変貌と看破。
75回目の時間。
開幕からずっと順調そのものだ。
俺の打ち返しの半分は亡霊騎士に当たるようになってきた。
とても楽しい気分だ。
「ほら、撃ってこいよ」
俺の挑発に亡霊騎士がアーティファクト砲を放つ。
「怖くねえなぁ!!!」
俺の打ち返しは見事に亡霊騎士に当たる。
亡霊騎士はヨロヨロと揺れた後に膝をついた。
これで勝てたな。
後は村長の家に行った連中が無事に帰ってくるかだが、まあいい、ダメなら跳ぶ。コイツもアッチも全部俺が片付ける。
あの門だけはカムカにやってもらう必要があるけどな…
ふと考えが過る。
やれない事があるのは気分が悪いな。
亡霊騎士にしてもそうだ。
何が剣は通用しないだ。
切れなくても滅多打ちにすれば良い。
この先も切れ味が落ちて切れなくなった時にピーピーと泣くわけにもいかない。
そうだ、俺は一の村で待つ皆の為にも1人でやり切る必要がある。
「やめだ」
そう亡霊騎士に投げかける。
「俺は今から剣で戦ってやる。お前も肉弾戦に切り替えてこいよ。お人形さんよ」
「グオォォォォッ!」
震える声で雄叫びを上げる亡霊騎士。
そのまま急加速した身体で殴りかかってくる。
「丁度いい練習台だ…。滅多打ちにしてやる」
俺は狙いをつける事をやめて、その都度打ち込みやすい場所に全力で切り込むことにした。
ガギンッ!
「固いなぁオイ!」
30回程切り込んだ所で亡霊騎士がよろめいた。
「わかってきた!」
その後20回程切り込んで段々と思い通りの打ち込みが出来るようになった所で身体が重だるくなった。
「時間切れかよ。トキタマ!跳ぶぞ!」
「はいはーい!やっと僕の大好きなお父さんになってくれましたねー」
76回目の時間。
流石に開幕の亡霊騎士は活きがいい。
思い通りに切り込むのも大変だ。
だがわかった。
今までは剣を当てるまでが大事で当てた先は剣の切れ味に任せていた部分があった。
だが、それでは亡霊騎士には通用しなかった。
だから振り切る最後まで力を入れ続ける。
毒竜の時に身につけたのはどちらかと言うと鱗の裂き方だったのだろう。
大体10回くらい打ち込んだ所でようやく亡霊騎士が吹き飛んで地面に手をつく。
見えた。
剣でも吹き飛ばしてアーティファクト砲も打ち返した。
機能停止まで持ち込める。
ようやくここまできた。
ああ、胸がスッとする。
だが起き上がった亡霊騎士が思わぬ行動に出た。
俺を無視して全速力で山道を走っていってしまった。
「逃げるのか!!?」
追いつけない、初速から最高速の亡霊騎士にはとても追いつけない。
逃げる前に倒すしかない。
「トキタマ!」
「わかりましたー」
77回目の時間。
「今度は逃すかよ」
目の前には制御球がまだ緑色の亡霊騎士が佇んでいる。
もうすぐ制御球の色は赤に変わる。
そうしたら攻撃再開だ。
「ダメ!」
んぁ!?
突然聞こえた声に振り返るとそこにはフィルさん達が居た。
カムカが慌てて「バカ!目を逸らしたら!」と言っている。
「グオォォォォッ」
ああ、暴走するか…
「引っ込んでろ!!」
俺の一撃で亡霊騎士は吹き飛ぶ。
「嘘だろ?すげえ」
カムカがあんぐりしている。
俺はすぐにフィルさんの方を向き直す。
「フィルさん、何で?」
「キョロくん、跳んで!!」
「何で?俺、勝てるよ?」
「いいから!作戦会議よ!!早く!!!」
有無を言わさぬ厳しいまなざしでそう言われる。
致し方ない。
「トキタマ」
「はいー、勿体無いですねー」
78回目の時間。
「フィルさん、どうしたの?折角勝てるところまできたのに」
「キョロくんがおかしくなっているからよ!」
「俺?別に何も…」
そういった所で両肩に手を置かれて「俺?キョロくんはそんな呼び方しないでしょ?」と言われる。
俺?
ああ、俺って言っている。
そうか、戦っているうちに楽しくなってきたんだ。
「ありがとう。
ごめんね。フィルさん」
「ううん、元に戻ってくれたらそれでいいの」
「そうだな!これは良しとして、もう一回行こうぜ」
カムカが話をまとめてくれる。
「そっちはどうだったの?」
僕が3人に聞く。
「一応、制御球は2回確保したわ」
「その後ですぐに跳ばされてやり直しになったけどね」
マリーが不服そうにそう言う。
「俺なんか毎回門を破壊しているから、さっきなんか腕輪の力だけで破壊できちゃったんだぜ」
「ああ、それは70回目に跳んだ時の成長で、僕だけじゃなくて一緒に跳んだ人も経験を持てるようになったらしいから、それで強くなったんだと思うよ」
「…今日始まってから何回くらい跳んでいるの?」
フィルさんが心配そうに聞いてくる。
「10回くらいかな」
「そんなに?倒れちゃうよ」
「ありがとう。でも跳んだおかげで何とかなりそうだから」
「そういうことじゃないの」
そう言ってフィルさんは悲しげな顔をしてしまった。
「それにしてもあの亡霊騎士を圧倒していたよな」
カムカが驚いている。
「うん、アーティファクトをうまく使ったら、あのアーティファクト砲も打ち返せたんだよね」
「本当かよ!?かー、すげぇなお前」
「ボンボン打ち返して膝を付かせて、今度はガンガン打ち込んで吹き飛ばして、本当楽しそうだったわよね」
「え?」
マリーが突然口を挟んできた。
「ニコニコしながら暴れてて、楽しかったでしょう?」
「何でそんな事を知って…」
「どうしたの?」
怪訝そうな顔をしてフィルさんがこちらを見ている。
「こっちの話~、フィルお姉ちゃんは気にしないでコイツを見てればいいの」
「マリー…ちゃん……?」




