表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
62/307

跳んで全てをやり直す。

「フィルさん、少しだけ待っていて」

僕はフィルさんにそう言うとガミガミ爺さんの手を引っ張った。


「小僧!?」

「ガミガミ爺さん!ムラサキさんを持って!今すぐ着いてきて!!」


僕は駆け出した。


「小僧!おい待てよ!!」

ガミガミ爺さんがムラサキさんを連れながら怒鳴り散らしている。


「いいから早くしてください!」

僕は途中からガミガミ爺さんを後ろから押していた。


例の場所に着いた。

目の前には毒竜の死骸がある。


「小僧、こんな所に連れてきて何を考えている?」


「ガミガミ爺さん、ムラサキさん!毒竜が何処で毒を作るか教えてください。僕は何度も毒竜の血を浴びたけど毒にはならなかったんです。きっと何処かに毒を作る場所があると思うんです!」


「そういうことですか。キヨロス…わかりました」

ムラサキさんは僕の考えをわかってくれたようだ。


「ドフ、私を持って毒竜の身体の隅々まで見せてください」


「お…おぅ」


ムラサキさんはガミガミ爺さんに「もっと左を、今度はそこを…」と指示している。


「それにしても随分と斬りつけてやがるな…」


ガミガミ爺さんが引き気味に話している。

確かに、僕も死骸を見て不思議だった。


まるで剣の練習台に使ったみたいだ。

無我夢中になって我を忘れた僕はどんな戦い方をしたのだろう?


「小僧!」

ガミガミ爺さんが僕を呼びつける。


「あったぞ、ムラサキよ…これだな?」

「はい、そこから毒の気を強く感じます。毒竜はそこで毒を作って吐き出しているはずです」


その場所は左翼の付け根の少し上側にあった。

深さは杭を刺した深さくらいの所だった。


僕は念入りに毒の器官を確かめる。

ガミガミ爺さんとムラサキさんに離れるように声をかけてから剣で切ったり刺したりしてみた。


死骸だからか元々の硬さなのか。問題なく刃は通った。

中から紫色の汁が出てきた。

毒の器官で間違いないだろう。


僕の肩にいたトキタマが「お父さん、跳べるよー!」と声をかけてきた。

そうだトキタマが完全に結末を変えられるとわかった時には跳べると声をかけてくれると言っていた。


「ああ、僕は跳ぶ」

僕はガミガミ爺さんとムラサキさんに目を向ける。


「キヨロス、よろしくお願いします」

「小僧?どうしたんだよ?ムラサキも…」

ガミガミ爺さんは、まだわかっていないが説明は後回しだ、どうせすぐにわかる。


「トキタマ!【アーティファクト】!」

「はーいー跳ぶよー!!」



[4日目]

67回目の時間。

僕が跳んだ時間、それは前の夜。

ガミガミ爺さんに剣を見せた時にした。


「小僧…?お前…。ここは?…フィル!!」


ガミガミ爺さんはフィルさんの顔を見て大泣きしている。

僕は今回、ガミガミ爺さんの記憶と毒竜の角を持って跳んだ。

勿論、リーンの記憶も持っている。

リーンには申し訳ないが、今回は我慢してもらおう。


「キヨロス…。あなたは?」

ムラサキさんが異変に気付いて話しかけてきた。


「ムラサキさん、僕はあなたの記憶は持って跳べるかわからなかったから持ってきませんでした。大丈夫です。全て僕がうまく行かせます!」


「……。

そうですか、ありがとう」


状況が理解できないのはフィルさんも同じだ、目を丸くしている。


「フィル、フィルー!!」

ガミガミ爺さんが抱きついて大泣きしている。


「ちょっとお爺ちゃん!?

どうしたの?

何?恥ずかしいよ」


死んでしまった孫娘が生きている時間に戻れたのだ、泣いて喜ぶだろう。


「おっと…。へへっ、すまねえな…フィル」

ガミガミ爺さんは耳まで赤くして照れている。

まだ涙が止まっていない。


「小僧」


「はい」

僕は懐から毒竜の角を3本取り出してフィルさんとムラサキさんに見せた。


「それは…、毒竜の角?」

「そうだよフィルさん!僕が明日から持ってきたんだ。さあ!これを飲んで!」


「本当…なの?」

フィルさんが目に涙を浮かべている。

多分、この時から死を予感していたのだろう。

ガミガミ爺さんの手前、気丈には振舞っていたのだが、やはり誰だって死ぬのは嫌だ。

だが、それもこの角があれば回避が可能だ。

その事がフィルさんに涙を浮かべさせた。


あ…しまった。

トンカチを置いてきてしまった。


「ガミガミ爺さん、トンカチを貸してください」


「お…おぅ。待ってろ!」

すぐに戻ってきたガミガミ爺さんが竜のツノを砕く。


「どれくらい飲めば効きますかね?」

僕はガミガミ爺さんに聞く。


「俺も知らねえなぁ、3本あるんだからこの1番大きいのを1本くらい飲んでもいいんじゃねえのか?」


「え?ちょっと…」

フィルさんが大ぶりの角を見て困っている。


「お前はずっと長いこと毒にやられていたからな、沢山飲んで治さないとな!」

ガミガミ爺さんは止まりそうもない。


「え?え?」

フィルさんが困っている。


「葡萄の粒一粒くらいで十分効果が出ます。フィルの身体なら今と明日の朝と夜の三回も飲めば殆ど回復しますよ」


「そうなのか?」

ガミガミ爺さんがキョトンとしている。


「ほら、お爺ちゃん。ムラサキさんが言うなら間違いないわよ。お水取ってきて」


「ほいきた!」

ガミガミ爺さんはすぐさま水を汲んでくる。


フィルさんはちょっと心配そうに角のかけらを手に取ると口に入れてゴクンと飲み込んでから水を一杯飲んだ。


「どうだ!?治ったか!!!」

ガミガミ爺さんは心配で堪らないらしくすぐさまフィルさんに聞いている。


「そんなに…すぐに…は効かない…よ…。あれ?」

そう言うとフィルさんはパタリと眠ってしまった。


「フィルーーーッ!?」


「ドフ、フィルは寝ただけですよ。眠って身体は毒の排除に全力を尽くすのです。10分もすれば目が覚めますよ。」


ムラサキさんの声に大きく息を吐いてホッとするガミガミ爺さん。


「良かった〜…。小僧…本当にありがとうな」


ガミガミ爺さんは目に涙を浮かべて感謝をしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ