トキタマの本性。
62回目の時間。
僕は意識した通りのタイミングに跳べていた。
左の翼に向かって斬り込んだ瞬間だ、剣は骨で止まっている今が1番いい。
変わらず毒竜は走っている。
着地のイメージは足場の悪さを意識していたので問題ない。
それにしても段々と腹立たしくなってきた。
ビタンビタンと何かと言うと毎回尻尾だ。
邪魔だな…
毒を吐く口も飛ぶ翼も今や何とかなった。
尻尾だけがとにかく邪魔だ…
毒竜が走るのをやめた。
くるぞ…尻尾がくる。
あえて薙ぎ払いやすいであろう位置に動き、薙ぎ払いを誘う。
毒竜はさっきと違い、振り上げた尻尾で薙ぎ払ってきた。
「【アーティファクト】!」
タイミングを合わせて斬り込む!
ビタン!
剣で止めきれずに跳ね飛ばされた。
しかも腹のロープがピンと張って毒竜の身体に叩きつけられた。
「ガハッ!?」
目の前が赤い。
血が出たのか、毒竜の血かはわからない。
マズい。
それよりも腹立たしい。
トキタマ!!
「はいー!」
63回目の時間。
今度は薙ぎ払いがくる少し前、薙ぎ払いを誘った辺りにした。
次こそ打ち落としてやる。
「【アーティファクト】!」
タイミングを合わせて再び斬り込む!
さっきの時間では毒竜の攻撃力を考慮していなかったから止めきれなかったのだ。
足に力を入れて踏み込みを強くし、手首に力を入れて剣筋を真っ直ぐにした。
ガッ!!
止めた!!!
剣で尻尾を止める事が出来た。
剣は尻尾の8割の所で止まっている。
すなわち骨も切れたと言う事になる。
やはり剣の強度や切れ味が足りないのではない。
僕の技術や力不足が問題だったんだ。
力不足は毒竜の攻撃力を利用すればいい。
もう少しで尻尾を斬り落とせる。
もう一度力を込めて振り抜く!!
しかし、その瞬間視界が紫色に染まる。
しまった毒だ!?
だが、一度なら「火の指輪」に付与した耐性効果で防げ…
「ぐっ…!?」
毒霧に紛れて接近していた毒竜が僕に噛みついている。
しまった。
僕の身体がバキバキと音を立てながら食いちぎられそうになっている。
トキタマ…
「はーい!!」
僕は跳んだ。
まさか、噛みつかれるとは思いもよらなかった。
今度は足止めされないように尻尾の先を切り落とそう。
そう思いながら着地をイメージする。
いつもならもうすぐ着地だ…
「キョロ…」
リーンの声が聞こえた気がした。
リーン、あの夜の素敵だった彼女の顔、声、服、そして香水の匂いが思い出された。
そうだ、こんなに連続で跳んでリーンは無事だろうか?
僕は何をしていたんだ?
毒竜への怒りで我を忘れていたのか?
今、リーンの顔を思い出さなかったら勝つまで何回も跳んでしまったのではないか?
「トキタマ!」
「どうしましたか?もう着地ですよ」
「リーンが心配だ、作戦を変える。もうなるべく跳ばないで戦うんだ」
「ふぅ、…やれやれですよ」
「何?」
トキタマの様子が変だ。
あの邪悪な感じのする顔をしたトキタマが目の前で明らかに僕に呆れている。
「あのお姉さんなら、次から毒竜を倒すまでは一緒に跳ばしませんから安心してください。」
「何を勝手な事を言っている!ふざけるな!!」
「あー、もうお父さんもダメダメです。今の事も忘れて毒竜を倒しちゃってください。全部終わったら呼び起こしてあげますからねー」
「何を言ってい…る…?」
僕は激しい頭痛に襲われた。
脈打つ頭痛の中から声が聞こえる。
全てを使いつぶして目の前の敵を倒す。
全てを使いつぶして目の前の敵を倒す。
全てを使いつぶして目の前の敵を倒す。
全てを使いつぶして目の前の敵を倒す。
全てを使いつぶして目の前の敵を倒す。
敵を倒せ。
その為に跳べ!!
「倒す!!」




