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拳闘士とボスモンスターその2

(4/11)不自然だったので敗因について追記

「余には分かる。貴様に何か好機が巡って来た顔をしているように見えたのでな。違わないか?」


 コウリンの表情の変化により、現在進行形で起こっている事を的中させるボーン・ロード。


「当たり前だ。やなことが連鎖して続くってのはな、もうじき良いことが起こりますよっていう頃合いだからな」


 対してコウリンはあからさまにニヤニヤ笑いながら適当なポリシーを語る。

 コウリンの装備の無い部位は5つ、ステータスは50も増加されたのだから大幅に強化されたと言っても過言ではないだろう。


 なお、装備している柔道着上下は合計守備力15なので脱ぐだけで更に強化するが、そんな細かい事実に気づかないのはここまでくると目を瞑るしかない。


「戯けが! 腑抜けの貴様に都合の良い事はもう二度と訪れはさせん! 消えろ!」


 荒ぶる憤怒に燃え出したボスは、精度を捨てためった刺しを展開する。


「よしよし、想像以上に速くなってるぞ。これならどんな技がきてもヒラヒラ躱せ……あ」


 数撃ちゃ当たるを体現させるように、刺突の内一発がコウリンの右目を貫く。

 するとコウリンのHPが大幅に削られ、流石に右目は失明こそしないが、部位欠損(右目)の状態異常となり短時間の間光が消え真っ黒となる。


「やっべええええええ! 目っ目目目目目目目目目が! まさか目が潰れるとか貴重な体験することになるとか思わなかったぞ」


 コウリンはほんの一瞬かつてない程に気が動転してしまっていたが、生物の弱点の一つを貫かれては仕方がないだろう。


「フッ……見違えた動きにほんの少しの間驚いたが、拍子抜けだ」


 相手の放った攻撃は特別強力ではなかったが、コウリンは拳闘士である。

 具体的には、剣やナイフ等刃からのダメージが1.5倍になってしまうマイナス補正付きであるため、かなりのダメージ量となってしまったのだ。


 これでは左目も失うと危惧する以前に一回でも攻撃を受ければ敗北である。


「余を侮り調子に乗りおったようだが、どうやら勝敗は視えてきたな」


「……お前、目を狙うのは反則だっての。もうマジで許さん、こっからはお前の骨をカチ割るつもりでやるわ」


 ところが萎縮した精神から一転、右目を閉じ眉に皺を寄せムキになったコウリンは、一拍置いて思案した後に剣先の下から相手の懐を目指して駆け出す。


「良いぞ! それでこそ勝つか死ぬかの酔狂なる戦いというもの。しかし、貴様はこれより真っ向から両断して殺す!」


「それはどうだか、ダブルパンチ連打」


 真剣な相手の形相が見れたために高揚したボスだったが、己の想定以上に神速となったコウリンの脚が接近を許してしまう。


 ボスのHPは鎧を通して削れ、尚かつ何度も放たれた衝撃が命中された鎧は限界を迎えたのかバラバラになりながら落ちて消滅する。


「よし剥がした。あと一息、丸裸のホネホネになった本体をブッ壊すだけか」


「いいや、舞い上がるのは早い。自慢のスピードで我が鎧の壁を破ったつもりのようだが、余は【アーマーパージ】のスキルを使用しあえて砕かせたという訳だ」


 しかし、ボスは覚悟の真髄を体現するかのように、意図的に鎧を失い0となった防御力の犠牲と引き換えに、己の長所であるSTRを倍増させていたのだ。


「そうっすか。俺的には装甲が無くなってる分ザコ敵感がプンプンしてるんだが……どこいった?」


 その一瞬、コウリンの視界からボスが消えていた。

 とはいえ、ビュンと聞き心地の悪い風の音が聞こえたため、ただ姿が消えただけではないと察しだけはつく。


「理解が鈍い。これでは余の真の本気についてこれまい」


「おっ!? ビックリした。スピードにはスピードをぶつけるってか」


 目で追えなかったと把握する前に、ボスは回り込んで背後から剣を振り降ろしていたのだ。

 間一髪で前転のようにして躱し、体制を整えている間にまたもやボスが一瞬の内に背後に迫っていた。


「鈍い、鈍すぎる! 再び形勢が逆転したな挑戦者よ! 貴様の仏頂面から自信の色が薄れてきているぞ!」


「くっそうるせえ……口まで速くなってんじゃねえかこいつ」


 袈裟斬りに対して身体をぐねりと捻りギリギリで躱した直後、ボスは瞬発力を持って死角である背中へ回ったかと思えば次の剣撃へと移行し、幾度となく鮮やかな剣線を描き斬り刻もうとする。


 速さにかけては全ボスモンスターでも随一と称されており、このアーマーパージ形態によりソロで挑んだプレイヤーを剣のサビにしたボーン・ロード。


 最早戦況は躱すのに必死だった振り出しへと戻っていた。


「フハハハッ! 余の速度と剣速を相乗させたこの剣線地獄に耐えられるか! 覚悟の無い貴様にこの剣技をくぐり抜けられるか! 否ッ! 所詮平和にうつつを抜かす貴様には、二度目の死すら厭わない覚悟を決めたこの余に挑もうなど言語道断だったのだ! このまま貴様を翻弄し……」


「いや勝手に決めんなし、ほら内側まで近づけたぞ」


 振り出しに戻るだのとそんなことは無く、全く緊張していないコウリンはボスの肋骨の一つに片手で掴んでいた。


「な!? 貴様なんぞに!? おのれええええっ!!!!」


 あまりの速さに成すがままだったはずなのに何故近づけたのかは単純、もう敵の攻撃パターンを見抜き、機転を効かせていたからだ。

 ボスは速度を自慢するかのように背後から攻撃を仕掛けてくるため、躱すと同時に後ろへ跳べば懐へと忍び込められる。


「ラストはカッコよく決めるか、連続キック」


 掴んでる部位を軸に前上がりし、鬱憤と渾身を込め一心不乱に蹴りまくる。

 ちり神同然の防御力となったボスに凌げられる術はなく、更に最後の一撃はダメージ三倍となるクリティカルが発生、HPが空になるほどの効果は有ったようだ。


「む、無念だァァァァァァァァァ!! どんな挑戦者も瞬く間に戦慄させた余が、こんなふざけた者なんかに……ッ!」


 蹴りを食らった部位から拡散するように全身の骨が崩れてゆき、負けた事実を認められない内に消滅した。


 ボーン・ロードは並々ならぬ覚悟があり、一切の油断もしなかった。しかし慢心してしまったのが最大の敗因だろう。

 反面コウリンは勝敗に固執しない性分だが、それが逆に敗色濃厚となっても揺さぶられない決断力を巧く引き出していたと言えよう。


 ちなみに、ボーン・ロードが内側にいるコウリンに剣を向けられなかったのは、かつて切腹した戦士の成れの果てという設定があるが、それを話す前に挑発を受け戦闘を始めてしまったため、やはりコウリンは偶然勝っただけかもしれない。


 そして戦闘終了のために右目の状態異常は完全に回復した。


「一件落着だな。覚悟ってのが結局よく分かんねぇまま終わっちまったが」


 事を終えたコウリンは伸びをしながら感傷に耽る。

 息つく暇もない程に厳しい戦闘は流石に堪えたようだ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 レベルが9→12に上がりました


 ユニーク称号≪覚悟を乗り越えし者≫を入手しました

 効果:残りHP1割以下の時AGI倍増

 条件:ボーン・ロード ソロ初攻略者限定


 スキル【ダブルパンチ】は【トリプルパンチ】に進化しました

 効果:(素手限定)三回連続で通常攻撃 消費MP25

 条件:拳闘士のレベルが10、且つステータスポイントをAGIに多く割り振っている


 アイテム【骨王の両手剣】を入手しました

 初回討伐ボーナスで更にアイテム【骨王の戦靴】を入手しました


 ワールドニュース!

 白骨の洞窟のボスモンスター、ボーン・ロードに拳闘士コウリンがソロで初攻略!(ワールドニュースの詳細は全プレイヤーに発信されます)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 見返りの大きいボスモンスターを倒したので、大量のシステムメッセージが報酬の内容を告げる。


 散々体を動かした反動がやってきたためコウリンは流し読みで納めたが、ワールドニュースと書かれたメッセージだけは絶対に読み飛ばしてはいけない代物であると察する体力は残されていなかった。


「すごくカロリーが燃やされる激戦だったけど、おかげで今夜はぐっすり寝れそうだな」


 コウリンは両腕を伸ばしてリラックスの姿勢をとる。ボスを討伐したまま部屋で10分経過すると強制的に外に追い出されるため、一旦休むのも疲れた体には有りだろう。


 すると、出入口が開き、一人が部屋に入ってくる。

 まさか敵のプレイヤーなのかと反射的に身構えたが、相手は一目見ただけで誰だかは判明した。


「ちょっとちょっとちょっとコウリン! ワールドニュースみてたけどボーン・ロードやっつけちゃったの!?」


「わっ! ネイロかよ、わざわざこんなとこまで脅かしやがって……」


 自分が落とし穴に引っかかってしまい分断されたっきりだったネイロであった。

何の覚悟のも伴っていない者へ覚悟を体現するための称号が渡るとは

こんなラストじゃホネホネ王も浮かばれないだろうよ

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