提案、そして加入。
「1つ、いいですか?」
「なんだい?」
「もし仮に僕と会う前にやり直せたらあなたはどうしますか?」
「そんな事…」
「いいから答えてください」
「君に戦いを仕向ける事はしたくないな」
「仲間を説得する事は出来ますか?」
「君を襲わないようにかい?」
「ええ、それとこの人を解放する事です」
「彼女の事は…う…ん…、うん。なるべく努力するようにする」
「そもそもさらった理由はなんですか?お金ですか?」
「……俺たちは料理が苦手だから料理の上手い人が必要だっただけなんだ」
なんか変な歯切れの悪い言い方だ。
「そうですか、それで僕への攻撃は辞められますか?」
「戻れるのならやってみる。確実に半分の5人は止められると思う。
後の5人は…正直自信はない」
5人か…まあいいかな?
残酷な殺し方をしたから歯向かう気は無いと思う。
「わかりました。それでは僕がここにくる少し前に戻ります。
僕が来るまでの間に貴方は仲間達に僕の特徴を伝えて手出しを止めるように説得をしてください。ダメだった時は前以上に残酷な方法で殺します」
「そんな、夢みたいなこと…」
「いいからやってください。必ずですよ。そして出来たら安全な村を見つけてやり直してください。一応伝えますが、一の村は今国から狙われています」
僕の剣幕に押された槍の男はただ頷いた。
「兵隊が向かったのはやはり一の村か…二度向かったという事は…君が一度目を退けた?」
「今回は村全体が人質ですけどね。約束を守ってくれればそれで良いです。行きますよ」
「トキタマ!」
「はいー」
58回目の時間。
僕はまたサンドウィッチを手に持っている所に跳んできた。
リーンなら「またここ?」と言うだろうな。
今回は槍の男が説得する時間も考えて食事をしてから行く事にする。
多分説得は成功するだろう。
残り9人の心には僕に殺された瞬間が跳んできているので僕の特徴を聞けば手出ししようなんて奴は出てこないと思う。
やはり母さんのご飯は美味い。
今回は美味しく食べられた。
街道を進む。
あと少しで襲撃された場所と言うところまで来た。
「お父さんは優しいですねー」
トキタマが話しかけてきた。
「別に殺したままでも良かったのに、跳んで助けてあげちゃうんですから。僕はお父さんが僕をただ使ってくれたから嬉しいですけどー」
「別にあの人達の為に跳んだんではないよ。時間が限られている以上、戦わないで済むなら戦わないよ。
それに今は経験が身体にも残るんだろ?
跳んだ方が有益なんだよ」
「はー、そうですか。何にせよ僕はお父さんが跳んでくれて嬉しいです」
さて、襲撃ポイントだ。
街道の真ん中に槍の男とお姉さんが居た。
僕に気づくと槍の男は手を振ってきた。
「君は凄いな。どう言う力なのかわからないけれど確かに全員が生きている」
「説得は成功したみたいですね」
「ああ、無事にね。
皆、君のことは覚えてなかったけれど、君の特徴とこれから起きる事を話したら真っ青になって辞めようと言ってくれたよ」
「それは良かった。ところで何でお姉さんがここに?」
「君が解放するように言っただろう。
それに…この人、ボスが君に会いたいと言っていて…」
「ボスですか?」
「初めまして、って貴方からしたら2回目なのかしら?不思議な力ね」
やはりこの人は仲間だったのか。
それもボスだと言う。
「王都から逃げ出す時に皆を扇動したからボスって言われているだけで、別に何の力も無いのよ。
あるとしたら…この人達は料理が下手だからご飯を作るくらいかしらね」
「それで僕に何のご用ですか?」
「あら、警戒しないで。まずは…お礼を言いたくてね」
「お礼ですか?」
「そう、残りの9人を殺したままにする事も出来たのにわざわざ生き返らせてくれるなんて、貴方いい人ね」
「そう言うんじゃ無いですよ。僕には事情があって、早く移動しなければならないんです。戦闘をしないで済むのなら移動も早くなりますから」
「あらそうなの、それでもありがとう。あの人達、元は悪さをしたり顔も怖いしキレやすいんだけど、付き合うと気はいい人達なのよ。死なれるのは悲しいわ」
「お話がこれで終わりなら僕は先に進みたいのですが?」
「ごめんなさい、急いでいるのよね?もう一つ話があって…」
あまり良い話の気がしない。
「私も連れて行ってくれないかしら?貴方この人に私を解放するように言ってくれたんでしょ?」
…やはり良くない話だった。
「それはお姉さんが拐われたと言っていたからで、仲間だったら、むしろボスならその必要は無いじゃないですか?」
「そんなこと言わないで〜、別に仲間にしてって話じゃないの。貴方この人に「出来たら安全な村を見つけてやり直してください。」って言ったんでしょ?
だから私が安全な村を見つけてこようと思うのよ。でもひとり旅って危ないじゃない?だからね。貴方強いし…助けてほしいなって…」
「お断りします!」
「うん…そうよね。やっぱり貴方は優し…い!?えぇぇっ!?
何で?
こんなに綺麗なお姉さんが一緒に行くって言っているのよ?」
「知りませんよ。と言うか一緒に行く前提で話を進めないでください」
「何で?どうして!?」
「僕は急がなければならないからです」
「それなら任せて!お姉さん、こう見えて健脚だから!歩きには自信あるのよ!」
「それでも…」
「わかったわ!じゃあこうしましょう!貴方は気にせずに歩く、私はついて行く!私が追い付けなくなったら貴方は私を見捨てて先に行く!これでどう!?」
それなら邪魔にはならないが、僕はこのお姉さんに情が湧いてしまって見棄てられないかも知れない。
そうすると自分の事がブレる。
しかしここでの問答も時間の無駄になる。
「わかりました。では一つ条件を付けさせてください。僕が本気でここまでと言って断った時には着いてくることは諦めてください」
「うんうん、それでいい!じゃあ今すぐに行きましょう!」
そう言ってお姉さんは槍の男の方を向く
「私はこの子について行く!後のことは任せたよ!10日して私が戻らなかった時は話しておいた通り、10人で新天地を探すんだよ。それまでは無闇矢鱈に通行人を襲うんじゃないよ。
私はあんた達と暮らせる場所を見つけたらすぐに戻ってくるからね!」
「ボス!留守はお任せください!」
なんだ、やはりボスなんじゃないか。
「さあ!行こうか!!」




