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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「はい、殺意を認めます」

作者: 桜鳴 颯祈


 未だ残暑が厳しい夏休み明けの某日。

 ■■市立高等学校の始業式にて傷害殺人事件が起こった。


 クラスメイト3人を死傷させた容疑者のA(17歳)は罪状を認めており、以下はその供述の一部である。



「はい、殺意を認めます。計画も入念に練りました。衝動的でも突発的でもありません。夏休み中ずっとどうやって殺すか考えていました」

(中略)

「……理由ですか?いじめられていたので。お金も取られましたし、暴行も。いじめと聞いて普通の人が思い浮かぶことは大体されました。教師?知らんふりでしたね。担任は。気にしてくれる先生もいないわけじゃ、ありませんでしたけど。担任がとにかく大事にしたくないって。結局ただのいじめよりよっぽど大事になりましたけどね」

(中略)

「警察、ですか。行ったんですけど【被害者たち】がただの喧嘩なんですって言ったらもうそれでおしまいでしたね。名前も控えてます。【警察署名と個人名】さん。そこでもう他人に相談しようって気も折れたんで。親に?言えるわけないじゃないですか。親に自分がいじめられてるのを言うのって、自分がコミュニケーションを失敗したみたいな、すごくできそこないみたいで、はずかしい」

(中略)

「自殺を考えたんです。最初。夏休みに入る前まで。でも夏休みに入っておかあさんの実家に行ったら逆になんでこっちが死ななきゃいけないのかって思って。悪いことをしたのは向こうなので。罪悪感ですか?ないです。見てくださいこれ。(ズボンをめくってふとももを見せながら)根性焼きっていうんですっけ?それで作ったハート型。こんなこと面白半分にできるのって人間じゃないです。人間の振りをした化け物です。それを殺したからってなんで罪悪感があるんです?」

(中略)

「バレないとっていうか、ニュースにならないと意味がないなって。はい、なので休み明けの始業式でやりました。今いじめをしてる子達にいじめのリスクを知ってほしいなと。お金持ちとか格闘技やってるとかいきなり包丁で頭を刺してしまえば関係ないので」


 始終落ち着いた様子で受け答えをしているような内容だが、実際には話が飛んだり不意に涙が落ちたりと極めて情緒不安定な様子だった。また、匿名のSNSではいじめを受けていることを投稿しており、同じ境遇の人々と交流している。

 Aの最後の投稿はこうだ。


『みなさん、いつも仲良くしてくれてありがとうございます。決心しました。向こうに居なくなってもらうことにします。次の被害者が出ないよう、徹底的にやります』


 事件後、この投稿がAのものであったことに対して多くの反応とインターネットでの議論が巻き起こった。意外なことに否定的な反応の中には過去にいじめを受けていたが我慢したという経験の投稿もあったが、現在いじめを受けていると告白した投稿はほとんどが賛意を示すものであった。今後同様の事件が起こる可能性が高いとして教育委員会や警察は各ネットニュースや新聞に対して憂慮のコメントを出したが、特にネットニュースに関してはこれほどSNSで話題になっているものを避ける方がかえってわざとらしいとして連日同テーマでの投稿がされている。また、動画投稿サイトではAが投稿したとみられる実名と高校名つきのいじめの現場、さらに担任と警察の対応まで入った動画が拡散され、100万再生を突破。運営は倫理に違反するとして削除したが複製の動画が出回り、被害者たちの家には連日壁への落書きや罵倒電話などが相次ぎ、疲労を隠せない様子もまたニュースになっていた。

 

 そして当動画では亡くなった高宮 悠人さん(17)の恋人で同じく被害者の佐原 湊さん(17)からも証言をもらうことができた。

 被害としては腹部への刺傷による出血多量と子宮をえぐられたことによる永久不妊とされている。


「いじめとか、そんなんじゃないです。たしかにちょっとお金貸してーみたいなのはありましたけどバイトの給料入ったら返すつもりでしたし。根性焼きは、えっと、知らないです。自作自演じゃないですか?元々ちょっと変わったところもありましたし。被害妄想とか。そのせいで悠人が……。絶対に許せません。人殺しはなにがあっても許されることじゃないです」

「……音声があるって、なんですか?あいつがそう言ったんですか?画像?え、録画……?」

「いや、そんなわけないじゃないですか。友達同士のじゃれ合いでいちいち録画とか」

「やめてくださいよ、ほんとに私たちがいじめてたみたいじゃないですか」

「SNSに流れてる?は?ちょっと、録音止めて……止めろや!なに、これ、は、」

「【携帯デバイス】なんて病院では開くわけな……ひ、通知、なにこれ」

「や、やだ、ね、記者さん、記者さんってこういうの止めるの、得意ですよね?!」

「なんでもします、なんでも、あ、ホテル、いいとこ知ってるので、退院したら、ほら、ガキも孕まないから」



「--おじ?」


「誰の?」



 この取材は私的なものである。

 できうるならば姪の情状酌量の一助になることを願う。

ぴくしぶ同時投稿。

いじめをテーマのドラマを見ててふと思いついたので。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これだけ見ればざまぁ、で終わりですが、現実にこう言う事件が起きるようになれば、次はいじめ被害者がいじめ加害者にいじめっ子の汚名を着せられて殺されることになるでしょうね…… 学内防犯カメラの…
[良い点] 偶然なのですが『旭川女子中学生いじめ凍死事件』の現状の流れを偶然知って胸糞悪くなった数週間後に本作を拝見させて頂きました。 [一言] 法が助けにならないならば、警察が頼りにならないのならば…
[良い点] 犯人Aの証言ではマスクしている被害者()の名前、『インタビュー取れました』で流していらっしゃるw まぁ動画内容は『「私は(そこまで)悪くありません! ちょっとしたじゃれ合いだったのに!!…
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