いざ毒竜の所へ。
「まだですよ」
「え?」
「ガミガミ爺さん、僕のお願い聞いてください」
「なんだよ小僧?今はせっかくフィルが治ったって時なのによ?」
もう、ガミガミ爺さんと呼んでもガミガミ爺さんは怒らなくなっていた。
「だからですよ。トンカチと杭とロープ、あとツルハシを今すぐに出してください。後はもう一度この剣のメンテナンスを頼みます」
「おめえ…、まさか…」
「ええ、そのまさかです。1回目と違って耐性付与は済んでいるのですから、剣の斬れ味さえ元に戻れば十分です。
万一の為に僕もかけらを持っていきますけどね」
「いや、明日になってからでも…」
「それだと朝の毒霧を、またフィルさんが吸う事になる。
その前に僕が終わらせてきます。
なので剣のメンテナンスをお願いします」
ガミガミ爺さんは僕の決心を前に理解をしてくれたようで「わかった」と言うと剣を持って部屋を出て行った。
恐らくメンテナンスの音でフィルさんを起こしたく無いのだろう。
「今から行くのですね?」
ムラサキさんか話しかけてきた。
「キヨロス、あなたは何回目なのですか?」
もう、数はあまり数えていない。無我夢中で跳んだ回数もわからない。
トキタマに聞いてみよう。
「トキタマ、今は何回目の時間?」
「67回目です」
「67回目…そんなに?その若さで?「時のタマゴ」よ、何故そんな事を…」
ムラサキさんがトキタマを睨んでいる。
「黙れババァ。お父さんはみんなの為に跳んでいるんです!余計な事は言うな!」
トキタマが口汚くムラサキさんに文句を言う。
「キヨロス、跳ぶ事はいいのです。ですが、「時のタマゴ」の容姿には騙されないでください。跳ぶ時は自分の意志で跳んでくださいね。」
「はい」
「本当はあなたがどうして今こうしているのかを聞きたいのですが…行くのですね。」
そうか、前回はこの後で経緯を説明したのか。
そうなるとフィルさんもムラサキさんも僕の事を詳しくは知らないのか…
「今のガミガミ爺さんは前の時間から連れてきているから僕の事を知っています。聞きたいことがあればガミガミ爺さんに聞いてください」
「うぅ~ん」
フィルさんが目を覚ました。
「フィルさん!」
「キヨロスくん…私…身体が辛くないわ。」
フィルさんは薬が効いたのか楽そうに起き上がる。
「良かった!!」
「凄い…夢みたい。本当にありがとう」
フィルさんが笑顔で泣きながら感謝を伝えてくれている。
「ううん、まだですよ」
「え?」
僕がそう言うと、フィルさんが驚きながら僕を見る。
「今から、明日をちょっとだけ良くしに行ってきますね」
「明日?それって…」
「いいから、フィルさんは僕の持ってきたお弁当を食べてゆっくり休んでくださいね」
僕はフィルさんを布団に寝かしつけて、横にお弁当を置いておく。今触れたフィルさんは前より温かい気がした。気のせいでなければ体内の毒は消えて元気を取り戻しはじめているんだ。
僕は嬉しくなった。
「小僧、準備出来たぜ」
丁度ガミガミ爺さんが剣と道具を持って戻ってきてくれた。
「ガミガミ爺さん、フィルさん起きましたよ」
「本当か!!?」
「お爺ちゃん。私、助かったみたい」
「フィルー!!良かったなぁ」
またガミガミ爺さんは泣いている。
「うん、良かった」
僕は心からそう思った。
「ガミガミ爺さん、フィルさん、ムラサキさん。僕、今から行ってきます」
「さっきからキヨロスくんの言っている行く場所って…」
「小僧は今から毒竜を退治しに行ってくるんだよ」
「そんな、危ないわ!1人でなんて!!」
「フィル、キヨロスは一度1人で毒竜を倒しているのですよ。それだから今あなたは角のかけらを飲むことが出来たのです」
ムラサキさんがフィルさんに説明をしてくれている。
「フィルさん、もう明日の朝に毒霧を浄化しないでいいようにしてきますね。
じゃあ、ちょっと行ってきます!あ、ムラサキさんが今までの話を聞きたいって言っているので、ガミガミ爺さんから簡単に説明しておいてください!!」
そう言って僕は見送りもいらないからと山小屋を飛び出した。




