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ありきたりな話
「なんで、貴方が」
その問いかけに返事は無い。
ただその見慣れた顔に呆れたような表情を浮かべながらよかった、とだけ呟いた。
これではまるで泣きそうになっているのが馬鹿みたいではないか。
来て欲しく無かった。見捨てて欲しかった。もうお前なんかいらない、そう言って欲しかった。
もし、そう言ってくれたらどんなに―――
「何をしても無駄に決まってる」
諦めたかった。何をしようが無駄なのだから仕方がないと。
仕方がないと思えたら、何もかも捨てられる気がした。見ないふりをして、逃げていられる気がした。
でも、彼は来た。
「貴方は、何をしに来たの?」
アイツを倒しに、と彼は笑いながら言った。
本当は。
来て欲しかった。見捨てて欲しくなかった。やっぱりお前が必要だなんてふざけて言われて、いつもみたいにくだらない話をしていたかった。
「いいわ、私も一緒に倒してあげる」
いつものように、そう言い返す。
つまるところ、私は彼の横でふざけ合うポジションがなんだかんだ好きなのだ。
まあ、貴方が来てくれて良かったなんて絶対に言ってやらないけど。