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第六話 公爵令嬢、サーカス団へ

「レイテア嬢じゃないか!」


 王城で(わたくし)を呼び止めたのはダロシウ殿下。


「ダロシウ殿下、お久しぶりでございます」


 貴族の礼をとります。


「ここへ来るとは珍しいこともあるんだな。私の茶会には顔を見せてくれないのに」

「申し訳ございません。いつも贈りものをいただき、大変感謝しております」

「まぁいい。今度の茶会、色良い返事を待ってるぞ」

「前向きに検討いたします」


 ダロシウさまを見送るように立っていると、おじさまが心配そうにおっしゃいます。


『レイテアちゃん……王子さまにもう少し愛想してあげなよ。婚約者だろ?』

(あら? (わたくし)に何か落ち度が?)

『王子さまの顔、あれは本気だと思うよ。同じ男だからわかるんだ』

(国のための婚約です)


 婚約してから今まで、数えるほどしかお会いしてないダロシウさま。

 父にも貴族の義務として、王家と公爵家の婚姻が国の安定に繋がると教わりました。


 それに恋愛というものが今ひとつわからないのです。


『レイテアちゃんは割り切れるの?』

(貴族の娘としてその辺は理解しております。そこに(わたくし)の感情が入る余地はないのです……)

『恋バナにきゃあきゃあ言ってるお年頃なのになぁ。レイテアちゃんには同年代の友達が……いないからか。カシアじゃ立場が違うし。貴族というのも寂しいもんだね』


 恋バナというのは同世代の友人たちと交わす恋愛事情のことですね。

 (わたくし)には無縁なことのように思います。


『結婚したらずっと一緒に生きていくんだからさ。王子の茶会には出た方がいいよ?』

(前向きに検討いたします)

『それ出る気ないやつやん……』

(おじさま、行政部受付です。さ、書類の申請しましょう)

『あ、誤魔化した』


 行政部にて暁サーカス団が興行している町がわかりましたので、屋敷へ戻り支度を済ませ、馬車で出発しました。途中ポーシェさまを迎えに森へ寄って、興行に間に合うよう急ぎます。


 侍女のカシアは『お嬢様にも困ったものです』と不満顔。


『レイテアちゃん、サーカス団って具体的にどんなのか知ってるの?』 

(そうですね……珍しい容姿のものが曲芸を披露するというのは知ってますが、(わたくし)も実際に見るのは初めてです)


 幼い頃にお父さまにせがんだところ、『公爵家の娘が見に行くようなものではない』と叱られました。


『それは楽しみだ。それに例のからくり人形も』

【私もだよ。それに、この人がどこからどうやって嬢ちゃんの中に入ったのか気になるねぇ】

(ポーシェさま……)

『まーたしれっと混ざってきたよ』

【カシアに聞かれてはまずいこともこれなら話せるでしょう?】

(そうでしたね)

『俺のことはおいおい教えるから。まずはサーカス団だよ』


「見えてきましたわ!」


 街道の向こう、中規模の街が見えてきました。


「あれがサーカス団の天幕ですか! カシアも初めてです」


 街外れに、それはもう大きな天幕が見えてきました。公爵邸の半分ほどの大きさでしょうか。天幕としては破格の大きさです。それだけで私の胸は高鳴りっぱなし。


 青、赤、黄色といった様々な色彩の看板と垂れ幕が、天幕を飾り立て、中でも一番目立つのはドラゴンの絵が描いてある看板です。

 見せ物の中にドラゴンもいるのでしょうか。


 初めてのサーカス。自覚している以上に(わたくし)は楽しみにしていたようです。

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