拳闘士とデスペナ
言ってしまおう
出てくる固有名詞の大体は直前に読んだ漫画が影響している
また翌日、コウリンは引き換えるスキルをようやく決定づける。
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スキル【渾身の右ストレート】を獲得しました
効果:ダメージ2.5倍の通常攻撃。消費MP50
条件:拳闘士のレベルが10。STRに多く割り振る(ポイントにより条件撤廃)
スキル【回し受け】を獲得しました
効果:遠隔攻撃の軌道をランダムな方向に逸らす。消費MP100
条件:拳闘士のレベルが10。DEFに多く割り振る(ポイントにより条件撤廃)
スキル【クェイクキック】を獲得しました
効果:正面範囲攻撃+確率でスタン。消費MP100
条件:拳闘士のレベルが10。LUKに多く割り振る(ポイントにより条件撤廃)
スキル【パワーチャージ】を獲得しました
効果:次の行動のみSTR二倍。消費MP5
条件:拳闘士で500ダメージ以上を出す(条件撤廃)
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あまり上手とは言えないが、バランスを重視して選んだ四つのスキルは拳闘士にありがたい性能だ。
それでいてイベントポイントはまだ3000近く余っている。いざとなれば、他にもステータスの条件を無視で様々なスキルと引き換えが可能である。
「いいぞいいぞ。これだけの数の選択肢があれば、もしピンチになってもスタイリッシュに切り抜けられそうだ。ポイントの力って最高だな」
コウリンは万能感に酔いしれ、すぐさまパワーアップを果たした自分を試すため、新たに追加されたダンジョンにソロ初討伐を目的に殴りこむ。
そしてボスモンスターであるシュバルツ・ナイトへ果敢に挑んだのだが。
「あ、HPがもう0だ。まあネイロでも苦戦するボスだし、そりゃ無謀だったか」
選択肢の多さが却って迷いに繋がったのが敗因で、軽いデスペナルティを負って強制送還されてしまったのだ。
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「薬の匂いがする……つまり病院か? 病院だな。まさかこれから検死されるわけでもないだろうし、怪我が完治するまで休んでろってことか」
目の前が暗転した状態から王都にある病院の一室で目覚めたコウリンは、純白なベッドの上で身体を起こす。
経験値は減少したが、ダンジョンの道中でそこそこレベルを上げていたため、レベルは出発前と同じ12のまま。
もっとも、紫の文字で『状態異常・大怪我(ステータス半減)残り5:59』と書かれているので、その間ボスへのリベンジマッチは不可能に近い。
特にコウリンのような一つのステータスに特化している者には半減なだけでも致命的である。
「とりあえず、不用意な行動は慎んどこう。病院から出なければ基本安全らしいし、この中を一通り散策するのも面白そうだしな」
案の定コウリンは敗北を深刻に捉えておらず、好奇心を発揮しつつ、ステータス低下で重くなった足を地に付け立ち上がった。
この施設内はPK不可の安全地帯。
リスポーンキル防止のために実装された施設で、デスペナルティで下がったステータスを取り戻すまでは滞在可能である。
無理を押して外へ戻るのも可能だが、もしステータス減少中と他のプレイヤーに察知されてしまえば、時を置かずして再度入院もあり得るため、実行すれば相当な博打となるだろう。
「いや、先にネイロに連絡入れるのが先か。でもあいつには俺ごときが何人倒されようが知ったこっちゃないか」
面倒な事を行いたくない免罪符を呟くコウリン。
そして扉に触れて部屋から出ようとした時、中から微かに声が聞こえてくる。
「アナタ、マダマダデナイデ下サーイ……ワターシ、サビシイデース……」
カタコトながら若々しい女性の声。どうやらこちらに気づいているようだ。
「おや、この病室他にも運ばれたプレイヤーがいるのか? まあ人の気配はしてたんだがな」
コウリンは不思議がり改めて一瞥したが、自身が横になっていたベッドの対角線上に声の主はいるとの見当はついていた。
カーテンで遮断されているが、幽霊でもない限り内側から声がしたとは明白だったため、気を楽にして向かう。
「はいはい誰ですかー。俺は勝手にどっかに行ったりしないぞー」
年下に話しかける様子となりながら、カーテンを開いた。
「ハジメマッシ……ワタシ、ニホンゴフジユウ……ナノデス」
ベッドで横たわっていた者は、ふんわりした金髪に宝石のような碧眼、海外からそのまま訪来したような清廉な少女であった。
女性プレイヤーは総人口の一割にも満たないため、この少女がキルラオンラインの世界にいる自体、出会い的な側面では意外と貴重である。
ネタバラシをすると、プライバシーのために同性同士でしか相部屋にならない仕様なので、この組み合わせは必然なのだが。
「や、やべ外人さんだ。もしかして英語かこれ……。マイネームイズコウリン。ニーハオ、ナマステ」
焦ったあまり稚拙どころではない言語で自己紹介を続けるコウリン。
これで首を傾げない者などどこの国にもおるまい。コウリン自身そう思われたものの。
「ン? んんん!? あなたがかの二位で有名なコウリン氏ナノデスか!? どっひゃ! 差し出がましいようですが握手して下さい!」
先程まで弱々しかったはずの少女は、ベッドから片手で跳び見事な着地を決めた。
「おわわ! 全然元気じゃねえか!」
流されるまま手を握られては、挨拶代わりのハグを受けさせられるコウリン。
積極的でミーハーな少女は、早速本題を打ち明ける。
「わたくしはミルキー! 拳闘士コウリン氏、いえコウリンシショー! わたくしに素手でも戦える術をご教授してくださいナノデス!」
そう名乗った少女は、憧れの人と出会えたために満面な笑みを顔全体に貼り付けていた。
「こんなとこでも、俺の知名度が上がってる証拠があるんだな。というか日本語喋れるとか俺の苦労を返せ!」
「大変申し訳ないナノデス。日本語苦手なふりをしているだけで、皆さんからとても優しくされるのでついやってしまうノデス。もう癖になっちゃってます」
「いきなり腹黒い本性出すなよ……」
てへへと笑うミルキーに、早くも教授する意欲が失われそうであったが、気を取り直して、バトルロイヤルで自分の及ぼした影響を再確認する。
そもそも昨日の時点で、再会した友人ツキカゲや公認プレイヤーのグリードリヒと、コウリンにとって看過できない人物が立て続けに現れている。
今だって、長く滞在しない場である病院内にも、見ての通りファンのような者が存在していた。
バトルロイヤルの二位の成果は、実質的に全プレイヤーで二番目に注目を集めることを意味すると改めて実感させられていた。
「そんでだ。俺は格闘技や体術やら何もやってないから、素手について教えられるもんはないぞ。他をあたってくれ」
ミルキーの頼みを一蹴。無い知識はいくら引き出しても無いため妥当な判断である。
「オウノウ! わたくし、断られたショックで泣きたいナノデス! だからわんわんとわんこみたいに泣いてやりまーす! ワーンワン!」
「新手の脅迫か。お前どうしてそんな悪どい真似してまで素手を教わりたいんだ? お前見るからに殴る必要のない剣士だろうしさ」
明らかに涙を流す気配のないミルキーをあしらいつつ、彼女の左右に腰に携えてある二つの鞘を眺めて言った。
彼女は二刀流のスタイルなのか、ただ予備の剣を持ち合わせているだけかはまだ定かではないが、宝石やドクロの装飾が施された二つの鞘からは並々ならぬ価値を漂わせている。
武器の性能が頼りないならまだ分かるが、そんないかにも強力そうな剣を所持しながら素手を学ぼうとする意図が掴めないのだ。
「話せば長くなるので言えません。ですがわたくしの嘘つかないおめめにかけて、お願いナノデス!」
ぱっちりした目をキラキラと輝かせ、手を合わせておねだりするような仕草で頼み込む。
「うぐっ。ネイロみたいに根拠のない可愛さを武器にするとは、なかなかセコいな……もう折れた。病院にいてもぐうたらしたりチャット送るしかやること無いしな」
「ワーイ! アリガトウゴジャ……」
「いいか! 厳しく言うつもりは無いが、完治して退院するまでだからな!」
「はい。わかったノデス」
言葉を遮り、あくまでも自分が優位と突きつけつつ承諾する。頼みを断っても理由づけが面倒になるし、ミルキーはどんなこじつけで教授しても喜んでくれそうなので、それまでの付き合いと考えてであった。
彼女は天真爛漫さの影で、どんな業に縛られているのかは知らず。
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