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拳闘士とラスボス戦その1

やっと始まるターニングポイント

実は何ヶ月か前に執筆していたのだよ

 一分にも感じる数十秒が経過した。

 制限時間があるためグリードリヒが初手で豪襲を仕掛けてくると予想していたがまるで動かない。更に片手剣の両手持ちというスタイルに異質さを感じ、コウリンは最初の一歩が踏み出せなかった。


「ああくそっ。もうこっちから行くぞ」


 先にしびれを切らしたのはコウリンだった。


 相手は並外れた強敵、しかし見たところスーツのような軽装である。体制を低くしスピードを活かして一直線に走り抜け、確実に仕留めるために急所を狙って連打を叩き込む。


「うし当たった! 連続クアドラプルパンチ」


 肉薄しても構えを崩さなかったため、チャンスとばかりに一心不乱にスキルを放ちまくる。


「狙いが単純、訳なく捌けるね」


 しかしグリードリヒは相手の動きを読み取り、最小限の動作で剣を用いて防ぎ止め、そして拳が止んだと同時に構えが戻る。


 リスクを冒して先手を取ったものの成果は無し、相手がどの能力値に重点を置いているのかすら不明のままだ。


「まあそりゃそうなるな。連続トリプルパンチ」


 失敗を実力差の問題だと割り切り、次にコウリンが放ったのは狙いを定めない小回りを効かせた乱打だ。


 死角から攻め入り、頭、胴、脚、そして剣にも拳を叩き込み、なおかつ何か仕掛けられても良いよう防御用スキルの準備を怠らない。


 何発かは確かな手応えがあった。


「……それだけかい? 今のは30……いや29点ってところだね」


「30点じゃ赤点回避だもんな。やっぱ強ぇ、俺が勝てるビジョンが浮かばねえ」


 結果的に発想は良かったと言えよう。ただ構えが一切崩れていないグリードリヒから察するに、ダメージはあまり通っていなかったようだ。


「だったら僕の番だ。これだけで終わらないはずだよね!」


「わわっ!」


 距離を置かれる前に、グリードリヒは剣を袈裟に振るう。

 コウリンは声を返して驚きながらも難なく回避するが、これは前奏といったところ。

 一撃目をあえて外し、相手の躱し方のクセを学習した後で二撃目以降から正確な連撃を放つ。経験則で考え五感で立ち向かうのが彼の本来のやり方だ。


「まだまだ! 君の本気はそんなもんじゃないはずだ」


「うおっ来た来た来たぁ。当たったら真っ二つだこれ」


 攻守交代。襲い来るアグレッシブな剣戟な対し、コウリンは後退しつつ上体を反らして間一髪躱し続ける。

 眼の前に見えた剣が光に反射してキラリと見えたのが恐怖でしかなかった。


「おかしい。僕は本気で当てるつもりだったんだけどなぁ。君も温まってきたのかい」


「いんや。俺は疲れるだけの本気なんて出してねぇぞ」


「ふうん。これでまだ本気じゃないんだ」


 グリードリヒの姉お手製の強力な装備に替えたおかげで、コウリンは機敏な動きを活かしたお得意の立ち回りをこなせている。


 しかし戦況は拮抗しているが、未だにグリードリヒの型が分からなかった。

 最初の連打を剣だけで防がれたかと思えば、今の攻撃は全て躱せていたりと得られた情報が安定しない。もし万が一にもコウリンと同じスピードタイプだったら逃げ切り勝利は難しいため、油断はできなさそうだ。


「僕の狙いが首だと予測してなければ手を抜きながら躱せない。つまり知っていたんだね」


「あの時言われた通りイベントのまとめ動画観たからな。なんかかわいそうだったし高評価押してやったぞ」


 実際油断していないかどうかは別であったが。


「ふっ。戯言はほどほどにね。飛空剣!」


 ここでグリードリヒはスキルを選択。

 剣に風の渦が宿り、片手で軽く一振りして衝撃波のように飛ばす。


「ひえっ!」


 やはり外れる一撃目。風の斬撃はコウリンの後ろで自然消滅する。


「サービス攻撃は終わりだ。ここからは近づけもしなくなるだろう。さあどうする!」


 続けざまに飛空剣の第二波が迫る。

 衝撃波は弾丸より遅く射程距離も5メートルと中距離だが、風故に不可視に近く目で捉えられないのが飛空剣最大の長所である。


「わぁまっず。あと一歩右にいたら死んでたぞ」


 コウリンは見てからの回避を捨て、先を読みながらの移動へと切り替えながら、放たれる衝撃波を躱し続ける。


「今だ。回し受け」


 だけかと思えばコウリンはスキルを使いながら急に真っ直ぐに駆け出す。

 対遠距離攻撃用スキルを使いながらの突然の転換により、グリードリヒは五感で判っていながらも飛空剣を放つのを止められなかった。


「ここで回し受けとはね。むう……これは……」


 ランダムな方向へはね返す技は、風の衝撃波を逆にグリードリヒへと差し向け、コウリンは運良く攻撃の隙を手に入れられたのだ。


「渾身右ストレート。決まりだ!」


 グリードリヒが自ら放った衝撃波を弾くのに手間取っている間、コウリンはまともに攻撃が通じなかった鬱憤を込めてぶん殴る。


 狙いは顔面、容赦無い一撃は頬に命中した。


「ふふ、はは。ちゃんと考えて戦えるようになってるじゃないか。成長してるね」


 しかし相手はキルラオンライン屈指の傑物、土台からコウリンの上を往っていた。


「えっ。効いてねぇ」


 コウリンの最大火力のスキルを使ってもなおダメージが1桁しか与えられていない。蚊でも止まったかのように微動だにしていないのだ。


 そしてコウリンは頭をフル活用し、ある結論に至る。


「信じられねぇけどお前防御型のステータスだったのか。おいおいおい、俺が一番苦手なタイプじゃねえかよコレぇ!」


 ≪善戦の防壁 発動中≫

 効果∶HP90%以上の時、被ダメージ減小


 ≪無感 発動中≫

 効果∶HP95%以上の時、被ダメージ半減


 ≪鎧の盾 発動中≫

 効果∶盾無装備時、DEF+50%


「ご名答、僕のタネは明かした。さあ、闘うか逃げきるかどっちを選ぶんだい?」


 グリードリヒの(ビルド)はDEFへ重点的に割り振り、受けに特化した構成だったのだ。

 大会で見せた一方的な戦闘はあくまで剣の攻撃力に任せた雑魚刈り。彼の真髄は喰らえど喰らえど倒れない絶望的なタフさ。

 しかもリジェネ能力まで備えているのかもうHPが全回復している。そりゃ逃げ切り勝利のハンデを与えるわけである。


「くううう。俺の力じゃ鉄板殴ってる気分だ。こんなんねぇよ……こんなのよぉ」


「おや? まさかとは思うけどもう勝負を捨てたって訳じゃないよね」


 コウリンはヒリヒリ痛む拳を労りながら俯いてボソボソと悲観的な声を出す。意外性こそメンタルが砕かれやすい一番の原因だ。


「俺が直々に終わらせたかったってのに、コイツに頼るなんてねぇよ……」


 ただし、諦めたかのように俯くのはここまでだ。すぐ前を向き直す。


「……いやまずい、コウリンさんは勝負を捨ててない。むしろここからがコウリンさんの賭け!」


 いよいよ微笑む余裕が消えたグリードリヒはコウリンがまとめられた動画がダイジェストで流れ始める。

 数人のプレイヤーに囲まれた時、バグを利用した罠に引っかかった時、コウリンの逆襲が始まるタイミングはいつも俯いた頭を振り上げる時だった。


「なんとかしてくれ観音像! お前が頼りだ!」


 思いの外時間が経過していたおかげで、コウリンの必殺技チャージが完了。

 両者を中心に地鳴りが巻き起こり、奈落に繋がりそうなほどに巨大な亀裂が入る。


「なんなんだ一体! 地割れか!? これから何が起こるんだ!」


 身の危険を察し、すかさずバックステップで距離をとるグリードリヒ。

 亀裂の下からは黄金色に輝く何本もの腕が這い上がるように伸び、大地へ掴み本体を持ち上げる。


「ゴゴゴゴゴ……シュウウウウ……」


 見た目だけならひれ伏したくなるほど神々しいが、登場の仕方は墓から現れるゾンビを彷彿させるチグハグさが、言うならばコウリンそのもののようであった。


「これが君の奥の手。魔王とも羅刹とも戦ってきた僕だけど、まさか神と戦うハメになるなんてね」


 コウリンが偶然続きで手にした最強最大の切り札・カンノウンが遅れて決戦に参上し、全てのプレイヤーの頂点に立つ男とついについに相まみえたのだ。

作品上のラスボス戦

一応サブタイ的には偽り無し

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