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拳闘士はギルドに入る

登場人物殆ど自分がモデル

 クランに関しては、ネイロが直接説明するようだ。

 なお、このメンバーで未だギルドを知らないのはコウリンだけであった。


「ま、いわゆるプレイヤーの連合ってわけ。とりあえず作って加入しておけばまとめてチャット送信できるしギルドイベントにも参加できるんだ。この用紙に一筆記入すれば登録完了だよ!」


 そう言い、ギルドに名を連ねる証明になる用紙を持つ。

 (正式なギルド実装は後日公式サイトにて)と書かれている文面からすると、まだ仮実装の段階のようだ。


「へえ、何かアップデートの情報で見た覚えがあるな……」


 記憶を辿って、流し見していたギルドの情報を思い出そうとするコウリン。

 尤も、ネイロが語った以上の情報は何もないので、別にコウリンは深読みする必要は無い。


「ま、みんなだって他にアテがあるかもだし答えは明日に回してもいいよ。あくまでも候補の一つに置いてね〜」


 強引なテンションで推し進めるネイロにしては奥手な言い回しであったが、それもそのはず、今後は足並み揃えての活動が増えるため、無理強いしての加入はいざこざの原因になるからである。


 だが、そんな不安感を抱いていたネイロに反して、皆は水くさいとでも言わんばかりに協力的であった。


「何を仰るノデスか! わたくし、ネイロ氏のギルドに加入するに決まってます!」


「そうよ、悩むまでもないわ。ワタシはねいろちゃんの所有物だもの……」


 二人は迷わず記入する。

 元より二人は、気心の知れたネイロの連盟に所属するのは願ってもなかった機会である。

 それにネイロはトップクラスのレベルを誇るためにPK被害の抑止力ともなる。ゲーム進行的な観点からみても実益はあるだろう。


「うーん……なんかおいそれと書いちゃいけないような……」


 だがコウリンは、深刻な表情で忘れていた何かを思い出そうとしているだけであった。


 親密となったネイロからの誘いなら二つ返事で受けても構わない。しかしもう一人、大事な人物と天平にかけなければならない気がしたからだ。


「どしたの? まさかもう別のギルドに加入しちゃってた!?」


「いやそういう訳じゃない。サインするから紙よこしてくれ」


「やったあ! 感謝感激だよコウリン〜!」


 早速ネイロは、入手経路不明の万年筆をコウリンに手渡す。

 忘れてしまったのだから悩んでいてもどうせ思い出せない、なので書いてしまおうとの考えだった。

 なのだが用紙にあったとある情報が、脳裏によぎっている悩みが上書きされた。


「コウリン氏? ピタリとペンを止めてどうしたノデスか?」


「……ギルドマスターとやらはネイロになると書いてあるからな。へぇへぇ、お前なんかおこちゃま感あるしリーダーの務めを果たせるとは思えないがなぁ、ハハ」


 小馬鹿にするような口ぶりでコウリンは鼻で笑う。

 用紙にあるギルドマスターの欄には、ネイロの名が綴られていたからだ。


 ネイロ特有の目立ちたいだけの理由だと踏まえ、人の上に立つのは不向きであると考えての発言であったのだが。


「え? コウリンにマスター譲ってもいいの? ありがと〜! マスターのやることは加入申請のチェックや他のギルドマスターさんとの対話もこまめに行うし、権限の管理も疎かにしちゃいけないよ、後先考えず権限与えても混乱するだけだから。あとはメンバーそれぞれの役割やログイン率を覚えて戦略を組むのは当然だね。それと誰かが不祥事を起こしたら責任をとるためにあれこれと……」


「すみませんてしたマスター。何でもありません」


 マシンガンのように脅迫的な物言いで迫られ、コウリンは思わず敬語になりながらリーダーの厳しさと面倒くささを知った。


「そういうことで、ハードになるからドーンと私に任せてね。コウリンもやる気が出たなら交代してもいいからさ」


「そうよ。お疲れになったら、ワタシがマッサージして癒やしてあげるわ。いっぱいね……」


「お前のマッサージは絶対気持ちよくなるだけで済まなさそうだがな」


 そう言いながら、コウリンはギルドの一員となる証明のサインを書く。


 手続きは全員完了。ギルドの最大人数は現状十人であるなかで、一日目にして四人は好調である。


「これでわたくし達は皆同志ー! 末永くありたいノデス!」


「女のコ達の集団の一人になったって思うと、我ながら感慨深いわ。もっともっと女のコを呼んでみないかしら?」


「うんうん、それいいかも。このまま男子禁制の花園的なギルドを目指すのもありだったりしてね」


「男子禁制っておい……それも一つのあり方かもしれんが……あ、お前らちょっと待ってくれ」


 コウリン宛にフレンドからのメッセージが届いたため、本人は確認を急ぐ。


 その送り主は友人であるツキカゲ。何事でもあったのかと開いてみれば、忘れていた何かそのものであった。


『やあコウリン! 名前は明かせんが有名プレイヤーんとこのギルドにさっき入ったんや! しかもコウリンのことも認知しとるしおめぇさんも共に入らんかと誘っとるんやで。どや?』


 コウリンは友人の存在を空しく忘れていた。

 ネイロと同様に深い結びつきがある関係のツキカゲ。ネイロのギルドへの加入を誘うか、ツキカゲの選んだギルドの元へ自分も向かうかの選択が本来あったのだがもう遅し。


『すまん。勝手すぎて悪いとは感じてるが、俺もうギルド入ってるんだ』


『おめぇさんやること成すこと自由人やなぁ……まあええわ。また今度パーティプレイしような!』


 断わりのメッセージを入れて、軽率だった所業を収める。

 しばらく会わなければふと思い出す懐かしき存在も、一度再会すれば懐かしさが雲散して簡単に記憶からほっぽり出されるものであった。

 コウリンとはそういう人間である。

ギルドマスターが一番の雑用係になりそうだからね。仕方ないね

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