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拳闘士とラスボス戦その2

ラスボスの名前や主人公の必殺技やら某ハンター漫画の影響が如実に現れてる件

「やった! ダメージが通じそうなコイツを呼べるようになるまで耐えてた甲斐があったぞ。ワッショイ!」


 カンノウンの肩に乗っかるコウリンは基本的に手持ち無沙汰になるため、一人で盛り上がっているだけしか出来ない。


 その小物感醸し出すテンションからは不安しか感じられないのは気のせいだろうか。


「ゴゴゴゴゴ……破岩の大鉄槌」


「なんだかんだ喋るよなこいつ」


 標的のレベルが高いと判断したカンノウンは、召喚されて早々スキルによるチョップを振り落とす。

 コウリンの低STRとは真逆、巨躯の重量を乗せた強烈な一撃だ。


「本当になんなんだこの召喚モンスターは。ここまで色んなストーリークエストを見て回ったが、こんな存在聞いたことがない。ぬうっ……」


 何度目の正直か。剣でガードされても尚グリードリヒに常識的なダメージが入る。


 一対一でスタートの決闘ではあるが、味方を召喚して増やすことは可能であるし、必殺技の残り回数だって使った分に応じてちゃんと減る。


「そうか、拳闘士が最も入手に難儀する類の必殺技だったのか。他職業の長所と複合した効果が多いのがこのゲーム特有の必殺技だけど、コウリンさんのは『召喚師』とコラボした効果みたいだね」


「へえ、なんだそのうんちく」


「でも召喚師には生物の域を突破してるモンスターは召喚できないはずなんだけれども……コウリンさんは型破りがお好きなんだね」


 そう淡々と解説を始めたグリードリヒに、カンノウンは四十ニの腕全てを振り上げ、握り拳の雨を降らす。

 途方もなく巨体な拳は、もう相手の姿が見えないほどに全体を覆っていた。これでは逃げる事は可能だとしても掻い潜る事は不可能。


 カンノウンの攻撃力なら鉄壁をも粉砕できるはずだった。


「ゴゴゴゴゴッ……!」


「あれ」


 しかしそう上手くはいかず、戦況はたちまち急変する。


 カンノウンの腕の一本に謎の切れ込みが入った途端、一瞬でバラバラになって崩れ落ちたのだ。


 ≪盲目の覇王 発動中≫

 効果∶両目欠損時、攻撃力・AGI・LUK、共に4倍


「僕の闘いに眼は要らない。何も見ずとも何をすればいいかは手に取るように判る」


「なんかグリードリヒが恐ろしいことになってら」


 身を乗り出して見下ろしてみると、グリードリヒは称号効果を意図的に発動させるために自ら両目を潰してパワーアップを果たしていたのだ。


「正直、カンノウンを直視すればするほど身震いするほどの畏怖の念を感じずにはいられなかったから、これで恐怖心が払拭出来た。ここからは全力で参るよ」


 グリードリヒには長時間のプレイで得た手札がデパートのように山ほどある。

 ユニーク称号も有用な効果を持つ物や発動するタイミングが難しい物まで色とりどり、10個までしか同時にセットできない欠点を除けば欠点や弱点を補い合う構成も可能なのだ。


「はあっ!」


 拳が届く前に回りこんでは次から次へと斬り結び、二本三本とカンノウンの腕を細剣一本で破壊してゆく。

 スピードも残像が視えてしまいそうなほどに高まっていた。


「あわわ。おい観音像どうにか止めてくれ。あのバーサーカーが俺のとこにでも登って来たら今夜眠れなくなる」


「…………」


 ≪金縛りの呪い 発動中≫

 効果∶攻撃時に確率で麻痺状態を付与する。LUK差により確率変動(最大2%)


「黙るな! ていうかこいついつの間に動けなってるのか?」


 進退窮まった事実がもう一つ、カンノウンの状態異常耐性が無である弱点を突かれたため、凶悪な行動不能の状態にされてしまっていた。


「これで置物を相手にする必要が無くなった。呑気に胡座をかいてる本体を狩りに行こう」


 カンノウンを攻略したグリードリヒは大きく跳躍、森林のように入り組んだ巨腕をキックしながら上へ上へと昇ってゆく。

 生物として致命的な状態である両目欠損状態をものともしていない。尋常でない研鑽を重ねて得た高度なプレイヤースキルなのだろう。


「どこの世界で暮らせばそんなデタラメなこと出来るんだよ。あいつ心眼でもあるのか? もしかして超人なのか?」


「ふふ。見つけた」


「げげ! に、逃げるか」


 もう目と鼻の先まで迫られてしまったため、どうにか惨殺されないよう脚に力を注いで踵を返す。


 流石、いざとなった際の逃走に関しては一切の躊躇が無い。こんなお調子者では主人公に向いていないだろう。


「追いつかれたら死ぬ。追いつかれたら死ぬ」


「そんなに怯えないで欲しい。悲鳴を出さずにKILLするのは得意なんだ」


「セリフが殺人鬼! 怖ぇよ」


 プライドの消えた鬼ごっこが始まった。

 身軽さで勝るコウリンは、喚き散らしながらも相手の攻撃に注意し、カンノウンの腕に指を引っ掛けてパルクールのような移動を繰り返す。


 対してコウリンのAGIを大幅に上回ったグリードリヒであったが、視界を自ら潰した無茶が祟り、地形把握のために周囲を斬りつけながらの移動になってしまうので決定打を与えられないでいた。


 刻々と時間だけが過ぎ、残り三分にまで経過してゆく。


「……理解できないんだ。どうしてコウリンさんはイベント二位という栄誉を得てなお不敬虔不真面目でいられるのか。これじゃまるでMMOそのものを馬鹿にしているみたいじゃないか」


 脈略なく、グリードリヒはコウリンへと質問を投げかける。返事から居場所を推測する策を実行に移したからだ。


 猪武者の図式にも劣る凡策だが、猪同然な思考力のコウリンなら引っかかると画策したのだろうか。コツがあるとしたらうっかり口を滑らせてしまいそうな質問内容にするのが定石だが、彼の口から出たのは本心からの純粋な疑問だった。


「いや、馬鹿にするつもりはないぞ。だけどなぁ、めちゃくちゃやり込もうが電気代ばっかりかかるし、ただ虚しさが残るだけだと思うとやる気が消えてくんだよな」


 あっけらかんとした声が返ってきた。

 だがグリードリヒは何故か声の方向へ剣を向けるわけでもなく、更に言葉を投げかける。


「虚しいわけがあるかい。確かに生産性が無い仮想現実の遊戯かもしれないが、それでも立派な文化の一つさ。嫌なこと全部忘れて遊び尽くして、明日への活力にする。決して無駄でも虚しくもない」


「でも嫌なことからは逃げられないぞ。生活削って夜中までゲームするよりかは早く寝て明日に備える方が精神的にいいだろ」


「……っつ!」


 自分の認めた主義を宗教のように説いたが、キッパリと反論もといコウリン独自の価値観で返される。


 グリードリヒは目的と手段が入れ替わるほど頭に血が上っていた。


「君は素晴らしいとは思わないのか! どんなジャンルでも一生懸命に向き合い、血と汗を流して、喜んで悲しんで笑い合い、困難に打ち克つ人達の姿を! 君だってバラエティ番組は見るだろう。それを見て心動かされた経験はなかったのかい!」


「でもそれで生活がダメになったらまるごとお終いじゃね。汗水流すのはスーパーでの仕事だけで充分かなぁなんて」


「コイ……ツ!!」


 嗚呼、彼女とは永遠に分かり合えない。

 クールさを取り柄とするグリードリヒだったが、今この瞬間、自分が捧げたジャンルに正直な意思を以てプライドごと否定したコウリンに対し歯噛みするほどに激昂していた。


「もういい。そんなに嫌ならゲームを辞めてしまえばいい。峰打ち!」


 長くなった会話のおかげでコウリンの位置は手に取るように分かる。

 スキルを使い、足の止まったコウリンへ怒り任せの一太刀を浴びせる。


「よし耐えた……あ、今なんで前に転んだんだ俺?」


 直撃したがHPはたった1だけ残る。都合よくピッタリ踏みとどまった数値だが、スキル『峰打ち』は決して誰も倒せない不殺の業なので然るべき効果だ。

 しかし相応のリターンとして峰打ちの追加効果『怯み』の状態異常が入ってしまったため、肉体を使った行動が取れなくなっているのだ。


「ここで終わりにしよう。その方がお互いのためだ」


 魔法が使えないコウリンにはどうすることも出来まい。

 勝利の望みを断ち、いたぶり尽くして敗北を痛感させ、二度と立ち上がれなくなるほどに絶望を与えてから引導を渡したかったが彼とてスポーツマンシップに則る大人、早急なる決着を急ぐ。


 方法は単純、怯みから治る寸前に斬り捨てるだけだ。


「この決闘はこれにて……うぐっ! 妙な手応え!?」


 ところが、上段の構えから斬った結果、大木を叩いたような不明な感触が伝わる。

 コウリンにそこまでの防御力は無ければ、カンノウンは依然麻痺状態。


 すると一体何を斬ったのか。鳥肌が立ち悪寒が走る。

 視界を捨てているグリードリヒには不覚にも答えへたどり着けていない。


「しまった! 僕としたことが完全に油断していた!」


「ゴゴゴゴゴ……」


「ギリギリセーフ。動けなくなった時は終わったなと思ったけど、もう一体無事に呼べたみたいだぞ」


 グリードリヒは失念していた。コウリンには動作無用で発動できる必殺技があることに。


「何故学習したのに頭から抜けていたんだ僕は。コウリンさんは俯きから立ち直った時が一番……ヤバい!」


 二体目のカンノウンが出現、絶体絶命の危機に陥っていた主を拳で救っていたのだ。


 真に絶望を味わったのはどちら側か、決闘は佳境へと突入する。

どれがラスボスだ

次回決着

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