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寺子屋佐助の短編集

お弁当を持ってこなかった子供達

掲載日:2026/01/26

 ある時、病気で休んだ担任の代わりにやってきた代理の先生が衝撃的なものを目にした。クラスの三分の一くらいの子達がお弁当を持ってきていなかったのだ。おかしく思った先生は生徒たちがなぜお弁当を持ってこないのか尋ねた。

 生徒たちが目配せをすると身なりのいいジェームズがまず自信満々に答えた。


「ぼくのパパはお金持ちだ。学校の校外学習や遠足があった時は必ず一流のシェフを同行させて現地で取れる最高級の食材で料理を振る舞ってくれるんだ。だからぼくは今まで一度もお弁当を持って行ったことがないんだ」


 次に孤児院から通うマイクが理由を述べた。


「おいらに親はいない。だから一度だって誰かにお弁当を持たせてもらったことなんかないんだ。いつも自分で作ったサンドイッチをアルミホイルに包んで持ってくるのはそれが唯一作れるお弁当だからさ」


 するとトムが悲しそうに口を開いた。


「俺の両親は共働きだ。だからお弁当を作る時間なんかなくっていつも自分で冷凍食品を詰めるか、どこかで食べ物を買えるようにお金を持たせてもらってる。だから俺にとっての弁当はお金なんだ」


 ジェシカがげっそりとした顔で語り出した。


「私の家は貧乏だ。明日食べるものさえなくていつもみんなお腹が空いている。お弁当なんてもってのほか。けど野草の本が家にあるから遠足の時は決まって食べられる野草の場所を調べてから寄り道している。だから私にとってのお弁当はそこら辺に生えてる野草だ」


 美人のマリアが髪を靡かせた。


「あたしのママは痩せてる子が好きであたしも将来はモデルになりたい。だからあたしは太るお弁当なんか持ってこないしそもそもお腹が空かない。痩せていたらママはあたしを好きでいてくれるの」


 サリーも続けて理由を教えてくれた。


「ウチは宗教の関係で一日二食しか食べない。どうせ昼に何も食べないのだから持っていっても意味がないし、隠れてこっそり持っていこうものならパパとママが怒るの。だからお弁当はいらない」


 デーブに聞くと悪びれもせずにケロッとした態度で言い訳をはじめた。


「お弁当?あー、あれは学校にくる前に全部食べちゃったからもうない。なぜか分からないけどいっつもお腹が空いてるからパパとママは好きな時に食べなさいってご飯を用意してるんだ。パパとママは汁物を手で食べてもお皿に直接顔を突っ込んでも学校の先生みたいに怒らないし家で食べちゃった方が気が楽なんだ」


 そして最後にケビンが自販機で買ったおやつを口に含みながら説明した。


「僕は普通のお弁当がいいんだ。けれどもママ友やSNSが大事な母さんはキャラものの弁当を作っては自慢して食べたいおかずを入れてくれないし、僕のことは二の次なんだ。自分の事しか考えてない見栄っ張りな母さんの作ったお弁当なんか恥ずかしいし、友達にバカにされるし、いらないんだ。だからさっき捨ててきた」


 先生は自ら頼んだ出前のピザを一切れずつ彼らに渡すとふっと笑いながら語りかけた。


「私も今日は朝時間がなくてお弁当が作れなくてね。だから出前でピザを頼んだんだ。ただまあ、他の生徒がお弁当を食べてるのに君たちが何も食べてないのは先生ちょっと見過ごせなくてね、同じ弁当ない組同士ピザを分けあおうじゃないか。なに、別に今すぐ食べなくたっていいんだよ。お腹が空いた時に食べてくれると嬉しいな」


 お弁当を持ってこなかった生徒たちは各々ピザを受け取ると、視線を交わしながら食べたりティッシュに包んだりと談笑をはじめた。

 先生はその様子に満足すると、最後の一切れをぺろりと平らげた。

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