8/10
⑻『歩き出した群衆の残像』
⑻『歩き出した群衆の残像』
㈠
確かに見たのだ、歩き出した群衆の残像を。それは、見なかったという風にはカテゴライズされない訳である。見た、と言う風にカテゴライズされる訳である。しかし、そんなものが、そんな残像が見えるのか、と言う疑問もあるだろう。
㈡
例えば、夢の中で見た、と言っても、それは見た、と言う風にカテゴライズされるのが、不思議なことである。しかし一体全体、何なのだろう、歩き出した群衆の残像とは。俺は懐疑する、何のための、残像なのか、と言う風に。
㈢
歩いていると、疲れることもあるだろう、それでも、群衆は歩く様だ。強い信念があるのだろう。雨の日も風の日も、明るい時も暗い時も。俺はそんな、歩き出した群衆の残像、を称賛したい。まだ俺の知らない何か、がそこにあるだろうから。