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転生おっさんin公爵令嬢は人型ロボに乗る  作者: はるゆめ


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第三十三話 開かれた戦端

 ヒ・カーショウ団長よりもたらされた情報は直ちに王家直属の情報部にて検討され、それぞれの街や村へ情報部員が派遣された。彼らは行商人を装い街へ溶け込み、宿で酒場で市場で不自然なことを探し求める。

 また軍情報部、税務管理官とも連携し、対象地域における物流の監視を強めた。


 折しも季節は秋。

 各地の耕作地は収穫を終えた穀物類や夏野菜が国内を移動する季節。

 また冬を前に豊穣を感謝する祭りが行われ、暁サーカス団も連日にわたり大勢の観客で賑わった。


 ある朝。

 王城と軍に国境に接する貴族領より緊急魔導通信が入る。


『帝国軍による侵攻あり。敵の兵力大型ゴーレム二体、兵およそ三千』


 直ちに即応部隊である王国第二軍が出立準備に入ったところに続報が入る。


「国境付近の山林二箇所で山火事発生。また複数箇所の穀物貯蔵庫より火の手が上がり、領軍はこれらへの消火活動にあたるため、迎撃体制に不備有り」


 消防は軍の任務である。もちろん街の住民も協力はするが、あくまで主導は軍が執り行う。

 山火事は対処が難しい上に人手を多く必要とするので、国境に位置する二千名の貴族領軍、その半数が消火活動に出ることになった。


 有事の際は現地の貴族領軍と王国軍が連携するのだが、現地の地理に明るい貴族領軍が半数となると、満足に戦えないのは誰の目にも明らかだ。


「やられた!」


 王城の執務室にてそれぞれの報告を聞いたダロシウは思わず声に出す。


「取り乱すな」

「申し訳ありません、父上」


 国王は冷静にダロシウを諌めるが、内心は穏やかでない。情報部から報告が数件上がっている。不審な動きをする町民や村民を拘束、その範囲は予想以上に広範囲だった。

 しかも火の手は監視対象ではない地域で発生している。


 戦時体制へと移行し、国王を頂点とする総司令部が各地への指示伝達を飛ばし、戦略会議は紛糾する。

 以前よりダロシウとレイテアの婚約を解消するように主張し続けた派閥、ルスタフ公爵軍に在籍するアテナを王家直属軍への移籍を唱える国防省が強硬に主張を言い募った。


 有事が起きたのだ。

 レイテアの人質としての価値がこれ以上ないものとなり、国王も頷くしかなかった。


 前者に関しては『婚約解消はレイテアが戦場に赴く前に』ということで落ち着き、後者に関してはダロシウが折れてレイテアとアテナは王家直属軍に編入となった。


 王城の横にアテナ専用の格納庫が建設され、バーターとして出した条件、アテナ製作にずっと関わった工房の長ガードを整備部長として任命、軍属となる。


 国境は第八耕作地にてレイテアが考案したバリケードが敷設されてたおかげもあって、貴族領軍は王国第二軍が現地へ到着するまで持ち堪えたものの、撃退には至ってない。


 偵察部隊から国境に広がる森林に帝国軍の前線基地がある模様で、補給もそこで行なってるとの報告が上がった。


 父であるルスタフ公爵から議会でダロシウが最後までレイテアとの婚約解消に反対していたのを聞く。


『レイテアちゃん、もう一度言うよ。王子はさ、政略抜きにして君のことかなり好きだよ』

(……)

『王族や貴族の婚姻に恋愛はほぼないってことだけどさ、少しは王子のこと、好ましく思ってるんだろう?」

(……)

『あの王子、本当に有能だぞ。街を見りゃわかる。色々な国策を推し進めてるじゃないか』

(……はい。古代遺跡に残されていた技術を再現して上下水道の整備を推進したのはダロシウ様です)

『男として愛する女の子を戦場に行かせなくないってのも自然な気持ちだ。レイテアちゃんのこと何とも思ってなかったら、喜んで戦場へ行かせる』


 王国にも帝国にも、アテナのような高機動兵器は存在しない。馬よりもはるかに速く移動出来る兵器というだけで、これまでの戦争の概念は大きく変わる。


『王子は婚約で君を繋ぎ止めて、戦場に行かせないようにしたい。でもレイテアちゃんはこの国を守りたい』

(はい)

『ならさ、王子を安心させるためにも、電撃作戦が出来るように計画を練ろうじゃないか』

(電撃作戦……?)

『あっという間に戦を終わらせる作戦だよ。長引く戦争は国を弱らせて、終戦後もその影響は何十年も続いていく。それをさせないために、一気に決着をつける』

(可能でしょうか)


 アテナが完成した時から考えていたことだ。


『アテナなら出来るさ。もちろん帝国については未知数の部分もあるけど、どっちにせよ国のトップを押さえりゃ戦争は終わる。どうする?』

(やります)

『ダロシウ王子に提案しよう。まずはそこからだ』


 この日より、レイテアは王城横の格納庫、並びに工房に篭りきりになり、その明かりは深夜まで消えることはなかった。

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