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サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
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涙の抱擁。

「キヨロスくん、今どうして私たちがこうして君と話せているかわかる?」

フィルさんは僕の前まで来て、僕の手を両手で握ってそう聞いてきた。


「お姉さん達と話していても今までは倒れてしまっていたでしょ?」

「最初はムラサキが俺に相談をしたんだよ」


「相談?」


「もし毒竜と戦って帰ってきた小僧が無我夢中で何があったのか説明できないって言ったら、それはあの鳥が悪さをしている証拠だから何とかしてあげたいってな」


「それで、ムラサキさんの指示で戦いやアーティファクトから遠ざけるために三の村で一日ゆっくりして貰ったの」

「お姉さんも何とかしたくてフィルたちに相談をしたくて泊まらせて貰ったんだよ」


「姉ちゃんの話と風呂でのことをムラサキに言ったら、あの鳥が起きていると小僧とちゃんと話が出来ないって教えてくれてよ」


「昨日の夜もあの後トキタマくんが起きていると、キヨロスくんに本当の事が伝えられないからどうしたらいいかを私達で話し合ったの」


そうだったのか、皆は僕の異変に気付いていて、僕の事を気にかけてくれていたのか…


「ごめんなさい。だから今日もジチと私だけで話せる温泉まで来たり、お爺ちゃんにキヨロスくんをお風呂で見て貰っている間にカムカさんにもキヨロスくんの事を話したりしたの」


「キヨロスとちゃんと話をするためには「時のタマゴ」には寝ていてもらう必要があったので、私がフィルとジチに頼んで「時のタマゴ」を寝かせるための野草とキノコを採ってもらいました。これは人間には勿論、私も平気な食べ物で、何故か「時のタマゴ」だけが合わせて食べると数時間程深く眠ってしまうのです」


そうか、それでトキタマが眠っているのか…

「だからキヨロスくんは、今こうしてお姉さん達とこんな話をしていても倒れたりしないだろ?」


「俺たちはよ、小僧に何も知らないままアーティファクトを乱用してもらいたくなかったんだよ。

その…あの…なんだ。小僧は大事な家族だからよ」

ガミガミ爺さんは耳まで赤くなりながらそう言ってくれた。


「ありがとう…皆。でも僕はどうしたらいいんだろう?」


「何がだい?」

「僕は今すぐにでも3日前に跳んで幼馴染の無事を確認したいし沢山跳んだことを謝りたいんだ」


「落ち着きなさいって。今跳んでも後で跳んでも一緒だよ。

ムラサキさんの言う跳ぶ距離が増えればキヨロスくんの魂は減ってしまうけどそれ以外は変わらない。

それにその子はどんなに大変だったとしても、きっと本気で謝るキヨロスくんを許すよ。

許してまた見送るんだよ?

折角会えてもまた離れるんだよ?

それで今日まで跳ばないで済むのかい?

また毒竜と戦うんだろ?

今日まで来る間に今までよりも回数は少ないけど何回も跳ぶよ?

だったら、このまま城まで行って最短で片付けた方がその子の為にもなるんだよ。

それに進み方を変えたら、お姉さんともフィルやドフ爺さんとも、カムカとも旅ができていないかもしれないんだよ。」

ジチさんが本気の顔で僕にそう言う。


「それでも!!」

そう言った僕は次の言葉が続けられなかった。


フィルさんが僕を抱きしめていた。

僕の頭を抱いて胸に押し付けている。

「そんなに自分を責めないで。そうやって追い込んで「どうしたらいい」なんて悲しい事ばかり言わないで。キヨロスくんが頑張っているのは皆知って居るから。まだ出会って数日の私たちも頑張っていることを知っている。

一の村に居るその子も、キヨロスくんのご両親もみんな知っているから。

誰もキヨロスくんを責めたりなんかしない。

だからもう少し自分自身に優しくなって」


不謹慎だが、フィルさんの匂いや柔らかさ、それに優しい声に心が安らいだのを感じた。

そして僕の頭が冷たい。雨が降ってきたのかと思ったが、そうではない。フィルさんが泣いてくれているんだ。


フィルさんの胸に顔を押し付けられていてとても話せる状況ではない。

僕はそのまま黙って話を聞くしかない。

今の僕は耳まで真っ赤だろう。

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