紫水晶の盾・ムラサキさん。
「それにしても随分と使い込んでいるな?斬った数は100を超えるか?」
そう言いながらガミガミ爺さんがステーキを頬張る。
剣を見ただけでわかるのだろうか?
フィルさんは起きてベッドの上でゆっくりと少しずつ食べている。
1か月近く毒竜の毒を処理しているのだ、疲れているのかも知れない。
「小僧…お前何者だ?
だがそれ以前にだがな…」
ガミガミ爺さんがものすごい目で僕を睨む。
「お前は剣の手入れも知らんのか!このバカタレが!!」
「え?…アーティファクトって使えば斬れ味が元に戻るんじゃ…」
「バカか!そんなもんはその能力を持ったアーティファクトだけで、それ以外は刃こぼれも摩耗も直らんわ!能力を使った瞬間だけ斬れ味は良くなるがそれ以外の時は斬れなくなっていく。
何でそんな基本的な事も知らんのだ!?
アーティファクトへの愛はないのか!?」
僕が言い切る前にガミガミ爺さんは怒鳴ってくる。
「お父さんはちゃんと愛があります!」
今まで黙っていたトキタマがガミガミ爺さんの前に出てきて怒っている。
「鳥?こりゃあ…アーティファクトか?」
ガミガミ爺さんがマジマジとトキタマを見ている。
「はい、これが僕の授かったアーティファクトです」
「「時のタマゴ」…」
初めて聞く声が部屋の隅から聞こえてきた。
3人目が居たのか?
お弁当は2人分しか持って来なかった。
それにしても人の気配はしないのだが…
声の方を見ても誰もいない。
僕の空耳か?それにしてはハッキリと聞こえたのだが…
「げぇ、ババア…」
トキタマが声の方を向いて嫌そうな声でそう呟いた。
ババア?
僕には何も見えない。
置いてあるのは槍に盾に鎧、恐らくフィルさんの装備だろう。
槍は一般的な物だが、盾は珍しい綺麗な紫色をしている。
鎧は盾に近い紫色だが鉄の感じがする。
紫色はフィルさんの透き通った白い肌と金色の長い髪によく似合うと思った。
そんなことを思っていると…
「ババア?性悪タマゴが何を言いますか」
今度はハッキリと聞こえた。
よく見ると紫色の盾に顔が浮かび上がり、その口が声を発している。
「はじめましてキヨロス。私はフィルのアーティファクト「紫水晶の盾」。フィルは私のことをムラサキさんと呼んでいます。どうぞよろしく」
トキタマ以外の初めて見るコミュニケーションの取れるアーティファクト。
トキタマはすごく嫌そうに「ババアは嫌だ」と言いながら辺りを飛んでいる。
随分とトキタマとは仲が悪そうだ。
「はじめまして。トキタマとはお知り合いですか?」
「ええ、知り合いと言えば知り合いです。今後ともお付き合いが続けばその話は追々お話ししますね」
ムラサキさんは物腰の柔らかいお姉さんといった感じだ。
「ムラサキ、お前さんが出てきて話すと言うことは、この小僧はお前の言う「見られてもいい者」なのか?」
「はい、ドフ。この少年はきっと私達を救ってくれます」
「本当か!良かった!フィル!聞いたか?本当に良かったな!!」
「本当、お爺ちゃん。良かった」
ガミガミ爺さんがガミガミ爺さんとは思えない勢いで喜んでいる。
「キヨロス。この人達は信用が出来る人です。今あなたの身に起きている事の全てをお話しなさい」
僕はムラサキさんの言う通り、今までの経緯を話しはじめた。
ムラサキさんの手前嘘をついてもバレると思ったので死ねない呪いについても話をした。
「小僧、お前中々に大変なんだな…」
ガミガミ爺さんは僕を同情してガミガミ爺さんなりに優しい言葉をかけてくれている。
「本当、まだ15歳なのに…」
フィルさんが悲しそうな瞳で僕を見ている。その顔も美人だ。
フィルさんは小食なのか、あまり食が進んでいない。
「とりあえずこの剣がお前さんの正式なアーティファクトではない事がわかったし、切った人数が子供にしては多い理由もわかった」
「わかってもらえて良かったです。それでは僕は今から毒竜の所に行ってきますので剣を返してください」
説明も済んだのでこれでようやく討伐に向かえる。
僕はそう思っていたのだが…
「ダメだ。小僧…お前さっきの話通りなら昨日の夜以来キチンと休んでいないだろう?一度キチンと寝て頭をスッキリさせてから毒竜の所に行け」
「でも、僕には時間が…」
今日、1日を使ってしまったので後9日しかない。
歩くだけなら城までは約2日。
四の村でも問題があって解決する事を求められる事を考えると、時間はいくらあっても足りない。
そんな僕の焦りを吹き飛ばすように
「いいから寝ろ、その間に俺がお前の剣を直しておいてやる。万全の状態で毒竜の所に行ってこい」
そう言うとガミガミ爺さんが金槌を取り出した。
「これが俺のアーティファクト「混沌の槌」よ。これで直せば朝までには直るから安心しておけ」
直してくれると言うのならば従うしかない。
そう言われた僕はガミガミ爺さんの言う通り「そこ使え」と言われたベッドで寝ることにした。
結局、フィルさんはお弁当を残していた。
相当疲れがたまっているのだと思う。




