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サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
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本当の気持ち。

「私、今物凄く恥ずかしいんだから、少しは察してよ」

そうだ、いきなりこんな話になって考えが追いついていなかったが、リーンも余程恥ずかしいのだろう。


「嫌いじゃないからキスをすると言うのはいいの?」

「いいの、して」


確かに僕はリーンの口元から目が離せなかった。

草の匂いが全くしないでリーンの香水の匂いだけが僕の中に入ってくる。

目と鼻がリーンに捕まってしまっている。

その為の赤い口紅と香水か…と今悟った。


僕はリーンの気持ちに応えるようにキスをした。

長さや力加減などを直前まで考えてはいたが、キスをしている間はそんな事を考える余裕はどこにもなかった。


少しの時間だったと思うが僕はリーンから唇を離す。


リーンは月明かりでもわかるように真っ赤だ。

多分それは僕も同じで真っ赤だろう。


「どうだった?」

いきなりリーンが聞いてきた。


「どうって、その質問はちょっとデリカシーが無くて嫌かな…」

「もっとしたい、またしたいって思ってくれた?」


「あ…」

今リーンの言葉を聞いて、確かに僕はまたしたい、もっとしたいと思った。

恐らく顔に出たのだろう。


「いいよ。またしよう。もっとしよう。だからちゃんと帰ってきて。帰ってきたらもっともっと出来るよ」


そうか、帰ってきたらまたできる。もっとできるのか…

確かに今までの覚悟とか約束とかよりも強く帰ってきたくなった。


「うん。帰ってきたくなった」


「良かった、嬉しい」

リーンがそう言って泣き出した。


「ようやく本音が聞けた。ずっと嘘ではないけど本音で喋っていない感じで怖かった。だから何が何でも帰ってきてもらいたかった」


それでキスとはリーンの行動力は凄い。


「リーン、ありがとう」

「どういたしまして。キョロ…」


「何?」

「順番が滅茶苦茶だけど私はキョロが好き」

また驚いた。

「知らなかったと思うけど本当だよ。きっと村の皆も気づいている」

そうなのか…僕だけが知らなかったのか?


「キョロがどう思ってもいい、全部終わった時に私に気持ちが無くてもいい。今は気持ちを伝えられたし、記憶を持って跳んでもらえて無事に帰ってきてくれたらそれでいい」


「ありがとう。嬉しいよ」

「本当?」


そう言ってリーンはもう一度目を瞑る。

僕はその気持ちに応えるためにも唇を重ねた。


「もう、随分と遅くなった。これでリーンは納得してくれた?」

「なんだか、その言い方だと私が納得する為にキスしたみたいに聞こえるんだけどなー」


「いや、そういう事ではないんだけど、もう帰る?と聞きたかったんだ。素直に聞けばよかったね。ごめん。」

「ううん、わかっている。まだ帰りたくない」


「わかった。トキタマ!」

「はいはいはいー」



47回目の時間。

今度は広場に着いたタイミングに跳んだ。

リーンはまだ泣いていないのでお化粧もバッチリだし、何より今リーンの家に跳ぶとお父さんお母さんに何を言われるかわかったものではないし、僕自身ボロが出そうなのでこの時間にした。


「あれ?今度はここ?」

リーンが不思議そうに言う。


「うん、今リーンの家に行くといろいろ見抜かれそうだから」

「そっか、そうかもね」

リーンが笑っている。


「リーン、笑顔も綺麗だよ」

「どうしたの?」


「さっきはありがとう」

僕はそう言ってリーンに顔を近づけてキスをした。


驚くリーンに「僕のタイミングでキスをしたかったから」と告げた。

「もう、もっとしたいって言っても今飽きるまでしちゃって帰ってくるの嫌になったりしないでね?今の私だけじゃなくて未来の私ともちゃんとしてね」


うん。と返事をしながら一つの事を思いついた。

遠くで「はいはーい」と聞こえた。



48回目の時間。

また広場に到着したタイミングに跳んできた。

「え?え?」とリーンが驚いている。


随分と前からトキタマが僕の考えを読んでいる気がした時があったので今も声に出さずにトキタマに呼びかければ反応をするのではないかと思ったのだ。

やはり思った通り跳んでこれた。


「え?跳んだの?え?」

「リーン」

話を止めるように話しかける。


「リーン、今はこれがそうなのかわからない。でも僕も伝えるよ」

「え?何?」

ちょっと混乱しているけどいい。

ここは勢いだ。


「リーン、僕も君が好きだ」

と思う。とは言わなかった。

言ってはいけない気がした。


「え?それって…本当?嬉しい。」

また泣いた。

…泣かない筋道はないのだろう。

「でも何で急に跳んだの?」

「順序が無茶苦茶だなって思って、気持ちを伝えてからキスした方がいいかなって…」


「でも、トキタマちゃんを呼ばなかったよね?」

「心で呼びかけて跳べるか試してみたんだ」


「こんな時に、そんなことしてみたの?」

リーンが少し呆れている。


「ごめん」

「うん、いいよ」


そう言ってどちらからともなくキスを交わす。

その後、僕たちはキスをしては他愛のない話をしてまたキスをして、時間が遅くなるとまた跳んだ。


49回目の時間。もそうして過ごしたし、

50回目の時間。も同じように過ごした。


51回目の時間でようやくリーンが納得をしてくれたので広場で一度だけキスをしてから早めに切り上げてリーンを家まで送り届ける。

出迎えに出たお父さんとお母さんはちょっと察した顔をしながらリーンに「楽しかったか?」「言いたいことは言えたか?」「納得して送り出してあげられるのか?」と聞いていた。


リーンのお父さんが僕に「きちんと向き合ってくれたようだね。ありがとう。君自身も顔つきが少し穏やかになっているからいい時間を過ごせたみたいでよかったよ」と言ってきた。

大人は凄いなと思いながら家に着く。


「ただいま」

「お帰りなさい」と母さん。

「お前の出かけている間にナックが来て手紙を置いていったぞ」と父さんが言って手紙をくれた。


部屋に入って手紙を開くとそこには「村中にお膳立てをしておいてやったからな、今日は何処に行っても邪魔はいないはずだ。うまくやれよな。失敗したら跳んでやり直せ!頑張れよ!」と書いてあった、

それで何処に行っても人が居なかったのか…余計な気遣いのような、ありがたいような…


そう思っていると部屋の外に母さんがいるのがわかった。

「なに?」と僕が聞くと「中々赤い口紅の色は落ちないのよね」そう言って母さんが去って行った。


慌てて手で口を拭く。

確かにまだ赤い色が残っていたのか手に着いた。

しまった、家に着くまでに拭いたのだが、まだ残っていたのか。


あー、あの時それでリーンのお父さんとお母さんが察した表情をしていたのか…


恥ずかしい。

「あの…、トキタマさん…」

「どうぞどうぞ」

トキタマのにやけ顔がちょっとだけ恨めしい。



52回目の時間。

「え!?」

僕は広場に戻ってきた。

まさか戻されると思っていなかったリーンが慌てている。


さっき別れたばかりなのにまた会うのは何か変な感じがする。


「どうしたの?」

「いや、僕の口にリーンの口紅が残っていたらしくて、それでリーンのお父さんたちやうちの母さんにバレて」


「それで?」

「ちょっと恥ずかしいやら、リーンもバレて恥ずかしい思いをしたんじゃないかと思って跳んできたんだ」


「それなら平気よ」

「え?」


「私の気持ちはみんな知っているから、お父さん達も喜んでくれていたよ。あ、あの後キョロの口元の事で笑っていたけどね」

何と言うことだ…恥ずかしい。


「それよりも…」

「何?」


「この服、片付けるのも大変だし、お化粧は取るの大変だし、ようやく片付けに目処が立っていた所なのに…」

「ごめんなさい」


「ううん、いいよ。また会えたし、でもこのまますぐ帰って片付けになるのはやだな」

「わかった。僕もリーンの顔を見たら離れるのが名残惜しくなってきた所だよ」


そう言いながら、3回ほど、一緒の時間を過ごしては跳んでを繰り返してから帰路についた。



55回目の時間。

僕は帰る頃には落ち着いたもので堂々としていた。

帰宅して母さんに口紅の事を指摘された時も「そうみたいだね。ありがとう」と言ったら、更に察したらしく、父さんに「あの子が大人になっていく」と泣きついていた。


父さんからナックの手紙を受け取った僕もナックに手紙を書く事にした。


手紙の文面は簡潔に気遣いへの感謝と行ってくる事と帰ってくるから待っていて欲しいと言う事にした。


そこでリーンにちゃんと行ってくると言っていなかった事を思い出した。

また跳んで片付けが大変になってもいけないのでリーンにも手紙を書いた。


心配してくれてありがとう。

行ってきます。

終わったらキチンと帰ってきます。


それだけを簡潔に書いた。


こうなると止まらない。

父さんと母さんには感謝と謝罪を書いて渡した。

父さんと母さんは夜も遅いと言うのに寝ないで朝を迎えようとしていた。

僕も付き合うと言うと寝るように言われた。

ナックとリーンの手紙は明日父さんから渡してくれる事になった。


とても長い1日だった。

今日だけで僕は何回跳んだんだろう?

トキタマには明日になったら何が出来るようになったのか聞こう。

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