表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜の木の下で、貴女と。  作者: 麗菜
2/3

( 2 )  


 「 こんにちは 」

 

 誰かに声、をかけられた。

 

 綺麗な、声。

 心に響く優しい声。

 春の陽のように暖かい、人を幸せにする声だった。


 

 そこには、 私と同い年くらいの女の子が立っていた。


 

  淡雪のように白く透き通った、滑らかな肌。

 

  ふわふわと波打つ、長い栗色の髪は陽に透けて、

  煌めいていた。

 

  長いまつげに縁取られた大きな瞳は、宝石のようで。

  美しく、澄んでいた。

  


      一瞬にして、 目を奪われた。

   どうしようもなく、 心を惹きつけられた。


  目の前に立っていたのは、

  この世の言葉では、言い表せないほどに

  美しい女の子だった。

  

 


  どこか儚げで、幻想的な雰囲気を持つ、

  そんな、目の離せない人だった。


 目が合うと、女の子は私に向かって

 にこりと微笑んだ。

 美しすぎる、微笑みだった。

 

  

 はっ、とした。

 

 見えなくなったはずの「色」が。

 女の子にだけは、確かについていたから。

 

 期待するのを、やめて。

 すべてが、どうでもよくなって。

 灰色になった私の世界に。

 

 ただ、ひとり。

 女の子にだけは「色」があった。

 それが、何故かは分からなかったけれど。

 

 淡い色。 優しい色。 綺麗な色 ……


 女の子がまとう色は、すべて美しかった。


 中でも目をひくのが。

 女の子を取り巻く 桜色、だった。

 

 


 「 こんにちは 」


 と、返した声は緊張で震え

 消え入りそうなほど、小さな声になってしまった。


 初対面、というのと。

 たぶん、私は声を出すのが怖かったのだと思う。


 「皆」に悪口をいわれるようになった理由。

 そのひとつがこの声(人よりも高い声)だったから。


 女の子はもう一度、私へ向かってにこり、と微笑んだ。

 すべてを優しくつつみこむ、

 聖女のような笑顔だった。

 

 私のために向けられた、その笑顔は。

 女の子の優しさと暖かさがつまった、

 美しい笑顔だった。


 大丈夫、


 そう言われているようで。

 無意識の内に入っていた、全身の力が抜けていった。


 凍てついた心が、少しとかされたような ……

 そんな気がした。

 誰かの優しさにふれるのは、あの時以来で。

 それは、久しぶりの感覚、だった。


 





 




 

 

 


 


 

 

 


 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ