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拳闘士と破壊神降臨

「観音様じゃ! 観音様がワシの前にィィ! いよいよお迎えの時が来……いやこのワシのボケが重症となってしもうたようじゃ……」


 眼下にいたヨーゼフは目を点にしながら手と手を合わせて拝み始める。

 いくら非常識が常識であるファンタジー世界の住人でも、非常識の王のような存在が顕現したのだから敵わなかった。


「シュゥゥゥゥウ! 【観音菩薩鳴動波】」


「喋れるのかこれ。いやそんな話じゃねえ敵もいないのに止めてくれ!」


 語気を荒げてるコウリンの了見無しに、観音像は四十二の掌からあらゆる方向へ灼熱の光線を放っていた。


「えぇ……勝手に破壊活動始めちゃってるよ」


 光の筋はそこかしこの森へと降り注ぎ、着弾と共に振動も伝わるために隕石群でも落ちてきたかのような終焉が展開されていた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 カン・ノウンはゴブリンを倒しました。ゴブリンを倒しました。ゴブリンを倒しました。ヘルジャッカルを倒しました。アーチャー・ゴブリンを倒しました。キリング・ベアーを倒しました。タイフーン・ゴブリンを倒した。ヨーゼフ(NPC)を倒しました。

(省略されています)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 おびただしい数のレーザーによって、多数のモンスターが成すすべもなく力尽きていたとメッセージから告げられる。

 なお、余波に巻き込まれた者は人間とて例外ではなかったが、短時間で復活するためゲーム的になら些細な問題である。


「神は神でも破壊神だったか。どうすればこの破壊神を抑えられるんですかね……」


 山の表面さえも削られるほどの威力に、コウリンは思考を放棄する寸前であったが、召喚モンスターのカン・ノウンはまだまだ止まらない。


「ドドドドド……」


「おいおい、頼むから余計なことはすんなよ……あ、駄目だこりゃ」


 コウリンの懇願むなしく、それぞれの腕を真っ直ぐ伸ばしたかと思えば、四十二の掌をチョップの形にして振り下ろしたのだ。


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 カン・ノウンはたろうを倒しました。さっちゃんを倒しました。ゴキジェットを倒しました。ぁゃを倒しました。アロンを倒しました。イケメンマスクを倒しました。ザシュトロを倒しました。アイボーを倒しました。

(省略されています)


 コウリンの悪名度が大幅に上昇しました。


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 恐らく、異様なモンスターの出現に集まった野次馬であろうプレイヤーがまるごと下敷きとなった体のメッセージが届く。

 これで通常攻撃なのだから壮観である。


「悪名度ってなんだ! この金ピカ像俺に罪をなすりつけるんじゃねえ! ノット共犯!」


 コウリンは不穏なワードを見てしまったがために怒鳴る。

 字面の通り、悪名度は考えなしに上げた所で冒険に支障をきたすマイナスな効果が働く数値である。

 プレイヤーを倒したのはコウリンではないが、犯行に用いた武器が法定に立たされる訳がないのと同じよう、使役するモンスターの責任が主君に返るのは当然の摂理なのであった。


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 コウリンはレベル14→18に上がりました


 スキル【トリプルパンチ】は【クアドラプルパンチ】に進化しました

 効果:四回連続の通常攻撃 消費MP25

 条件:拳闘士のレベルが15、且つAGIに多く割り振っている


 称号≪歩く大災害≫を獲得しました

 効果:通常攻撃時、極低確率で相手をよろめかせる

 条件:一度の攻撃でプレイヤー10人以上を倒す


 称号≪初級モンスター使い≫を獲得しました

 効果:格上の仲間モンスターに命令が可能となる

 条件:仲間モンスターが合計30体にトドメを刺す


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 スラスラと流れるスキルや称号獲得のメッセージ。どうやら仲間モンスターは仲間であってもパーティ扱いではないようだ。

 コウリンが真っ先に着目したのは一番下の称号であった。


「もう手遅れすぎるがこれで言うこと聞かせられるんだな。とりあえずこの暴れ馬いい加減止まってくれ」


 口で命令を発するだけでいいが、コウリンはペチペチと平手で叩いて制する。


「ゴゴゴ……シュー……」


 おかげで暴走の一途を辿っていた観音像は、コウリンの意思に呼応するかのように破壊活動を停止した。


「シューって煙吹いてるけどもしかして機械じかけなんじゃないか、このやんちゃな子。ウンとかスンとか言ったらどうだ」


「シュゥゥゥゥ……」


「知能が全然無さそうなんだが。こいつの始末はどうつければオッケーなんだ……?」


 命令が届いたのでもしやと思い対話を試みていたが、無念ながらコウリンは基本的にモンスターを扱わない拳闘士の職業であるため不意に終わる。

 ただ、カン・ノウンのHPをよく見てみれば残りがあと5000程度にまで下がっていたのだ。


「今もぐんぐん減り続けてるな。もしかするとこいつの燃料的なのが関係してるのかも」


 コウリンは推測したが概ね当たっており、あくまでも召喚モンスターであるためいずれは消滅するのが道理。

 カン・ノウンにも擬似的な制限時間を設けてるため、HPの自動減少が解除不能で付与されているのだ。


「まあ何もしなくてもそのうち消えるのは素直に良かったと思っとこう。しっかしここから眺める山脈はすごいな。ただデカイだけでもこんな使い方があるんだな」


 カン・ノウンの頭上から山々を見渡しながら呟いた。

 天気は嘘のように晴れ渡っているため緑が美しく映えており、遠くには拠点である王都と王城が一望できる。

 観音菩薩鳴動波の影響から所々で山火事が起きている点は見ない振りをしていたが、これで最短の帰り道が高所から直接目で確認出来ていた。


「ドドドド……」


 そして召喚時間が終わり、カン・ノウンは一旦大地へ潜るように還る。

 コウリンは無事に着地、地割れのように荒れていた地面も元通りであった。


「よーし。必殺技が実に必殺技だったことが分かったし、そのまま王都へ戻るか。ネイロに自慢してやろ」


 紆余曲折あったが当初の目的通り必殺技を習得したコウリン。

 大地にクレーターを生むパンチや、どんな相手をも失神させるローキックのような技を想定していたが、想像以上の成果を得られたのは嬉しい誤算である。


 そのまま王都へのルートを忘れない内に辿ってゆき、ねじれる山道を越えて無事に王都の門までたどり着いたのだが。


「あの門番どうしたんだ? そんなピリピリして」


 無事でいられるのはここまでである。

 普段は特別反応を見せないNPCの門番が槍を構えて立ちふさがっていたのだ。


「……まさかあの時の悪名値か! ヤバいこっち追っかけてくる!」


 フルフェイスの鉄兜を被っていたため表情は読み取れなかったが、穂先を常にこちらへ向けている様子から敵意をひしひしと感じずにはいられない。


「なんとか躱せた。街中へ避難だ」


 槍を振り回す攻撃をかいくぐったコウリンは、脱兎の如く門を抜ける。

 コウリンの逃走劇が幕をあげた。

ランキングに載ってる作品が文章力というか情景の表現力が高くて羨んでばかりいる

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか見覚えのある名前が出てるw
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