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サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
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リーンのお願い(建前編)。

今回の広場での話題はリーンのお化粧の話だった。

お化粧をする事の大変さの話、それがまずまずの評判で報われた話をリーンが熱弁している。


「で、キョロはどっちの私が良かった?」

「最初のお化粧はいつものリーンらしさが出ていて凄く可愛かったよ。

今のお化粧は見たことないリーンが見られたから嬉しいし凄く綺麗だよ。

どちらも甲乙つけがたい良さだよ」

リーンが照れながら喜んでいる。


見たことのないリーンがそこに居て笑っている。

本当に綺麗だと思うし、何より初めて見る赤い口紅が着いた口元に目がいってしまう。


「キョロ?」

「あ、ごめん。なんでもない」


「明日からの事を考えて居たの?」

急に悲しそうな顔をするリーン。


「いや、違うよ」

「じゃあ何?もう私と跳ぶのは飽きた?」


「そんな事ないよ」

「じゃあ何?急に黙っちゃって」


「本当、明日からの事とかじゃないから」

「気になるからちゃんと教えてよ」


しまった、このリーンは手強いリーンだ、そしてせっかくの時間を揉めて過ごすのは得策とは思えない。

僕は思った事を伝える事にする。


「リーンの口元が綺麗で、ついつい見入ってしまったんだ」


「え?」

「ごめん、赤い口元が凄く気になってしまったんだ」

またリーンが照れて顔を赤くしている。


「それを言うのが恥ずかしくてさ」

「そっか、ふふふ。

じゃあちゃんと帰ってきてくれたらまたこのお化粧も見せてあげる。

どう?帰ってきたくなった?」

その言葉に僕は確かに嬉しい気持ちになった。


「ずっとその話だね。僕は帰ってくるって言っているんだけどなぁ…」

「本当に帰ってきてくれる?」


リーンがこちらを覗き込むように見つめながら聞いてくる。

「帰ってくるよ。この村が僕の居場所なんだからさ」


そう言ってもリーンは信用してくれないのか、僕から目を逸らさない。


「何となく、隠し事をしているのはわかっているんだからね?」

「え、そんなこと…」


「言わないでいいから、きっと私たちの事を考えているから言えないのもわかっている。だから聞かないけど、隠し事のせいで帰ってこられないんじゃないかと思って…」


リーンに心配をさせてしまっているのが心苦しい。

それでも不死の呪いの事は言えない。


「大丈夫、帰ってくるよ。

ここ数日は家の手伝いも全然出来ていないし、それよりもリーンがまたその姿を見せてくれるんだよね?

早く帰って来なきゃ!」


「本当?」

「本当だよ、僕って冗談は言うけど嘘はつかないよね?リーンこそ本当にどちらのリーンも見せてくれるの?」


「ちゃんと帰ってきてくれたら見せてあげるわよ。それまで誰にも見せないから早く帰ってきてよね」

「わかったよ」

ようやくリーンは安心したのか微笑んでくれた。


ごめんねリーン。

僕は多分初めて君や村のみんなに嘘をつく事になる。

王を倒して村に帰ってくる。

それは危険が去った事をみんなに伝えるためだけで、その後は不死の僕に居場所はないと思うから僕自身の意思で村を去る事になると思う。


また再びの沈黙。

月明かりに照らされたリーンは何度跳んでも何度見ても綺麗だ。

本当に先程までのリーンも綺麗だったが、この赤い口元のリーンも綺麗だと僕は思った。


「またよくない事を考えていたでしょ?」

沈黙を破ったのはリーンだった。


「違うよ、また見入っていただけだよ」

「それは今のキョロで、その前のキョロは難しい顔をしてたわよ」


そうなのだろうか?

女性の勘は怖いな…


「あーあ、これじゃあ何回私と過ごしても私を納得や割り切らせるなんて出来ない話ね」

「えぇ、僕は跳ぶのは構わないけど、リーンを納得させられないのは困るなぁ」


「本当に納得させてくれる?」

リーンがまた僕を覗き込む。


「そのつもりだよ」

「じゃあお願いを聞いて」


「申し訳ないけど、行かないでと一緒に連れて行っては無理だからね。それ以外なら頑張るよ」


「うん」



リーンが真剣な面持ちで僕の顔を覗き込む。

化粧の効果か、僕は照れてしまう。

どんな顔をしてしまっているか心配だ。

「まず一つめ、私も連れて行って」


「ダメだって言ったよね」


「うん、それでも言いたかったの。本当はこっち」

そう言ってリーンが何処にあるのかわからないポケットから「万能の柄」を取り出した。


「私の気持ちも連れて行って。私がダメでもアーティファクトは許されるでしょ?」

そういう事か…


「それなら一緒に行けなくても私の心はいつでもキョロと一緒に居れる」

「僕は、リーンとナックに村の事をお願いしたよね。だから持っていて欲しい。万一の時はリーンとナックで村を守ってほしい。村が難しくても自身を守って生き延びて欲しい」


「でも、今度の兵隊は凄く強いんでしょ?キョロでも倒せない程の兵隊だったんでしょ?それなら私たちがちょっと備えても駄目だと思う。だから…キョロに持って行ってほしいの」


確かに戦力差は圧倒的で、僕たちのアーティファクトでは兵隊たちに太刀打ちできない。それでも持って行ってはいけない気がしている。


「今はやめておくよ」

「なんで!?」


「もしも明日以降で必要になったら貰いに戻ってくるよ。そうすればまたリーンにも会えるしさ」

僕は笑ってそう語りかけた。


「…うぅ。それなら仕方ないけど、無理はしないでよね」

「うん。大丈夫だよ」


「気は済んだ?」

「まだ」


今回も遅い時間になってしまった。

「一度跳ぶよ」

「うん」


「タイミングはいつ頃が良い?」

「お父さんが家の中に呼びに来る頃でいいかな?次もこのお化粧でキョロと話したいから」


「わかった。トキタマ!」

「はーい!」

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