カムカ。
村の入り口に着いたとき、二の村の方角から「うおぉぉぉっ」と言う叫び声と共に何かが走ってきた。
走っている何かは僕達に気づくと「ちょっと待ったー!」と声をかけてきた。
ああ、放っておいて旅に出たい。
走ってきた何かは背の高い筋肉質の男だった。
「あなた達は村を放棄するつもりだな?
だがそんな必要は無い!
悪しき毒竜なんかはこの俺が筋肉の力で今すぐに退治してきてやる!」
…???
何だろう、この熱量は…
「あの…」
フィルさんが筋肉男に声をかける。
「ご安心を、美しいお嬢さん!何、毒竜なんて俺の筋肉でイチコロです!」
筋肉男は最後まで話を聞かない。
「いえ、毒竜は…」
「ええ、聞き及んでますよ!
毒竜はとても危険な魔物で三の村がもう大変な事になっているんですよね!
でも大丈夫!
俺と筋肉が全てをスピード解決!!」
フィルさんが泣きそうになって「え?」「違う」と言っている。
「黙れ小童!」
そう言うとガミガミ爺さんが筋肉男の頭を「混沌の槌」で叩いた。
「痛い!?何をするんですか?」
「話を聞け、話を!!毒竜はここに居る小僧が一昨日退治した。俺達は村を棄てるんじゃない。四の村まで行く所だ」
「え?そんな…こんな子供が毒竜を?」
「倒せたんだよ。小僧の鎧を見てみろ」
「紫色の鱗でできた鎧…紫色…紫…毒竜…」
筋肉男は僕の紫色の鎧を見て愕然としている。
「こんな子供が毒竜を…そんなぁ〜」
筋肉男は肩を落としてガッカリしている。
「故郷の二の村は10年ぶりに帰ってみれば壊滅しているし、情報欲しさに三の村を目指せば山で変な男達が現れるし、色々聞いたら襲いかかってきたから筋肉でねじ伏せる事になるし。
それでようやく聞き出したら二の村は兵隊に襲われていて、三の村は毒竜に滅ぼされそうって言うから三の村を助けようと思って来てみればこれかよ…」
「まあ、そう言う時もあるよ。気を落とさずに頑張りなよ!」
ジチさんが筋肉男を励ます。
「どうも…、ん?その赤い髪に整った顔立ち。あなたはボス!?俺がねじ伏せた男達からボスをよろしく頼むと言われました!」
「ああ、そうかい。
それはありがとうね。
でも、よろしく言われても毒竜もクマもイノシシも全部このキヨロスくんがよろしくしてくれたから平気だよ」
「またこの子供…、そうか君が男達の言っていた無血戦闘の悪魔…」
なんだその二つ名は…
「そう考えればこの結果にも納得がいく」
筋肉男は1人でブツブツとうるさい。
「じゃあ、そう言う事で。僕達先を急ぎますんで…」
「待ってくれ!」
そう筋肉男が言って僕達の前に立つ。
「今この国はどうなっているんだ?どうして二の村は滅ぼされなければならなかったんだ?知っている事は教えてくれ!」
確かに何も知らないのは辛いだろう。
だが、僕は時間が惜しい。
その気持ちを察したのか…
「今日は急がなきゃならねえんだ。
歩きながら話してやるから、それでいいならついて来な」
ガミガミ爺さんが筋肉男にそう言った。
筋肉男は「是非!」と言いながらついて来た…。
四の村に向けて街道を歩く。
ガミガミ爺さんの説明だと日暮れまでに四の村に着かない場合には三の村と四の村の間辺りで野宿をする必要が出てくるらしい。
幸い、間辺りには温泉も湧いているので野宿もそう悪いものではないと言う。
筋肉男の名前は「カムカ」。
25歳。
授かったアーティファクトがA級の「炎の腕輪」で、僕が持つ「火の指輪」の上位アーティファクトになる。
フィルさんの両親と同じ流行り病で早くに両親を亡くし、天涯孤独の身になった彼は成人の儀まで育ててくれた村への恩返しを決めて修行の旅に出かけた。
途中、師匠と呼ぶべき存在に出会いそのまま10年間程、二の村側の山からイーストへの国境近くの山をウロウロしながら修行に明け暮れていた。
そして10年になる今、師匠のお許しを得て下山。
村に帰ると村はまさかの壊滅状態。
情報に乏しそうな一の村ではなく三の村を目指した所、途中で10人組の怪しい連中を見つけたので二の村の事を聞いたがよくわからない事を言いながら襲いかかってきたので筋肉でねじ伏せて事情を詳しく聞くと、10人はアーティファクトを国から奪われて命からがら逃げ出してきたし、三の村は三の村で毒竜の毒霧で壊滅寸前。
とりあえず10人はボスが安住の地を求めて旅だったので帰りを待つと言うので放置。
壊滅寸前の三の村は筋肉で助けに行くしかないと言う事で来てみたが若造の僕に救われていて当面の目標を失ったと言う事だった。
ああ、10人から「もし三の村で髪の毛が赤い目鼻立ちの整った綺麗な女の人が居たらボスだから力になって欲しい」と言われたそうだ。
こちら側は僕の現状に始まり、ジチさんの現状、それにガミガミ爺さんとフィルさんの現状を話した。
カムカは「大体わかった。今の目的地は四の村で、ドフさんはそこに用事があって、フィルさんはその付き添い。
ボスさんは新天地探しの一環。
そしてキヨロスは何があるか分からないけど、一の村が人質に取られてるから行かなきゃなんないと」と言った。




