夕飯とお風呂。
夜ご飯は熊肉のミートパイとイノシシ肉を使った野菜スープだった。
毒竜のせいで貴重になっている野菜をわざわざ使ってくれていてありがたいやら申し訳ないやらだった。
お礼を言ったら、命の恩人なのだから気にしないで、それに熊肉もイノシシ肉も僕が獲ったものなのだからと逆にお礼を言われてしまった。
料理の味はジチさんの料理とはまた違った、そう…優しさを感じる。
食材の大きさや柔らかさに形、それに味のどれを取ってもフィルさんらしくて美味しい。
「どうかな?」
フィルさんが恐る恐る聞いてきた。
ガミガミ爺さんが「美味えよ」と言っていたが「お爺ちゃんは何でも褒めるだけでしょ」とフィルさんが言い返していた。
「うん、凄くフィルさんらしい味がして美味しいよ」
僕は率直な感想を伝えた。
「良かった!
でもジチに比べるとあんまりでしょ?」
パァっと明るくなった顔がすぐに不安げになる。
「そんな事ないよ。ジチさんの料理も美味しいけど、フィルさんの料理はフィルさんらしい料理で美味しいよ!」
「本当?良かった!」
フィルさんが喜んで「もっと食べて」「好きな食べ物は何?」と沢山話をした。
この旅でまさかこんなに穏やかな時間が流れるとは思わなかった。
そう言えばトキタマはムラサキさんと一緒の部屋が嫌だと言ってベッドのある部屋で過ごしている。
そのムラサキさんはむやみに会話には入ってこないので気にすることもないと思う。
食後のお茶を飲んでいるとガミガミ爺さんが「小僧、風呂行こうぜ」と誘ってきた。
「フィルさんの洗い物を手伝ってからはダメかな?」
「小僧、あんまり女の仕事を奪うもんじゃねえ」
何だろうその理屈?
「わかんねえか?3人分の皿を洗った時に嬉しくなるって事よ、死んだ俺の嫁さんだってな、俺と結婚した時は随分と皿を洗っては喜んでいたもんよ」
そうなのかな?
「フィルさん、ガミガミ爺さんはそう言っているけど大丈夫?」
「うん。大丈夫だから行ってきて。私も洗い物が終わったらお風呂に入りに行くから」
フィルさんの顔が赤い。
ガミガミ爺さんのガミガミ理論はあながち間違いではないのかも知れない。
ただ、明日の朝には僕は三の村を発つのだけどこれで大丈夫なのかな?引き止められそうな気がしてきた。
しかし一番は一の村なので僕は引き止められても明日の朝は絶対に四の村を目指す。
風呂に着くとおじさんが帰るところだった。
「爺さん、今日の風呂は気持ちいいな」
「そりゃあ毒竜のツノ入りのお湯だから、今までの疲れた身体にはよく効くぜ
だからみんなに今日の風呂はきちんと入るように言ってくれよな。
お湯が足りなくなったらツノの粉はまだあるから足せるから言ってくれよ」
おじさんとガミガミ爺さんの話が終わるまで僕は待つ。
話が終わるとおじさんは僕の方を見た。
「坊主、風呂出たら直接うちに来るかい?」
「うーん…」
トキタマを連れてきてないからフィルさんの所に戻る事も考えなきゃ行けないのだけど、あまり遅くなるとおじさんに失礼だ。
そんな事を考えているとガミガミ爺さんが睨んできた。
「荷物がガミガミ爺さんの家にあるから一度取りに行きます」
「そうかい、わかった。母ちゃんにはそう伝えておくよ」
「今晩はよろしくお願いします」
「あいよー」
そう言うとおじさんは帰って行った。
ガミガミ爺さんはニコニコと僕を見ている。
ガミガミ爺さんも可愛いところがある。
寂しいのかもしれないな。
風呂に入ってしばらくすると急に外がうるさくなった。
女性のお湯の方から声が聞こえる。
「あー!フィルが居る!」
あの声はジチさんだ。
フィルさんも片付けを終わらせてお風呂に来ていたらしい。
ジチさんはフィルさんの元に駆け寄ったのだろう、ジャブジャブとお湯の音が聞こえてきた。
そして楽しげに裸の付き合いだ、フィルさんの肌が綺麗だと騒ぎ出した。
姿は見えないがフィルさんは困っているだろう。
「うるせえぞ姉ちゃん!」
ガミガミ爺さんが堪らず怒鳴る。
「あれー?ドフ爺さんも来てるのー?」
懲りずに大声でこちらに話しかけてくる。
「と、言うことはー?キヨロスくんも居るのかなー?」
バレた…




