仕返し。
「お前、何者だ!」
女の首にナイフを当てている男がそう言っている。
男は青年ではなくて中年だと思う。父さんよりは若い気がする。
もう1人の槍投げの男は青年と言った感じだ。
首にナイフを当てられて震えている女は20代だと思うが、よくわからない。
「た…助けて」と女が泣いている。
「その人は人質ですか?」
僕が聞くと男たちは「そうだ!この女の命が惜しければ武器と食い物を置いてさっさと居なく成れ!」と言っている。
「先ほどまで燻されていた人たちと同じとは思えない反応ですね」
僕の言い方が怖かったのか、男たちが引きつっている。
「あなた達は何者ですが?」
僕が逆に問う。
「…」
「答えなければ殺します。僕は別にそのお姉さんがどうなろうと知りません」
これは本心だ。
「ひっ!」
お姉さんが泣きそうな声を出している。
言い方は悪いが、なんで今さっき会った人間に助けてもらえると信じているのだろう?
「別に僕は脅しではなくて事実を述べています。あなた達こそもう仲間は居ないんですよ?仲間のようになりたいですか?」
「ゆ…許してくれ」
槍の人がそう言って謝ってきた。
「ナイフの人、ああ、あなたは弓の人ですよね?あなたはどうですか?」
諦めたように「わかった」と言ってお姉さんの手を離し、喉に突き付けたナイフを閉まった。
「た…助かった」
お姉さんが安堵の表情を浮かべているが急に地面に座ってしまった。
「腰が抜けちゃったよ。ちょっと助けてよ…」
まあ、怖い経験であったのだろう。
僕は手を貸すことにした。
お姉さんの為にしゃがんで手を出した時、視界の端に弓使いがナイフを出して襲い掛かってくるのが見えた。
…まだ不意を打てば勝てると思っていることが僕を苛つかせた。
「【アーティファクト】!」
顔面ファイヤーの刑に処すことにした。
10秒で火を消す。
相手の男は助かったという感じで荒々しく息をしている。
20秒経った。
「【アーティファクト】!」
再度顔面に火を放つ。
そして10秒後には消してまた火を放った。
「すまない、やめてくれ!やめてください!!」
槍の男が懇願してくる。
「別に変な気を起こさなければ良いだけです」
「は、はい」
「貴方には聞きたいことがあります。それに答えてください」
「わ…わかりました」
「ちょっと、この人死んだわよ…」
お姉さんが僕に話しかけてくる。
「そうですね。それも致し方ないと思います。
これは命の奪い合いです。
僕は撃退しなかったら殺されていますから。
酷いとかそういう話は無しですよ」
そう言うとお姉さんは黙った。
「あ、事情は後で聞きますが、お姉さんは人質と言う事でいいですよね?
「え…えぇ」
「万一この人たちの仲間で僕にだまし討ちでもしようものなら、どうなるかわかりますよね?」
「わ…わかっているわよ」
「そうですか、それは良かった」と言い槍の男をもう一度見る。
身近な所で仲間が無残に殺されたのが余程辛かったのか、放心してしまっている。
僕は再度槍の男に質問をする。
「何処の生まれか」「何故ここにいるのか」「アーティファクトはどうしてないのか」を聞いた。
産まれは昔の名前で言えば六の村で、ほかの男たちの出身地に関しては何も知らないと言う事であった、男どもの共通点としてはある日兵隊に捕まってアーティファクトを奪われて命まで取られる前に何とか逃げ出したと言う事、行き場がなく二の村を目指そうと思ったが兵隊たちがやってきて村を滅ぼしてしまったのでこの洞窟に住みついたらしい。
「なぜ、二の村に?」
「四の村は城に近いので捕まる恐れもあったのでやめました。三の村…あの村はもう終わっている」
「終わっている?兵隊に滅ぼされたのですか?」
「違う、毒霧だ…」
「毒霧?」
「そうだ、三の村の南に毒竜が住み着いてから奴は日に何回か毒をまき散らす。それで兵隊も三の村には手が出せずに二の村に行ったんだと思う」
そんな事が…
「兄さん、あんた毒竜がどうして毒を振りまくかわかるかい?」
僕は知らないと答えた。
「竜は子供を育てるのに必要な環境作りから始めるんだ。火竜なら活火山を目指したりするが、活火山がない時は森に住み着いて森を焼いたりするんだ。毒竜もそうだ、外敵から子供を守るために辺りを毒まみれにするんだ」
「それが三の村の南に住み着いた?」
「そうだ。だからあの村はもう終わりだ。何でか毒の回りが遅いから村人は辛うじて生き残っているがな、いずれ村ごと毒竜の巣になる。それで俺たちは三の村を諦めてここに居たんだ」
聞きたい話は聞けた。
それにしても三の村にはそんなトラブルが起きていたのか、フードの男は「お前は弱い」とか言って行くように言っていたが厄介ごとを押し付けてきているのではないか?
そもそも国の仕事だろう。
ふと気付くと殺された事への苛立ちが消えていくのがわかる。
「あの、あなた達はこれからどうしますか?」
不思議と口調が落ち着いてきた。
そう言えば今までも何回も跳んだ時や解決しない時は酷く苛ついていた。
口調の変わった僕を見て槍の男が怪訝そうな顔をしている。
「みんなを弔う。その後は山に篭って生きて行くかな。いつかイーストやウエストに行けるようになったら行ってみたいな。今よりはマシだろうしな」
「私はどうしようかしら」
「攫われたのなら帰れば良いのではないですか?」
「私も王都でアーティファクトを取り上げられたクチだから、今更王都には帰られないのよね」
「そうですか、あなたの事は僕には決められません」
僕はもう一度槍の男の方を向く




