぎるのだ!
令嬢の作った物など、最初から期待していない、
それでも、ここは褒める作戦でいこうと、
決意して口にサンドイッチを運ぶ。
味が心配なのか、
じっと私を見つめるキャサリン嬢が可愛い。
自分を見つめている・・・
それだけで、彼女を独占しているような気持ちになって、
幸せな気持ちになる。
ぱくり。
一口、サンドイッチを口にはさんでびっくりする、
美味しい!
ほめ殺し作戦のはずが、
ついつい食べるのが止まらず、
どんどん食べてしまった。
これ、令嬢が作るレベルじゃないぞ?
シェフより上手いのではないか?
「美味しい!手作りというのは本当?」
疑っている訳ではないが、
思わず聞いてしまう。
セシリア嬢が必死に肯定している。
それを笑顔で満足そうに見守るキャサリン嬢。
その笑顔にどきどきする。
運命の再会は、いまいちロマンティックでは
なかったかもしれないが、
このサンドイッチを食べれただけでも価値はある。
両親から、キャサリン嬢との交際は許可をもらっている、
本当ならここで何だかのリアクションをしたい所だが、
なんにせよギャラリーが多い。
それに、今日の主役は優勝したアーサーだろう。
ここは引くべきだな・・・・
籠バックに入ったサンドイッチを全て平らげ、
満足してそう思ったのだった。